国際2026年1月の空輸需要は前年比7.8%増と好調を維持する一方、コンテナ船市場は閑散期入りでレート軟化が続く。そこにホルムズ海峡の事実上閉鎖という最大級の地政学リスクが重なり、モード間の格差が一段と鮮明になってきた。(編集長・赤澤裕介)
IATA(国際航空運送協会)が2日に発表した1月の航空貨物データによると、グローバル需要(CTKベース)は前年比5.6%増。アジア太平洋の航空会社は同7.8%増と全体を上回り、地域別シェア35.9%で引き続きグローバル成長のけん引役となった。容量は3.3%増にとどまり、需要との差が開いている。IATAのウィリー・ウォルシュ事務総長は「アフリカ、中東、アジア太平洋、欧州がグローバル平均を上回る一方、米州は縮小」と地域間の二極化を指摘した。
注目すべきは貿易レーン別の動向だ。欧州-アジアは前年比15.2%増で35か月連続の成長を記録した一方、アジア-北米は0.6%減と唯一のマイナスとなった。米国の関税政策が貿易フローを歪めている構図が数字にはっきり表れている。
ホルムズ危機がモード横断で市場を揺さぶる
2月28日の米国・イスラエルによるイラン攻撃を契機に、ホルムズ海峡は事実上の通航停止状態に陥った。イラン革命防衛隊(IRGC)は3月2日に海峡の「閉鎖」を宣言、3月5日には保険会社が戦争リスクカバーを撤回し、経済的にも通航不能となった。APモラー・マースク、MSC、ハパックロイド、CMA CGMなど主要コンテナ船社はホルムズ通航を停止、一部はスエズ経由も再び喜望峰迂回に切り替えた。
LNG(液化天然ガス)キャリアのスポットレート急騰は、海外船舶ブローカーの週報によると米ガルフ→アジアで1日あたり30万ドルに達した。2月25日時点の4万2000ドルからの上昇幅はおよそ650%に上る。カタールがLNG生産を停止しフォースマジュールを宣言したことで、アジアの買い手は米国や豪州からの調達に切り替えを迫られ、航海距離の延長が船腹需要をさらに押し上げている。
空輸市場への波及も深刻だ。カタール、UAE、サウジアラビア、クウェートの領空が閉鎖され、フレックスポートのライアン・ピーターセンCEOはX(エックス)で「中東紛争がグローバル航空貨物容量の18%を市場から消した」と指摘した。中国→米国の空輸レートは15%程度上昇したとの報道もあり、eコマースやAIサーバー、半導体など技術系貨物の堅調な需要と相まって、アジア発の空輸レートには上昇圧力がかかっている。
コンテナ船市場は、危機前の段階では軟調だった。英ドリューリーの世界コンテナ運賃指数(WCI)は2月26日時点で1FEUあたり1899ドルと7週連続の下落を記録。しかし3月5日には同1958ドルへ3%反発しており、太平洋航路でのレート上昇(上海→ロサンゼルス2402ドル、10%増、上海→ニューヨーク2977ドル、7%増)が全体を押し上げた。ドリューリーによると、今後5週間(3月第2週-4月第1週)に703便中66便の空白航海が発表されており、うち太平洋東行きが52%を占める。
フレックスポート(米国)は3月5日の分析で、アジア-欧州西行き(FEWB)の輸送時間が喜望峰迂回で10-14日延長されると指摘。UAE向けコンテナのバックログが深刻化しており、ジュベルアリ港はほぼ機能停止の状態にある。ONEのジェレミー・ニクソンCEOはTPM26カンファレンスで「グローバル船隊の10%がこの事態に巻き込まれている。これは新たなブラックスワンだ」と語った。
ゼネタ(ノルウェー)のピーター・サンド首席アナリストは、喜望峰迂回だけでグローバルコンテナ容量の250万TEU相当が吸収されると試算している。ドリューリーはホルムズ経由のドライバルク貿易がグローバル需要の7%超にあたる月3000万トンに達すると推計しており、影響はコンテナにとどまらない。
一方、中国の全人代(全国人民代表大会)で3月5日に発表された26年のGDP成長率目標は4.5-5%で、過去3年の「5%前後」から引き下げられた。1991年以降で最も低い目標となる。第15次5カ年計画(26-30年)の初年度にあたり、財政赤字目標はGDP比4%、超長期特別国債1兆3000億元の発行が計画されている。物流市場にとっては、中国の輸出ドライブが鈍化する可能性と、消費刺激策による内需回復の両面を見極める必要がある。
日本の荷主・物流事業者にとっての示唆は明確だ。空輸は容量逼迫が当面続く見通しで、特に中東ハブ経由のルートは代替確保が急務となる。海洋は過剰容量と地政学リスクの綱引きが続き、レートのボラティリティーが高まる。LNG価格の高騰はバンカーコスト、ひいてはサーチャージに跳ね返る可能性がある。ホルムズ危機の期間次第で市場の景色は大きく変わるが、複数モード・複数ルートの柔軟な調達戦略がこれまで以上に問われる局面に入った。
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