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米物流の盗難・規制リスク、日系企業に波及も

2026年3月6日 (金)

ロジスティクス米国向け貨物を扱う日系物流企業やメーカーにとって、現地のサプライチェーンリスクが新たな段階に入りつつある。トラック貨物の組織的盗難が損失額ベースで前年比60%急増する一方、連邦政府はトラック運転免許の発給基準を3月16日付で大幅に厳格化する。盗難対策と人手確保という二正面の課題が、米国内配送の安定性を揺さぶっている。(編集長・赤澤裕介)

日本から米国へ輸出された貨物は、港湾や空港到着後の国内トラック輸送で初めて届け先に届く。この「ラスト数百マイル」の区間で、組織犯罪グループによる貨物盗難が深刻化している。手口は力ずくの強奪から、運送会社のIDを偽造して荷主やブローカーから正規の配車を受け、そのまま貨物を持ち逃げする「戦略的盗難」へと移行した。サイバー詐欺を駆使するこの手法は2021年以降1500%増えたと、米トラック協会(ATA)のクリス・スピアー会長が連邦議会で証言している。

盗難の標的も変化している。貨物盗難防止・回収ネットワークのカーゴネット(CargoNet)の2025年通年報告によると、件数自体は3594件で前年並みだったが、犯罪グループがサーバー機器や暗号資産マイニング装置、銅製品など高単価品を選んで狙うようになり、1件あたりの平均被害額は27万3990ドル(4100万円)と36%跳ね上がった。推定総損失額は7億2500万ドル(1100億円)に達し、前年から60%増えた。自動車部品やエンジンなど国内組み立て工場向け貨物も狙われており、日系自動車メーカーのサプライチェーンにとっても他人事ではない。

米運輸調査研究所(ATRI)はトラック業界の盗難被害を1日あたり1800万ドル以上と試算する。こうした事態を受け、トッド・ヤング上院議員は2月末に「SAFER Transport Act」を提出した。連邦運送事業者登録システムの近代化、詐欺検知の自動化、偽装運送業者(カメレオンキャリア)の排除、不正認証への刑事罰引き上げなどを盛り込む包括法案で、ATA、独立事業者団体OOIDA、運送仲介業者団体TIAなど主要団体が軒並み支持を表明した。

▲貨物盗難の主要指標(出典:カーゴネット2025年通年報告、クリックで拡大)

非居住CDL厳格化で運転手不足に拍車か

盗難リスクに加え、米国内配送のもう一つの不安要素がドライバー供給だ。連邦自動車運送安全局(FMCSA)は2月13日、非居住者向け商用運転免許(CDL)の発給資格をH-2A(農業季節労働)、H-2B(非農業季節労働)、E-2(条約投資家)ビザ保有者に限定する最終規則を公布した。3月16日発効で、雇用許可証(EAD)のみでの取得は認めない。

FMCSAのデレク・バーズ長官は、25年に非居住CDL保持者が関与した事故で17件の衝突と30人の死亡が発生したことを挙げ「安全な運転履歴を確認できない人物に商用車を運転させるわけにはいかない」と述べた。各州の免許機関には国土安全保障省の電子照合システム(SAVE)による確認、書類の2年間保管、FMCSAの要請への48時間以内の応答を義務付ける。

ただし、この規則は25年9月の暫定規則の段階からD.C.巡回控訴裁判所で差し止め訴訟が起きており、最終規則の公布後にも新たな訴訟が提起された。発効が延期される可能性は残る。法律事務所の分析では、規則は運送会社に直接義務を課すものではないが、対象外ビザのドライバーを雇用する事業者は免許更新時に資格喪失リスクに直面する。ドライバー資格ファイルの早期点検が推奨されている。

日本の物流業界は2024年問題でドライバー不足の深刻さを身をもって経験した。米国では移民ドライバーへの依存度が高い地域・業態があり、規制強化が短期的な供給混乱を招く構図は日本と重なる。盗難の組織化による保険料上昇、規制強化によるドライバー不足の長期化は、いずれも米国向けSCMのコスト・リードタイムに跳ね返る。日系企業の米国物流担当者にとって、現地パートナーのセキュリティー体制とドライバー確保状況の確認が急務になっている。

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