国際米国のラストマイル配送市場で、長年の勢力図が塗り替わりつつある。アマゾンの自社物流網が既存大手に迫る規模に成長する一方、UPSはアマゾン向け配送量を半減させる大胆なリストラに踏み切った。ウォルマートは店舗網を武器に他社向け配送事業にまで手を広げ、ターゲットも翌日配送の全国展開を急ぐ。小包配送の市場規模は2024年に2030億ドル(30兆円)を超え、年間224億個の小包が行き交う巨大市場で、コスト・速度・収益性をめぐる競争の構図が根本から変わり始めている。(編集長・赤澤裕介)
米国の小包配送市場はこれまで、USPS(米国郵便公社)、UPS、フェデックスの「ビッグ3」が支配してきた。ここに割って入ったのがアマゾン・ロジスティクスだ。ピツニーボウズが毎年発行する小包配送指数によると、アマゾン・ロジスティクスの2024年の米国内配送量は63億個で、前年比7.3%増。市場シェアは28%に達し、首位USPSの69億個(シェア31%)に肉薄している。このペースが続けば、28年にはアマゾンがUSPSを抜いて米国最大の小包配送事業者になるとの予測もある。
アマゾンの物流網は、自社EC(電子商取引)の配送を担うだけでなく、外部販売者向けのフルフィルメントサービス(FBA)や、ほかのECプラットフォーム向けの「マルチチャネル・フルフィルメント」(MCF)にまで拡張されている。セミトレーラー4万台以上、配送バン3万台以上、航空機110機以上を擁する規模だ。主要60都市圏ではプライム会員の注文の6割近くが即日または翌日に届く体制を築いており、地方配送の拡充にも40億ドル(6000億円)を投じる計画を掲げている。
「脱アマゾン」に動くUPS
この構造変化で最も大きな影響を受けているのがUPSだ。UPSのキャロル・トメCEOは25年1月の決算説明会で、26年後半までにアマゾンの配送量を50%以上削減すると表明した。アマゾンはUPSの売上高の11.8%(24年実績)を占める最大顧客だが、トメCEOは「アマゾンは最大の顧客だが、最も利益率の高い顧客ではない」と明言。アマゾンのFC(フルフィルメントセンター)からの出荷の60%が赤字だったという。
UPSはこの「アマゾン依存脱却」に伴い、大規模なネットワーク再編を進めている。25年には4万8000人の雇用を削減し、93か所の物流拠点を閉鎖。26年にはさらに3万人の削減と24拠点以上の閉鎖を計画しており、これらの施策で30億ドル(4500億円)のコスト削減を見込む。
同社が代わりに注力するのは、利益率の高いヘルスケア物流や中小企業(SMB)向けサービスだ。Q4の実績では、取扱量が10.6%減少したにもかかわらず、1個当たり売上は米国内で8.3%上昇し、収益性は改善している。トメCEOは「数量は減るが、顧客基盤の質が上がり、1個あたりの収益は大幅に向上する」と説明した。
一方、フェデックスも24年の配送量が37億個と前年の39億個から減少した。同社は「ネットワーク2.0」と呼ぶ統合計画でフェデックス・グラウンドとフェデックス・サービシーズを一本化し、27年までに20億ドルのコスト削減を目指している。
小売り大手も独自のラストマイル戦略を加速させている。ウォルマートは4700の米国店舗を分散型の配送拠点として活用し、自社会員向けの即日・翌日配送を展開するだけでなく、ほかの小売企業にも配送機能を提供する「GoLocal」事業を立ち上げた。GoLocalは21年の開始以来、累計3000万件の配送を達成している。ドローン配送も5州で実用化しており、21年以降15万回以上の配送実績がある。
ターゲットも今春、翌日配送を20都市圏に拡大し、人口カバー率を60%に引き上げる。同社は店舗を出荷拠点に活用する「stores-as-hubs」モデルを軸にしつつ、大型店舗やFCへの集約を進めるハイブリッド型に進化させている。傘下のシプト(Shipt)を通じたラストマイル配送と、全米11か所のソーテーションセンターを組み合わせた仕組みで、店舗起点のフルフィルメントコストをFC出荷比で最大40%低く抑えてきた。
こうした動きの背景には、ラストマイルのコスト構造の厳しさがある。ラストマイルは配送全体のコストの最大50%を占めるとされ、小売業者の76%がラストマイルコストの上昇を報告している。宅配を効率化なしに続ければ赤字になるという認識は業界で広く共有されており、各社が店舗起点の配送、マイクロフルフィルメント、ギグワーカー活用、ドローンなど多様な手段を組み合わせる方向に動いている。
米国のラストマイル市場で起きている変化は、日本の物流業界にとっても示唆に富む。ECと店舗の融合、配送スピード競争、既存キャリアの収益性悪化、そしてプラットフォーマーによる物流の内製化。これらの潮流は日本でも同時進行しており、米国の先行事例は今後の国内市場を考えるうえでの参照点になる。
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