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編集部が見た最近(12/1-5)の物流ニュース雑感

2025年12月5日 (金)

ロジスティクス本誌編集部の記者たちが今週注目した物流ニュースを取り上げ、裏側の背景や今後の影響について座談会形式で語り合いました。記事本文だけでは伝えきれない現場の空気感や取材の視点を、読者と共有するのが狙いです。12月1日から5日のトピックを整理してみましょう。

ウーバーイーツユニオンが公取委に調査要請

ウーバーイーツで働く配達員らの組合「ウーバーイーツユニオン」は、報酬アルゴリズムの不透明さを理由に公正取引委員会へ調査を要請した。報酬は距離・時間などで算出されるが、組合は事前説明なしの変更で低単価案件が増え、収入が不安定になっていると指摘。最低320円から3000円まで幅が大きく基準も不明瞭だと訴える。会社側は組合として認めず回答を拒否したため、組合は誠実さを欠く対応として調査を求めた。

記者B「ウーバー配達員が報酬額決定の不透明さから公正取引委員会に調査を求めたというニュース。前から、ウーバーやアマゾン、それにヤマトなどでは“業務委託”という形になっていても、実際には裁量がほとんどないと『労働者性』が認められて、残業代を払わないといけないという話になるケースがあるね」

記者B「サカイ引越の未払い裁判も、まだ最高裁は出てないけど、名ばかりの裁量制というか、実態は時間給なのに裁量制をうたっていたんじゃないか、っていう構図だった。こういった話題が上がることが増え、『労働の何に対して対価を払うのか』という根っこを、法律で一度きれいに整理し直すタイミングなんじゃないかと感じるんだよね」

記者B「2024年問題で残業はそうそうできなくなってきているから、『たくさん走ってたくさん稼ぐ』というモデルも崩れつつある。そうなると、ドライバーがどういう働き方なら、どれくらい安定して稼げるのかが見えないと、人が入ってきにくいし、もっと稼ぎたい人も『稼げないからほかの業界に行く』という流出も止められない。働き方と、その質の評価の仕組みを、業界全体でもう一段整理する必要があるんじゃないかなと思ったね」

記者C「こういう話では、相場感がバラバラなのがすごく大きな問題。統一感がないと、いい人も来ないし、続かない」

記者C「ドライバーの報酬の話になると『どう変えるの?原資は?』という話になって終わってしまうことが多いけれど、経営側もルールやマナー、これをやったらアウトだよっていうラインをきちんと決めて、そのうえで給与水準をそろえていく必要があると思う。採用コストまで含めてトータルで考えれば、その方が長い目で見ると合理的なんじゃないかな」

記者A「トラック新法でも“適正原価”を出すという話になっていて、その中には当然、人件費も入ってくる。ブロック単位なのか、県単位なのかはまだ見えないけど、きちんと原価が出れば『このエリアのドライバー賃金はいくらぐらい』という目安が示されるはずなんだよね」

記者A「それが一種のベースになれば、『残業は減るけど、このくらいはちゃんと給与として確保できる』っていうラインも見えてくると思う。そこまでいかないと、いつまでもバラバラのままで、運賃の“上くぐり・下くぐり”も止まらない。新しい法律をつくって施行まで決めた以上は、トラック協会と国交省、政府には、そのあたりの仕組みをなるべく早く見せてほしいよね」

アマゾン茨木FC火災、物流ロボが出火元か

アマゾンの大規模拠点「茨木フルフィルメントセンター」で11月11日、3階の商品保管エリアを火元とする火災が発生し、稼働中の物流ロボットが出火源の可能性があることが関係者への取材で分かった。施設はロボットが棚を運ぶ自動化方式を採用。AGV(無人搬送車)・AMR(自律走行搬送ロボット)ではバッテリーや充電器が火災原因となる例が多く、リチウムイオン電池の発火リスクが指摘されている。自動化が進む一方、バッテリー管理や監視体制など、ロボット運用に伴う安全管理の強化が課題となっている。

記者C「ちょっと前の話だけど、アマゾンの火災がやっぱり気になってしまう。先日、とあるロボットメーカーの社長への取材をした際に印象的だったのは、やはりバッテリーの品質の問題がかなり根深いということ」

記者C「今週の『クローズアップ現代』でもやっていたけれど、多くのバッテリーを中国でつくるようになって、日本メーカーの製品でも、コスト削減の圧力の中で本来の仕様とは違う安い材料を使っちゃっているケースがあるらしい。一番重要なのは、プラスとマイナスを分けるセパレーターで、そこが劣化していると、くっついてしまって電気事故につながる」

記者C「昔、日本メーカーがバッテリーで“天下取ってた”ころは、今ほど事故はなかった。日本メーカーはスペックにはうるさいからね。それが今は、より安く、より外に出してつくる方向に振れてしまっている」

記者C「基準の話で言うと、欧州の安全基準が一番厳しくて、中国はそこにかなり寄せている。一方で日本は、ちょっとガラパゴス的な独自基準になってしまっている面がある。バッテリー事故は物流現場にもダイレクトに影響するので、世界基準に近づける方向で考えた方がいいだろうね」

記者D「リチウムイオン電池の基準に関して言うと、実は中国と欧州の方が厳しい部分もある。日本は、そもそも明確な基準が存在していない領域もあるので、“日本製だから必ずしも安全”とは言い切れない状況になってきているんだよね。そのあたりが、今後の大きな論点になりそう」

南日本運輸倉庫に勧告、下請け6社への不適切徴収で

公正取引委員会は南日本運輸倉庫に対し、食品輸送を委託していた下請け6社から「元請管理手数料」を差し引いていた行為が下請法違反(下請代金の減額)に当たるとして勧告した。減額総額はおよそ1896万円。振込手数料も下請け側に負担させていた。会社は手数料徴収を撤廃し、10月に全額返金済みと説明。今後は法令順守の教育を強化するとしている。公取委は取引適正化に向け監視を強めており、業界全体の透明性確保が課題となっている。

記者A「時勢柄、南日本運輸倉庫の下請け不適切徴収のニュースも触れておいた方がいいかな。公取委の勧告が出ていて、報道によると、すでに不適切な“手数料のキックバック”的なものは返金対応した、ということらしい」

記者A「26年1月からの中小受託取引適正化法(取適法)の施行も控えているなかで、一定規模の会社に対して『こういう事案を摘発しました』というメッセージを出すのは、公取側としても“見せしめ”的な意味合いがあると思う。物流会社とその下請け・中継会社との間の取引を、これから本格的に正していきたいという意図は感じるよね」

記者B「正直、同じようなことはまだまだ横行してる印象はあるよね。これまで荷主と物流事業者の関係はよく取り上げられてきたけど、元請けの物流会社と下請けの関係も、今後かなり見られるようになると思う。公取委の活動は、頻度も熱量も上がっている感じがするので、細かいところまで取りに来るんじゃないかなと」

記者A「タイミングが合えば、ロジスティクス業界向けに独自のアンケート調査をやってみたいよね。『元請けから不当に費用を取られていませんか』みたいな問いを、匿名でトラック運送会社に聞いていくとか」

記者B「いいですね。せっかくなら、国会で取り上げられたような事例だけじゃなくて、着荷主と実運送会社の間で起きている“ただ働きの荷役作業の強要”とか、今は取引法の適用外になっているところも含めて聞いてみたい。発荷主と実運送会社の間の問題もそうだけど、現場の実態を可視化できたら、かなり意味のあるデータになると思う」

記者C「サービス品質の面からも、実態調査は大事だよね。宅配便でも、中抜きの層が増えていくと、現場のオペレーションが雑になっていくことがある。町で見ていても、以前は“とりあえずヤマトや佐川のステッカーだけ貼っている会社”だったのが、今はステッカーすらなくて、どこの誰かわからない人が配っているケースもある」

記者C「置き配が通路の真ん中に投げてあったり、郵便ポストの集配も委託の人がやっていたりして、『これ信書として大丈夫?』と思う場面もある。こういうサービス品質の低下が、何重にも外注されるなかでどこで起きているのか。それをアンケートや取材で追っていくのは、メディアとしてやりがいがあるテーマだと思う」

東海電子、飲酒運転再犯防止へ警察庁に制度化要望

東海電子は警察庁に対し、飲酒運転再犯防止策として「呼気アルコールインターロック装置の義務化」と「自動点呼制度の拡充」を求める要望書を提出した。飲酒運転検挙者の免許復帰条件にインターロック装着を義務付ける制度を次期交通安全基本計画に明記するよう提案。さらに白ナンバー事業者にも自動点呼を導入し、生産性と確実な点呼を両立させるべきだとした。海外では制度導入が進む一方、日本では遅れており、重大事故が続くなかで早急な法整備を求めている。

記者D「インターロックはアルコールを飲んでいたらエンジンがかからないというシンプルな仕組みなのに、どうして実現しないのかな、とずっと疑問なんです」

記者A「ほんと、これもう“ずっと前から話題になってるのに進まない案件”の代表格だよね。自動ブレーキとか、衝突被害軽減システムみたいな先進安全装備はどんどん進むのに、そもそも酔ってたらエンジンかからないようにしちゃえば?っていう一番入り口の部分はなぜか手つかずのまま」

記者A「飲酒運転そのものをなくすという意味では、インターロックを義務化するのが一番筋がいい。少なくとも緑ナンバーの事業用車両には、義務化してもいいんじゃないかなって思うよね」

記者D「コスト負担の議論は避けて通れないにしても、技術要因については、例えば『歯磨き粉で誤反応してエンジンがかからない』みたいな話もあるけど、それは運用でカバーできるレベルだと思うんですよね。点呼のアルコールチェックでも同じ問題はあるわけで、それをクリアして使っているわけだから」

記者D「インターロックのような仕組みが普通になれば、そもそも“飲んだ状態でエンジンをかけようとする”行為自体が減っていくはずで、技術的ハードルはそこまで高くないと個人的には思っています」

ゼロ、USS東京・横浜の構内運営業務を受託

自動車輸送などを展開するゼログループは、中古車オークション最大手USSが運営する「USS東京」「USS横浜」の構内運営業務を、USS子会社から受託すると発表した。2026年1月開始予定。ゼロは車両輸送を軸にしつつ、構内運営や人材ビジネスへ事業を広げており、子会社化したソウイングの運営ノウハウやジャパン・リリーフの人材確保力を活用した提案が評価された。対象会場は最大規模のUSS東京と主要会場のUSS横浜。構内業務の拡大を通じ、輸送効率化と自動車周辺事業の強化を進める方針。

記者D「もう一つ挙げておきたいのが、中古車オークション会場の構内作業をゼログループが一括受託したニュースです。正直、かなりニッチな話ではあるんですが、陸送業界では荷待ち・荷役の問題がかなり深刻なんですよ」

記者D「統計をちゃんと取っているわけではないですが、“荷待ち3時間”どころではないケースも多いと聞いています。そもそも中古車オークション会場が“特定荷主”に該当するのかどうかも、来年4月以降の焦点になる。ある国会議員は『該当するだろう』と発言しているようですが、正式にはまだ見えていない」

記者D「今回のニュースのポイントは、その会場内の構内作業をゼログループが一括して請け負うというところ。イメージとしては、鴻池運輸やセンコーが工場の構内物流を丸ごと請け負うのに近いのかな。構内の実作業まで踏み込んで荷役を受託することで、これまで各社バラバラにやっていた“荷待ち・荷役”が整理されるかもしれない」

記者E「もともとは複数社どころか、何十社・何百社という単位で業者が出入りしていた環境なんですよね?」

記者D「その通り。登録された業者しか入れないとはいえ、ものすごい数の会社が出入りしている。しかも、2万台規模の車両が広大な敷地に停められていて、鍵も車についている。ひどいケースだと、近くに止まっている別の車を勝手に移動手段に使って移動するなんてこともあるらしくて、その車がどこに行ったのかわからなくなる。完全に無法地帯」

記者D「そうなると、1台を見つけるのに1時間、2時間とかかかってしまうこともある。そういう全体として“ムダ”な構造が、今回のゼログループの一括受託によって、少しずつ整理される可能性が出てきた。そこに期待しているっていうのが、このニュースに注目している理由ですね」

記者A「もし構内用の予約システムみたいなものが入って、キャリアカーの出入りや積み込みをうまく時間管理できるようになれば、周辺の渋滞や環境への負荷も抑えられそうだよね。構内作業を1社にアウトソーシングすることで、そういう管理もしやすくなる」

記者D「おっしゃる通りだと思います。これまでは、ドライバー自身が2万台の中から自分の6台を探し出して積み込む、という運用も多かった。ゼログループが構内の移動をまとめて引き受けるようになれば、ドライバーは積み込みに専念できるようになる可能性がある。物流の“裏側の物流”を専門会社が整えることで、全体の効率を上げる、という意味でも象徴的な動きなんじゃないかなと」

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