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新旧トップが語る「過去の否定」と次の成長軸

ヤマト会見Q&Aから浮かぶ「宅急便依存からの転換」

2026年1月23日 (金)

ロジスティクスヤマトホールディングス(HD)が22日に発表したトップ交代。記者会見の後半に行われた質疑応答では、新旧社長の本音が垣間見える場面が数多く見られた。長尾裕社長が櫻井敏之氏に託した「過去の否定」の真意や、櫻井氏が掲げる「聖域なき軌道修正」の具体像など、メディアからの質問に対して両氏が語った言葉を紹介する。

記者会見における主な質疑応答の要旨は以下の通り。

▲(左から)ヤマトHD現社長の長尾裕氏と次期社長の櫻井敏之氏

【質問1】(長尾氏へ)櫻井氏を次期社長に指名した具体的な経験や実績、理由は何か。(櫻井氏へ)適正なプライシング、CL(コントラクトロジスティクス)、グローバルの成長を具体的にどう実現するのか。また過去の経験をどう生かすか。

長尾氏:櫻井氏は現場での経験に加え、グループ全体の経営戦略機能などのヘッドクオーターでの企画にも携わっており、非常に幅広い経験を持っている。人柄も誠実で、これからのヤマトグループを率いるにふさわしい人物だ。ヤマト運輸の阿波誠一社長としっかりタッグを組んで経営を作っていける点でも、非常にふさわしいと判断した。

櫻井氏:この一年、宅急便事業で現場力向上に注力してきた。セールスドライバー(SD)が本来業務に専念できるよう採用を強化し、暑熱対策のファン付きベスト配布など環境整備を行った結果、着実な手応えを感じている。この経験をCLやグローバルにも展開し、各現場の課題と顧客ニーズを捉え、経営資源を大胆にシフトさせていく。プライシングについては、現場力を磨き、スピード商品などの付加価値を高めながら適正化を進める。

【質問2】(櫻井氏へ)このタイミングでの社長交代となった理由は何か。また事業環境をどう見ているか。

櫻井氏:宅配市場そのものが、これまでのように順調に伸びていくわけではないと認識している。小型荷物はEC(電子商取引)の伸長で増えるが、市場全体は簡単に伸びる状況にはない。付加価値の向上や宅急便以外の領域への注力が必要であり、戦略の大きな転換点にあるこのタイミングで交代することとなった。

【質問3】(長尾氏へ)社長としての10年間を振り返ってどうか。(櫻井氏へ)成長軌道に乗せるための「聖域なき軌道修正」について、具体的な意気込みは。

長尾氏:激動の期間だった。特に新型コロナウイルスの蔓延時には、第一線の社員の献身的な努力によってサービスを継続できたことに深く感謝している。経営者としてやれたこと・やれなかったことは多くあるが、まずは社員への感謝の思いが一番大きい。

櫻井氏:構造改革そのものは長尾社長のもとで土台が整っている。しかし、事業環境は都市集中や地方の過疎化など大きく変化している。これまでの改革を定量的に測りながら、現状に鑑みて必要な修正は躊躇なく行うという意味で「聖域なき」という言葉を使った。

【質問4】(長尾氏へ)外部人材を登用してきたなかで、今回プロパーの櫻井氏をトップにした理由は。

長尾氏:中核となるヤマト運輸をはじめ、当社は多くの現業部門・現場を抱えている。外部から招いたタレントの知見も重要だが、この企業グループを率いるための素養を検討した結果、結果的にプロパーである櫻井さんが最もふさわしいと判断した。彼なら「会社という経営」がしっかりできると確信している。

【質問5】(長尾氏へ)宅急便50周年を迎え、創業理念と今の姿は合致しているか。(櫻井氏へ)今後の成長において、M&Aをどう考えているか。

長尾氏:社会構造や荷物の中身は変化したが、社訓にある「思想を堅実に礼節を重んずべし」という精神は変わらず大切にしている。第一線の社員の努力の積み重ねがブランド調査での評価にもつながっているが、環境変化の中で今後も必要とされる存在であり続けられるか、新体制でも向き合っていかなければならない。

櫻井氏:持続的な企業成長と企業価値向上のため、必要な機能やシナジーを得られる相手については、積極的にリサーチを行いながらM&Aを進めていきたい。

【質問6】(櫻井氏へ)自身の海外経験の内容と、今後のグローバル事業の舵取りについて。

櫻井氏:1998年の入社直後に海運の現場で通関や国際物流営業を3年間経験した。また15年ほど前には、シンガポールの宅急便事業の営業責任者として2年間駐在した。海外事業にはその国の文化に合わせたビジネス展開が不可欠だと肌身で感じている。ヤマトのプロパーだけでは足りない知見については、中核となる人材の採用も積極的に行い注力していく。

【質問7】(長尾氏へ)2024年問題について、現在の状況をどう捉えているか。(櫻井氏へ)宅急便事業のあえての「課題」はどこにあるか。

長尾氏:ラストマイルの働き方改革は進んでいるが、幹線輸送を担う協力会社の輸送力確保が大きな課題だ。特に大型ライセンスを持つドライバーの高齢化は、まだ抜本的な解決ができておらず、今後も継続的に手を打つ必要がある。

櫻井氏:ラストマイルの効率化はDX推進などで効果が見えてきた。一方で「営業」については、コロナ禍以降に入社した若い社員の経験が浅いことが課題だ。商品の売り方のレクチャーに加え、50周年を機に「自分たちの仕事の誇り」を見つめ直すインナーキャンペーンを通じ、現場力を向上させていきたい。

【質問8】(長尾氏へ)長尾社長が期待する、櫻井氏と阿波社長(ヤマト運輸)との連携とは。(櫻井氏へ)阿波社長とのバランスや役割分担をどう考えているか。

長尾氏:両者に共通するのは誠実な人柄と、人の話を先に聞くという姿勢だ。この1年、2人が密に連携する光景は非常に頼もしく、このチームワークを経営陣全体に広げていってほしい。

櫻井氏:阿波社長は宅急便現場の知見が非常に深く、私はロジスティクスやグローバルなどの成長領域に経験がある。バラバラにやるのではなく、宅急便の顧客基盤を成長領域に活用するなど、密にコミュニケーションを取って進めていく。

【質問9】(長尾氏へ)これまでの数々のチャレンジを踏まえ、新社長に望むアドバイスは。(櫻井氏へ)18万人のグループ従業員へどのようなメッセージを送るか。

長尾氏:「私の代でやったことを遠慮なく否定してほしい」と伝えている。それができる人でなければ次の社長はできない。

櫻井氏:「もっと自分たちの会社、自分たちの事業を好きになろうよ」というメッセージをまず伝えたい。ヤマトの社員は自社や事業が大好きであるという強みを、成長の原動力にしていきたい。

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