ロジスティクス「物流の2024年問題」や「脱炭素化」という、日本のサプライチェーンを揺さぶる巨大な逆風。多くの企業が防戦を強いられるなか、北欧発のイケアは、着々と物流変革を加速させている。イケアにとって、物流は単なる商品の移動手段ではない。同社は創業以来、家具を薄く平らに梱包する「フラットパック」の採用で輸送効率を飛躍的に高め、さらには顧客自らが商品を持ち帰り、自ら組み立てる仕組みを徹底することで、物流の難所であるラストワンマイルを、独自の顧客体験へと鮮やかに転換してきた。
創業以来続くこうした取り組みにより、世界中で「優れたデザインの家具を、誰もが買える低価格で届ける」という独自のビジネスモデルの展開が可能となっている。この徹底したサプライチェーンの最適化こそが同社の生命線であり、DNAそのものといえる。そのイケアで、今どのような取り組みが行われているのかを取材した。
グローバル戦略を国内へ実装する、専属物流会社の機能
現在、スウェーデンのグローバル本社の指揮のもと、自社コンテナの保有や船舶チャーターといった物流資産保有戦略、DCSA(デジタルコンテナ海運協会)への参画に伴うデジタル標準化の推進などがグローバルで進められている。国内においても、イケア・ジャパン(千葉県船橋市)とイケア・ディストリビューションサービス(イケアDS、愛知県弥富市)により、日本の市場環境や地理的特性に最適化した輸送網の構築とサステナビリティの追求を独自に深化させている。
イケアDSは、イケア商品の輸入から各店舗への配送、オンライン注文のフルフィルメントまでを一手に担うイケア専属の物流事業会社である。物流を単なる外部コストとして委託するのではなく、自社専属の組織が戦略の舵を握るこの体制こそ、イケアがいかにサプライチェーンを経営の最重要事項として捉えているかの証左といえる。

店舗を物流拠点化する「カスタマーフルフィルメント」戦略
イケア・ジャパンは国内の物流拠点として、愛知県のイケア弥富ディストリビューションセンターを中核に、全国14の店舗を展開するネットワークを構築している。特に大型のイケアストアは単なる販売拠点に留まらず、EC(電子商取引)事業における商品の保管・出荷を担う「カスタマーフルフィルメント機能」を保持しており、店舗そのものを高度な物流インフラとして活用している。
港湾ドレージ輸送においては、名古屋港や東京港をはじめとする主要港から各店舗へ、夜間帯の荷受作業に合わせた緻密なスケジュールでコンテナ輸送が実施されている。これはストア開店の数時間前までに売場への搬入を完了させるという運用要件を逆算したもので、分単位の精度で効率的な物流動線を管理している。
創業以来のDNA「フラットパック」による効率化の極致
輸送の効率化と環境負荷低減の両立においては、40フィートハイキューブコンテナの活用による積載効率の最大化や、輸入コンテナのデバンニング後に空コンテナを各ストアへの輸送に再利用する取り組みが推進されている。
もともとイケアは創業以来、物流と輸送の効率化を極限まで追求してきた歴史を持つ。その象徴が「フラットパック」と呼ばれる、家具を分解した状態で薄く平らに梱包する手法である。これにより梱包内の空隙を排除して積載効率を飛躍的に高めているだけでなく、定番の商品であっても定期的に梱包仕様の見直しを行い、常に輸送効率のさらなる改善が図られ続けている。イケアにとって、商品の開発と物流の設計は常に不可分であり、1ミリの厚みの削減が何万マイルもの輸送効率向上につながるという信念が徹底されている。
貨物運送事業許可の取得と外販への布石
イケアDSは08年の設立だが、24年1月に貨物運送事業許可を取得した。これにより、自社荷物のみならず他企業の荷物を運送することも可能となった。同社ではすでに、輸入に使われたコンテナをデパンニング後に他の拠点、店舗への輸送にも使うなど物流の効率化を図っているが、今後は他社とのラウンドユースを進めることでコンテナ回送やCO2の削減に取り組むなど、他社との協業も検討を始めている。
こうした基盤をもとに、コンテナ回送の削減とCO2排出量低減を目指すと同時に、地域特性に応じたモーダルシフトの活用も顕著である。名古屋港から内航船を用いて川崎港経由で関東エリアの各店舗へ配送するほか、九州エリアでは鉄道、東北エリアでは客船フェリーを活用するなど、多角的な輸送手段を組み合わせている。
配送網の脱炭素化とEV導入の最前線
欧州やインドでは大型EVトラックの導入が進んでいるが、日本国内ではまだEVトラクターヘッドの普及が進んでいないことから、ドレージ輸送における導入は慎重な検討段階にある。しかし、配送サービスのラストワンマイルにおいては、25年3月までに計28台のEVトラックを導入した。これにより配送サービスのゼロエミッションシェアは27.7%(25年8月時点)に達しており、物流における脱炭素化を業界に先駆けて推進している。
行動規範「IWAY」によるサプライチェーンの健全性維持
物流パートナーとの協力関係においては、イケア独自のサプライヤー行動規範「IWAY」への準拠がすべての輸送会社に義務付けられている。定期的な監査を通じて、ドライバーの適正な賃金や労働時間、さらにはサプライチェーンにおける児童労働や環境破壊の有無まで詳細に評価しており、環境への貢献やコスト管理のみならず、人権に配慮した持続可能なサプライチェーンの構築を徹底している。物流を重視するからこそ、その現場を支える「人」への投資と責任を果たすというグローバルスタンダードに準じたロジスティクスを実現しているのだ。(土屋悟)
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