ロジスティクス4月1日、改正貨物自動車運送事業法(2025年成立)が施行される。新たに設けられた再委託制限は、貨物運送の再委託回数を2回以内とする努力義務を課す。荷主から元請け、元請けから1次下請け、1次下請けから2次下請け。制度が許容するのはここまでだ。では、現場の委託構造はその枠に収まっているのか。(編集長・赤澤裕介)
なぜ3次請け以降は消えないのか
制度の数え方から確認する。改正法は元請けをゼロ次とし、元請けからの再委託回数を2段階までに制限する。取引の途中に貨物利用運送事業者が入る場合も、委託次数にカウントされる。

▲再委託制限の制度と現場のギャップ
努力義務であり、違反に対する直接の罰則はない。ただし、同日施行の実運送体制管理簿の義務化により、元請けは自社の委託構造の次数を把握せざるを得なくなる。国交省の解説資料では、元請事業者が管理簿を通じて委託が2次請けまでであることを確認する必要があるとされている。構造が可視化されれば、改善圧力は強まる。
典型的な例を想像すると分かりやすい。全国配送を受注した大手元請けが、着地側の配送を自社では賄えず、地域に強い利用運送事業者に委託する。利用運送事業者はさらに地場の実運送会社に回す。ここで再委託2回に到達する。繁忙期にその地場会社でも車両が足りなければ、別の事業者にさらに流れる。2回の上限は容易に超える。
もちろん、すべての取引が3次請け以降に及んでいるわけではない。専属便や定期幹線のように、元請けと実運送の関係が固定化している領域では、2回以内に収まりやすい取引もある。問題は、波動が大きく、着地側の実運送網を元請けが直接持たない案件ほど、制度との衝突が起きやすいことだ。
衝突が起きる構造的な理由は3つある。
第1に、繁忙期の波動対応だ。運送業の需要には季節変動や曜日変動がある。固定の傭車先だけではピークを吸収できない。ネットワークを持つ中間事業者が需給調整の役割を担っているが、その事業者が1層加わるだけで次数は1つ増える。制度は固定的な委託ルートを前提に設計されがちだが、波動対応の現実と最も強く衝突する。
第2に、地理的ミスマッチだ。荷主が指定する元請けは発地側に拠点を持つが、着地側の地場配送網を持たないことがある。帰り荷を探す実運送と荷物を捌きたい元請けをつなぐ結節点として、中間の事業者が介在する。この介在がなければ貨物は着地に届かない。
第3に、アセットレス型の元請けの存在だ。営業力はあるがトラックを持たない利用運送型の元請は少なくない。この場合、元請け自身が実質的に1次の位置にあり、そこから先の実運送への委託で2回の上限にすぐ到達する。利用運送事業者もカウント対象となったことで、この構造はさらに制約を受ける。
商慣行上の理由もある。中間に入る事業者、いわゆる水屋は、単なる情報仲介ではなく、与信枠の提供、支払いの立て替え、貨物事故時の1次対応というリスク負担の機能を担っている場面がある。元請けと零細の実運送会社の間に横たわる信用と事務負担のギャップを埋めるクッションだ。多重構造の一部では、中間減額によって実運送側の受け取り運賃が圧縮される。ただ、それは多重化の「目的」というより「結果」であり、すべての中間事業者を排除すれば解決するほど単純ではない。
公的に確認できる委託次数の分布データは乏しい。ただ、国がわざわざ回数制限を法定し、利用運送事業者もカウント対象と整理したこと自体が、多重構造が制度上の問題として顕在化していることを示している。

▲制度要件と現場の衝突ポイント
では、制度どおりに2回以内に収めようとすると、誰が何を負担するのか。
元請けが中間事業者を介さず実運送会社と直接契約を増やす場合、口座開設、与信管理、保険、事故対応のすべてを自社で引き受けることになる。零細の実運送会社は数が多く、元請けが直接に管理しきるには限界がある。結果として元請けは、一定の規模とコンプライアンス体制を持つ中堅事業者に直接取引先を絞り込む方向に動く。管理できない小規模事業者は取引の要件を満たせない側に回る。
直接取引が増えれば中間マージンが消え、実運送の手取りが増えるはずだ、というのは制度の理想だ。しかし、大元請けと零細実運送が直接テーブルに着いた場合、交渉力格差は歴然とする。取適法の書面交付義務や買いたたき禁止は防波堤として機能するが、現場レベルのパワーバランス是正には時間がかかる。「請求できる」と「実際に取れる」の間には距離がある。
求荷求車のデジタルプラットフォームは情報の接続には有効だが、与信、事故対応、支払い保証まで一体で代替できるとは限らない。水屋が担っていたリスク負担の機能を、プラットフォームがすべて引き受けるには至っていない。
参考になるのは建設業界の先例だ。建設業法の施工体制台帳は「誰が現場に入っているか」の可視化を劇的に進めた。無許可業者の排除にも一定の成果を上げている。しかし、専門工事ごとの分割発注という形で、多重構造自体は依然として残存している。物流でも、管理簿で構造が見えたとしても、波動対応という物理的な要請が消えない限り、現場は形を変えて構造を維持する可能性がある。
4月1日以降に問われるのは、再委託2回以内という数字を知っているかどうかではない。自社の案件がいま何次請けまで伸びているかを把握しているかどうかだ。まず委託構造を棚卸しし、3次請け以降の案件がどれだけあるかを特定する。そのうえで、なぜ発生しているのか、波動対応なのか、地理的ミスマッチなのか、仲介機能への依存なのかを切り分けなければ、数字だけを押しつけても構造は変わらない。構造を把握しないままでは、再委託制限にも、同日施行の白トラ荷主規制にも対応できない。
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