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中国グリーンエネ物流が転換期、港湾に239億ドル

2026年3月6日 (金)

国際エネルギー転換を背景に、中国発のプロジェクト貨物と脱炭素物流が新たな局面を迎えている。米ウィリアム・アンド・メアリー大学の研究機関エイドデータが3月5日に公開した報告書は、中国が2000年から25年にかけて90か国168港に239億ドルを投じ、363件の港湾関連プロジェクトを実施した実態を明らかにした。同時に、洋上風力タービンの巨大化やグリーンメタノールのバンカリング体制の構築が進み、プロジェクト貨物の輸送需要は構造的に拡大している。(編集長・赤澤裕介)

中国の海外港湾投資は、一帯一路(BRI)のインフラ整備と連動して進んできた。エイドデータの「Anchoring Global Ambitions」報告書によると、融資先の上位にはスリランカのハンバントタ国際港(19億7000万ドル)、豪州のニューカッスル港(13億2000万ドル)、カメルーンのクリビ自治港(11億7000万ドル)が並ぶ。注目すべきは、融資総額の45%が高所得国20か国に向けられている点だ。豪州、スペイン、シンガポール、ニュージーランドなど、商業目的の投資が大半を占める。低・中所得国向けとは性格が異なり、サプライチェーンの分断リスクに対するヘッジとしての側面が強い。

24年と25年だけで6億1400万ドルの新規融資が確認されており、投資ペースは鈍化していない。報告書はまた、中国が港湾投資と重要鉱物の採掘拠点を近接させる傾向を指摘しており、港湾から500キロ圏内に19か所の中国系鉱山が確認された。物流ネットワークと資源確保を一体で設計する戦略が浮かび上がる。

平陸運河26年末開通、ASEAN物流を再編

こうした港湾投資と並行して、中国南西部の物流地図を塗り替えるインフラが完成に近づいている。広西チワン族自治区で建設中の平陸運河(全長134.2キロ)は、26年末に開通する。総投資額727億元(101億ドル)のこの運河は、内陸部の南寧から北部湾(トンキン湾)までを結び、従来広東省を経由していた航路を560キロ短縮する。5000トン級船舶が航行可能で、年間貨物取扱量は8900万トンと見込まれる。

26年初時点で計画投資額の89.7%がすでに執行済みで、5月には航行準備が始まる見通しだ。運河は「西部陸海新通道」(新国際陸海貿易通路)の中核プロジェクトに位置付けられており、中国内陸部からASEAN諸国への物流コストと時間を大幅に圧縮する。ベトナムは中国の標準軌鉄道との接続を決定しており、運河と鉄道の組み合わせで中国経済圏との統合が一段と進む。北部湾港のコンテナ取扱量は25年に初めて1000万TEUを突破しており、運河開通後のさらなる拡大が見込まれる。

さらに中国は、平陸運河の延長ルートとして全長300キロの「湘桂運河」の検討にも着手しており、実現すれば陝西省から広西まで3200キロの内陸水運ネットワークが形成される。推定投資額は1500億元(216億ドル)と平陸運河の2倍を超える規模だ。

プロジェクト貨物の観点では、こうしたインフラ整備が中国内陸部の製造拠点から東南アジアへの重量物・大型機器の輸送ルートを根本的に変える可能性がある。従来、広東省の港湾に依存していた内陸発の超大型貨物が、北部湾経由でASEAN市場に直接出荷できるようになるためだ。

エネルギー転換は、プロジェクト貨物市場の最大のボリュームドライバーになりつつある。象徴的なのが、中国の風力タービンメーカー・明陽智慧能源(ミンヤン・スマートエナジー)が計画する50MW浮体式洋上風力タービンだ。25MW×2基のデュアルローター設計で、ローター直径は290メートルに達する。広東省の製造拠点で26年に量産を開始し、初期の年間生産能力50基を第2フェーズで150基に拡大する計画だ。

コスト面でも注目される。ミンヤンはkWあたり1300ドル以下を目標としており、欧州の6100ドル、中国国内の3000-4300ドルと比べて大幅に安い。同社はスコットランドにも18億ドルを投じて製造拠点を建設する計画で、欧州の浮体式風力市場への参入を狙う。

こうした巨大コンポーネントの輸送は、プロジェクト貨物業界にとって新たな課題と機会を同時にもたらす。120メートル級の風力タービンブレード、重型変圧器、モジュラーパワーユニットなど、OOG(Out-of-Gauge)貨物の多モード輸送チェーン管理が求められる。中国の専門物流企業は、CAD積載図や重心計算を統合したワンストップサービスで、工場出荷から遠隔地の建設サイトまでの一括管理を強化している。「Breakbulk Europe 2025」を機に、中国企業が従来の「単純輸送」からプロアクティブなプロジェクトマネジメントへ転換する動きが加速した。

脱炭素化は船舶の燃料転換も促している。上海港は中国のグリーンバンカリングの先駆けとなっており、25年には保税燃料油の供給量が455万トンと前年比9.5%増を記録した。保税LNG(液化天然ガス)のバンカリング量は54%増の71万2000立方メートルに拡大し、グリーンメタノールの定期バンカリングサービスも確立された。

上海港のメタノールバンカリングは24年4月にAPモラー・マースク(デンマーク)の「アストリッド・マースク」で初めて実施され、25年1月には定期運用が始まった。25年7月にはCOSCO(中国)の初のメタノール二元燃料コンテナ船「コスコシッピング揚浦」(1万6136TEU型)に1000トンのグリーンメタノールを船間移送で供給し、米国東海岸向け航路に就航させた。25年12月にはRORO船向けのメタノールバンカリングも実現している。

上海国際港務集団(SIPG)は30年までにLNGバンカリング100万立方メートル、グリーンメタノールバンカリング100万トンの「ダブルミリオン」目標を掲げる。洋山港はLNG、グリーンメタノール、バイオ燃料、超低硫黄燃料油の4種類のバンカリングサービスを提供できる中国初の港湾となった。

東南アジアでは、中国+1戦略によるベトナム、タイ、マレーシアへの製造移転が続いており、関連する原材料や設備のプロジェクト貨物需要が増加している。インドネシア、ベトナム、マレーシアではオイル&ガスのグリーンフィールド投資が活発で、再生可能エネルギーとの併用による投資が拡大中だ。ASEAN諸国の再生エネ目標(30%以上)も、中国製グリーンエネルギー機器の域内輸送を押し上げる要因となっている。

一方、米国のAIチップ輸出規制は間接的にプロジェクト貨物市場に影響する可能性がある。エヌビディアH200チップの中国向け輸出上限が検討されており、中国のAIデータセンター拡大に伴うモジュラー電源やサーバー機器の輸送需要に変動が生じうる。ただし、グリーンエネルギー物流は脱炭素化の政策的優先度が高く、AIチップ規制とは別の成長軌道にある。

業界の注目イベントとして、26年6月に上海で開催される「transport logistic China 2026」では、プロジェクトカーゴの専門セクション「project cargo China」が新設される。800社以上の出展が見込まれ、エアカーゴ、プロジェクト貨物、倉庫ソリューションが展示される。

▲中国の港湾・エネルギー関連指標(クリックで拡大)

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