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飲酒事故ゼロへ向け、制度理解と現場対話を重ねる理由

点呼制度の誤解を正し、指針示し続けるテレニシ

2026年1月7日 (水)

話題点呼制度を取り巻く環境は、ここ数年で大きく様変わりした。自動点呼をはじめとする制度の柔軟化は、人手不足という差し迫った課題への対応策として進められてきたものだが、現場では「制度の理解が追いついていない」「ただ日常業務を効率化できるものという誤解が先行している」といった声も少なくない。制度が拡張される一方で、その本質である安全確保、そして何より「飲酒運転の未然防止」が十分に共有されているとは言い切れないのが実情だ。

クラウド型点呼システム「IT点呼キーパー」を提供するテレニシ(大阪市中央区)が、あらためて「点呼制度の認知と正しい運用法の啓蒙」を前面に押し出す理由は、まさにこの点にある。同社が重視するのは「飲酒事故をなくす」という揺るぎない企業姿勢だ。

点呼・運行管理制度の変更についてはテレニシに聞けば大丈夫──。運送の世界でそうした立ち位置を築いてきたことは、その一つ一つの提案の確かさゆえだ。法人事業本部ソリューション営業一部西日本営業1課課長の金谷恭佑氏は、「まず共通認識を持って周知活動に取り組むことが一番重要」と語る。法改正の内容は、難解な日本語のニュアンスひとつで解釈が揺れやすい。現場担当者や地域ごとに説明がぶれれば、現場の理解が割れ、結果として運送事業者を迷わせてしまう。テレニシの現場担当者は、そうであってはならないのだ。

▲テレニシの金谷恭佑氏

制度変化のなかで生まれる誤解と向き合う

変化する点呼制度を改めて整理し、有効に機能させるために、テレニシが取り組んだのは社内の認識統一だった。過去には、制度解釈や説明の仕方にばらつきが生じたこともあったと、金谷氏は正直に振り返る。点呼制度は、運送業界では横のつながりが強い分、「あの会社ではこう言われた」という話が瞬く間に広がる。そのため、説明のブレは業界全体の混乱にもつながりかねない。

こうした背景から、同社では提案書や外部への発信資料、チラシを常に最新の制度解釈に基づいて更新し、口頭だけでなく目でも理解できる資料として整備。さらに、各拠点・各担当が同じ言葉で説明できるよう、社内でのすり合わせを徹底してきた。

点呼・運行制度の変更を、現場の最前線でもっとも正しく理解していること。さらに運送現場の事情や課題も熟知していること。それこそが同社の現場担当者の矜持なのである。

点呼を“組み合わせて使い切る”という考え方

特に点呼制度の話題で誤解されやすいのが、新たに取り入れられた業務前・業務後の自動点呼の理解だ。金谷氏は、「自動イコールすごい、人なしで楽にできるという考えの企業が多い」と指摘する。確かに自動点呼は、運行管理者の立ち会い負担を軽減し、運転手の働き方を柔軟にできる有効な手段である。しかし、大切なのは、それが人を不要にする仕組みではないという点だ。

誤検知が起きた場合の対応、体調変化の兆し、日々のコミュニケーション。これらは依然として人が担うべき領域である。だからこそテレニシは、「点呼システムの導入よりも前に正しい点呼方法の理解」を優先する。必ずしも、自動点呼の導入だけが正解ではない。現状の運用課題を整理せずに自動化だけを進めれば、かえって現場が混乱する可能性があるからだ。

金谷氏は、「自動点呼を入れたからもう大丈夫、ではなく、管理者の負担軽減につなげていくツール、最適配置を見直すためのツールとして考えてほしい」と呼びかける。点呼は単体で完結するものではなく、対面・電話・遠隔・自動を“組み合わせて使い切る”ことで初めて、現場にフィットする運用になる。

金谷氏は重ねて強調する。

「自動化で管理者やドライバーの負担を減らし、人が本来担うべきコミュニケーションに注力すること。これこそが、新たな点呼運用の主旨であると理解することが何よりも重要」なのだと。

運用を支える「器」としてのシステム

こうした“組み合わせによる点呼設計”という考え方を、現場で無理なく実装するための土台となるのが、テレニシのクラウド型点呼システム「IT点呼キーパー」だ。同システムは、対面・電話・IT・遠隔点呼など複数の点呼方法を一元的に管理できる設計を採っている。

▲「IT点呼キーパー」運用イメージ(出所:テレニシ)

重要なのは、制度やシステムありきで現場を当てはめるのではなく、現場の実態に合わせて点呼の形を組み立てられる点にある。金谷氏は、「システムは答えを出すものではなく、運用を支える器」と位置付ける。どの点呼方法を選び、どう組み合わせるかを考える主体はあくまで現場であり、IT点呼キーパーはその判断と運用を下支えする存在だ。

それぞれに最適な点呼方法は違うが、IT点呼キーパーはどんな現場においても有効な選択肢であるとの自信に揺らぎはない。しかし、まず何よりも制度を理解してもらい、その上で選んでもらうこと。その優先順位が変わることはない。

制度を正しく伝えるために、同社が重視しているのが社内教育だ。その象徴が、「週に一回ロールプレイングを全営業マンで実施する」(金谷氏)という取り組みである。毎週テーマを設定し、提案書や外部発信の方法、現場から吸い上げた最新の課題も含めて議論を重ねる中で、説明力と理解度の底上げを図っている。

また、各都道府県トラック協会の青年部会との連携も強めている。点呼制度理解や点呼の考え方を共有するための時間を設けてもらい、最新の知見を継続的にアップデートする。日常から点呼業務を実施している人たちでも、「今、求められているのはこういうことなんだという話をすると、そういうことか、そういうやり方もあったのかと納得してもらえることは多い」(金谷氏)。すでに別のシステムを使っている運送会社、現行の点呼運用で満足しているという事業者でも、それぞれ何らかの「気づき」を持ち帰ってもらえているのではないかと金谷氏はいう。そこには、日々の研鑽のなかで積み上げられた、現場の一人一人の知識や熱意、そして何よりも「飲酒運転事故をなくすためにどうすれば良いのか」という思いが、現場の隅々にまで浸透していることを感じさせる。

点呼への取り組み方が未来を変えるー現場に寄り添う覚悟

▲「IT点呼キーパー」の特長(クリックで拡大、出所:テレニシ)

ここで再び、IT点呼キーパーに話を戻そう。

IT点呼キーパーが、ほかの類似するツールに負けない強みとは何か。金谷氏は、「使いやすさとサポート力の2つ」と即答する。IT点呼キーパーは、「導入拠点はすでに1万営業所規模に及ぼうとしているが、今まで使用困難だったという相談はほとんど受けたことがない」(金谷氏)という実績自体が、その有用性の証明と語る。

現場で使いにくいものは意味がない、新たな負担が増えるだけである。操作性を極力シンプルにし、ITに不慣れな現場でも無理なく使える設計としている点、そして点呼という止められない業務を支えるための24時間365日のサポート体制ではどこにも負けないと強調する。

さらに新たな運用方法に対応する機能更新でも、現場のフィードバックを取り入れた機能にこだわる。業務後自動点呼機器としての機能を備え、現在は業務前の対応についても実装に向けた開発を慎重に進めているという。最新機能を喧伝するよりも、「安心して使い続けられること」に価値を置く姿勢が、ここにも表れている。

あとはIT点呼キーパーを使うか使わないか、それは運送事業としてどんな未来図を描いているか次第だ。

行政処分の厳格化や許可更新制度の導入は、本来、運送事業者にとっての“当たり前”を再確認する動きに過ぎないはず。一方で、こうした制度変更をきっかけにして業界から退場していく事業者が増えることも現実的な見通しとなってしまった。いくら新しい点呼機器を取り入れても、そもそも運用する人たちの認識が間違っていては、その真価を発揮することはできないだろう。

金谷氏は、「点呼をきっかけにして事業を続けられなくなってしまうのは見たくない」と語る。日常の点呼を疎かにしないための方法は、必ずしもIT点呼キーパーの運用でなくても良い。紙媒体でしっかり管理できるのであればそれでも良いと助言することもある。ただしその代わり、「ここだけは法的に必ず網羅して」と譲れないライン、取り組み姿勢は明確に示す。

取材の終盤、金谷氏は自身の仕事観についても語ってくれた。運送業界を専門に担当して3年。「正直、今が一番営業をやっていて楽しい」と語る。取引先からは、「費用をかけてもらったのに感謝される。システムで社内環境が良くなったといわれる」(金谷氏)など、これまで携わった業界にはなかった手応えを感じ、運送現場の変化を実感できることがやりがいにつながっているのだという。

ただツールを売りにいくという姿勢ではなく、縁があった運送事業者が、この先もずっと日本の運送を支え業界の安全を守る模範となってくれることが目標である。ただ目先の効率化ではなく、運送業界の未来につながる取り組みに参画している、そんな思いが日々の業務を充実させているのだろう。

「結局、使うのは人」(金谷氏)。自動化やITが進歩しても、この言葉は変わらない。飲酒事故をなくすために、運送業の現場に寄り添い、話し合い、助言し、伴走する。テレニシは、制度が大きく動く今だからこそ、現場にとって確かな、ぶれることない指針であろうとしている。

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