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編集部が見た今週(9/8-12)の物流ニュース雑感

2025年9月12日 (金)

ロジスティクス本誌編集部の記者たちが今週注目した物流ニュースを取り上げ、裏側の背景や今後の影響について座談会形式で語り合いました。記事本文だけでは伝えきれない現場の空気感や取材の視点を、読者と共有するのが狙いです。週末に気軽に読みながら、1週間のトピックを整理してみましょう。

大和ハウス工業、九州で加速する物流施設開発

半導体大手TSMCの進出を契機に、九州地域では半導体関連産業の集積が急速に進展している。熊本県に続き、福岡県南部や佐賀県でも工業団地の造成や設備投資が活発化し、それに伴う物流需要も拡大している。大和ハウス工業はこの動きを踏まえ、九州エリアでの物流施設開発を一段と加速させる方針を打ち出した。半導体産業の成長は地域経済の活性化や雇用拡大を後押しする一方、倉庫賃料や人件費の上昇によって既存の食品・生活物流が圧迫されるリスクもある。短期的には地域物流の混乱が予想されるが、中長期的には産業集積による経済効果が期待される。

九州で倉庫賃料急騰も、生活物流”置き去り”の心配も

記者A「今週もいろんなことがあったね。まず、それぞれが注目してる今週のネタから聞いてみたいんだけど、みなさん何かありますか?」

記者B「直近で取材に行った案件で言うと、昨日の大和ハウス工業の会見かな。物流のネタとして上がったのは半導体特需の話。熊本のTSMC、台湾積体電路製造の工場を中心に、九州全体が活気づいてるって話が印象的だったよ」

記者C「TSMCの影響って、半導体製造だけじゃなくて、上流と下流でいろんな資材が必要になるから、物流業界にとっても大きなビジネスチャンスだよね」

記者B「そうそう。担当者によると、半導体の周辺産業で物流需要が大幅に増えてるんだって。今後、九州から目が離せないって話してたよ。佐賀や福岡県南部なんかも狙い目だって。土地代考えると、福岡は高くなっちゃうから」

記者A「でも、その一方で懸念も残るな」

記者B「そうなんだよ。物流業界としては特需で歓迎すべき話なんだけど、半導体関連の倉庫賃料が相当上がってるし、もともとその地域にあった食品物流とか、生活に欠かせない物流に煽りが来てるかもと心配になる」

記者C「インバウンドの問題と似てるよね。地域経済は活性化するけど、従来からそこで事業してた人たちが押し出されちゃう」

記者B「まさにそう。中長期的には地方創生って意味で良いことだと思うんだけど、短期的には人件費が上がって、従来食品の倉庫で働いてた人が半導体関連に流れて、人も雇えない、床も借りられないって状況が起きても不思議ではない」

軽油カルテル、公正取引委員会が強制調査

公正取引委員会は石油販売会社8社に対し、軽油価格の談合疑惑で強制調査を実施した。トラック運送業界にとって燃料費は最大のコスト要因であり、価格操作が事実であれば事業者に甚大な損害を与えたことになる。補助金が投入されても燃料価格が高止まりしていた実態を踏まえると、業界の信頼を揺るがす重大案件といえるだろう。調査は東京・神奈川を発端としているが、全国への波及も懸念される。

五輪談合以来の大型摘発、他県でも同様行為の疑い濃厚か

記者A「ほかにはある?」

記者C「今週はやっぱり軽油のカルテル問題が大きい。公正取引委員会が石油製品販売会社8社に対して強制調査を実施したって件。全日本トラック協会は誠に遺憾ってコメントしてるけど、これは当然の反応だと思う」

記者A「5月に神奈川、今回は東京ってことだけど、このタイミングでの摘発って何か意味あるのかな?」

記者C「公正取引委員会のメスの入れ方が、ことしか去年ぐらいから随分変わってきてる印象があるんだよね。ほかの業界でも、今まで割と黙認されてきたことが突然指摘されるケースが増えてるよ」

記者B「燃料費高騰対策として補助金を投入してるのに、販売会社がカルテル組んでたとなると、確かに悪質だと言わざるを得ない」

記者C「以前の試算では、1リットル1円変わると業界全体で150億円の影響があるって言われてたんだ。運送事業者の多くが万年赤字って状況の中で、こういうことが行われてたとなると、業界が怒るのも当然だよ」

記者A「東京、神奈川だけじゃなくて、全国的に同じことが行われてる可能性もあるよね」

記者C「そう考えると、全国の事業者さんにとってかなりマイナスな影響与えてたってことになって、販売会社の責任は重いよね。これは東京オリンピック・パラリンピックの談合事件以来の大きな強制調査案件だから、今後の動向をしっかり見ていく必要があると思う」

国際物流総合展、AIと自動化が主役に

9月10-12日の日程で開催された国際物流総合展(会場・東京ビッグサイト)は、出展社・来場者ともに盛況を取り戻した。注目を集めたのはAI(人工知能)と自動化の活用だ。従来の局所的な工程改善にとどまらず、AIが工程全体を解析し、ボトルネックの特定や人員シフトの最適化を行うソリューションが披露された。一方で、GX(グリーントランスフォーメーション)関連の展示は減少傾向にあり、環境対応の継続性が課題として浮上している。展示会は国内にとどまらず、上海など海外でも開催され、物流技術の国際競争が加速している。

物流展でAI関連展示増、人間の判断を代替する時代へ

記者A「じゃあ、物流展の話も聞かせて」

記者C「9月10日から東京ビッグサイトで開幕した国際物流総合展に行ってきたよ。初日にしては人の入りがあったって印象。単純な情報収集っていうより、具体的な導入イメージを持って来場してる人が多いって話を各ブースの担当者から聞いたんだ」

記者B「それは導入検討が具体的なフェーズに入ってるってことだね」

記者C「そう。内容的には大きな変わり映えはなかったけど、印象的だったのはAI関連の展示が増えてることかな。単純なチャットGPTみたいなテキストベースのAIじゃなくて、データ解析やプロセスの自動化にAI活用するソリューションが出てきている」

記者A「具体的にはどんな活用方法が考えられるの?」

記者C「例えば、倉庫でA工程、B工程、C工程と並んでる場合、B工程だけ自動化しても、前後の工程がボトルネックになれば全体の生産性は上がらないじゃん。AIがそういうボトルネックを分析して、どこに人員を増強すべきか判断したり、シフト組んだりする。今まで人の判断や経験が必要だった部分をAIが担うようになるかもしれない」

記者B「物流とAIの特集は近いうちに必要だね。倉庫、輸送、サプライチェーンそれぞれでどういう活用されてるのか、可能性があるのか知りたいとこだね」

トランプ効果で構図崩壊、目に見えない成果に業界そっぽ?

記者A「一方で、気になった点はあった?」

記者C「GX(グリーントランスフォーメーション)関連の展示が少なくなった印象がある。各社のブースで展示はあるにはあるが、以前に比べるとメインストリームじゃなくなった感じ。今は省人化や自動化の方に注目が集まってて、環境配慮の取り組みがちょっと後回しになってるのは残念に思う」

記者B「環境問題って、CO2排出量など目に見えない成果だから、やりがいを感じにくいテーマではあるからかな。でも地球規模で見たら本当に大事な話なのにね」

記者C「トランプ政権の影響もあるかも。アメリカが環境系の目標から離脱すると、今までみんなで手を取り合ってやっていこうって構図が崩れちゃうんだよね」

記者A「確かに、アメリカの政治動向が色濃く反映されてる印象を受けるよね。でも継続してやらなきゃいけない課題だから、これは逆にメディアの出番かも」

記者C「そうだね。GX関連の特集も継続的にやっていく必要あると思うよ」

記者A「今週は半導体特需による物流業界への影響、軽油カルテル問題、そして物流展でのAI活用の最新動向があったりで、盛りだくさんだったね。それぞれが物流業界の今後を左右する重要な動きだよ。来週以降も継続して見ていこう」

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