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編集部が見た最近(11月上旬)の物流ニュース雑感

2025年11月14日 (金)

ロジスティクス本誌編集部の記者たちが注目した直近の物流ニュースを取り上げ、裏側の背景や今後の影響について座談会形式で語り合いました。記事本文だけでは伝えきれない現場の空気感や取材の視点を、読者と共有するのが狙いです。今月上旬のトピックを整理してみましょう。

ヤマト、年100人のベトナム人大型ドライバー採用計画

ヤマト運輸は、ベトナムのFPTジャパンHDと特定技能制度を活用した大型ドライバーの採用・育成で基本合意した。国内では大型ドライバーの高齢化が進み、輸送力確保が課題となる一方、ベトナムでは海外就労を志向する若者が増えている。両社はFPTの教育基盤とヤマトの安全教育を組み合わせ、募集から育成、生活支援、日本での語学・文化・安全研修まで一体で支援する仕組みを構築。2027年の就業開始を見込み、年100人規模で外国人ドライバーを採用する計画だ。

記者A「じゃあ今月前半の動きをざっと整理しましょうか。僕は外国人ドライバーの取材が続いていたんですが、独り立ちまでの流れがようやく具体的につかめてきましたね。募集ルート、送り出し機関、研修、免許切り替えまで一連のプロセスがつながって見えてきた感じです」
記者B「制度が整ったばかりで、研修中の企業も多いけど、動き自体は本当に一気に加速してきたよね」
記者A「仕事は大きく『ドライバー』と『倉庫管理』に分かれるけど、会社によって方針がかなり違う。ドライバーはやっぱり日本のルールや言語がネックで、適応に時間がかかる」
記者C「一方で『外国人増やせばいいんでしょ?』みたいな雑な空気もあって、送り出し機関は玉石混交だよね。政府間ルートならまだ安心だけど、民間だけのルートは本当に品質差が大きいという声もある」
記者A「そのあたりの“見極め”はもっと必要になってくると思います」
記者B「でもドライバー職は将来性あるよね。取材した会社なんかは3割を外国人にしていくと話していたし、仕事はなくならない」
記者A「逆に倉庫は即戦力になりやすいけど、ピッキングがこれからどんどん自動化・ロボット化されるから、将来像が読みづらい」
記者C「伸びる仕事と縮む仕事がはっきりしてきた感じだよね」
記者B「言葉の壁を考えると、顧客接点も少ないから幹線輸送は相性がいい。ヤマトも大型ドライバーから育てていくと言っているね」
記者A「日本人ドライバーは集配から大型へステップアップするけど、外国人ドライバーは逆の“大型から集配”になるんじゃないか、とも言われているよね」
記者C「夜間配送も相性がいい。鍵納品や無人店舗への搬入など、対面がほとんどない作業が多いし」
記者A「あと、『外国人=安い』という古いイメージがまだ残っているけど、同一労働同一賃金なんだから安くはない。単純に人が足りないだけ」
記者C「2030年までに25万人減るという試算がある以上、補完戦力として必要になるのは当たり前だよね」
記者B「幹線輸送ということで言えば、自動運転のT2からもプレスリリースがいくつも出てたね。東名高速道路・綾瀬スマートインターチェンジに自動運転と有人運転の切り替えスペースを作ったという」
記者C「自動運転については、自動物流道路のプロジェクトも走ってるから、二重投資じゃないの?という議論はそのうち出てきそうな気がするなあ」

ソフトバンクロボ、CLO支援サービスを開始

ソフトバンクロボティクスは、物流統括管理者(CLO)向けに、戦略立案から現場実行まで一貫支援する新サービス「Total Logistics Design」を開始した。人手不足や人件費上昇に加え、特定荷主へのCLO選任義務化が迫るなか、企業のロジスティクス戦略構築を後押しする。マテハンメーカーに属さない独立系として、外部パートナーと世界の技術を活用し、経営視点の戦略設計から導入支援まで伴走。自社の自動倉庫「AutoStore」やロボット技術も組み合わせ、物流現場の自動化とCLO業務の高度化を両面から支援する。

記者A「CLO支援サービスも増えてきたね。ソフトバンクロボティクスのサービスは倉庫自動化コンサル的な内容みたいだけど、CLOにどこまで刺さるかはまだ見えていない」
記者B「そもそもCLOって、取引環境改善から拠点戦略、庫内標準化、運行管理、外部委託の設計まで全部を見る“サプライチェーンの司令塔”的な立場だからね。でも今出ているサービスは領域も深さもバラバラ」
記者C「APTは4PL寄り、トランスコスモスやハコベルはDX+オペレーション寄り。名称は『CLO支援』でも、踏み込む範囲は会社によって全然違う」
記者A「制度が来年4月に始まるから、“CLO向け”と名乗ってサービスを整理し直してる企業もあるんだろうね。荷主側の理解もまだ追いついてないし、入り口として分かりやすい名前が先行してる印象」
記者B「制度が始まれば企業の負担は確実に増えるし、責任の所在も明確になる。外部の力を借りたいという需要は間違いなく増えるよ」
記者A「今後は『何を外に任せ、何を社内でやるか』の線引きがポイントになるね」

軽油引取税の旧暫定税率廃止へ

軽油引取税に上乗せされてきた旧暫定税率が、2026年4月に廃止される。1964年創設の本則税率15円に対し、1976年以降の上乗せが積み重なり、17円10銭が半世紀にわたり維持されてきた。トラック業界は燃料負担の重さから撤廃を強く求めてきたが、「当分の間」の名の下で恒久化していた。廃止後は本則の15円に戻り、1リットルあたり17.1円の減税となる。大型車1台で年間41万円、業界全体では3000億円規模の負担軽減効果が見込まれる。今回の決定は道路財源中心の発想から、物流を支える負担構造見直しへ踏み出す政治判断となる。

記者B「軽油引取税の暫定税率廃止には驚いたね。業界の長年の悲願がようやく実現した」
記者C「大きい動きだよね。ただ、その一方で交付金維持の話がまた出てきているのは複雑なところ」
記者A「昔は『交付金いらないから税率下げろ』だったのにね。流れを知っていると違和感がある」
記者B「交付金を維持するなら、どこかで財源を作らないといけない。事業許可更新制の導入に合わせて、更新時に事業者が事業登録税のようなものを納める仕組みを作って、交付金の原資の一部とするというアイデアはどうだろうか…まあ反発は大きいと思うけれど」
記者A「ただ、軽油税の負担が軽くなる分を“次の改善投資”に回す考え方はあってもいいよね。浮いた分を現状維持に使うだけじゃ意味がない」
記者C「働き方改革をやるにも、クラウド点呼も運行管理のデジタル化も、人事制度改革も全部お金がかかる。財源なしでは改革は進まない」
記者B「結局、どれだけ“仕組みを変えられるか”なんだよね。長時間=収入の文化に縛られてたら、生産性なんて上がるわけがない」
記者A「働き方改革という意味では、Gラインは象徴的な存在だと思う。時間じゃなく独自の評価制度で給与が決まるし、未経験でも成果が出せれば稼げる。逆に古い働き方しかできない人は自然と離れていく(Gライン、未経験者採用が好循環を生む人材戦略)」
記者C「Gラインは評価制度だけじゃなく、仕事の組み立て方そのものを変えている。配車係を置かずに、小さなチーム単位で仕事を取り合うスタイルも特徴だよね」
記者B「それと車両運用。普通の運送会社はトラックとドライバーを固定で回すけど、Gラインは“空き車両”をあえて持つ。4トンの仕事が終わったドライバーが、そのまま軽貨物に乗り換えたりする柔軟な運用ができる」
記者A「つまり『車両に仕事を合わせる』のではなく『仕事に車両を合わせる』発想。これができると案件の自由度が一気に上がる」
記者C「普通は車格に縛られて赤字仕事でも取りに行くことがあるけど、Gラインはその逆。空き車両があることで波動対応もしやすく、稼働率も上がる」
記者B「大型しか乗らない、4トンしか乗らない、という働き方はこれからどんどん厳しくなると思う。柔軟に動ける人が強い時代になる」
記者A「結局、外国人材、自動運転、CLO、賃金制度、車両運用…全部つながっているんじゃないでしょうか。どこまで仕組みを変えられるかで、10年後の物流の景色は大きく変わると思いますね」

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