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世界の新車4台に1台がEV、日本は3%未満で停滞

2026年5月21日 (木)

ロジスティクス国際エネルギー機関(IEA)が5月20日に公表した年次報告書「Global EV Outlook 2026」(グローバルEVアウトルック2026)は、25年の世界の乗用EV(BEVとPHEVの合計)販売が前年比20%増の2000万台超となり、新車販売に占めるシェアが25%に達したと示した。世界では新車の4台に1台が外部充電可能なEVとなった一方、日本は補助金支援にもかかわらず販売が10万台強にとどまり、シェアは3%未満で2年連続の停滞となった。IEAは26年の世界の乗用EV販売についても2300万台、販売シェア28%まで伸びると見通している。乗用車市場の動きが鈍る一方で、物流向け商用EVは小型・軽商用車を軸に大手事業者の導入実績が積み上がる。世界の潮流、国内の現状、そして物流現場で起きている動きを整理し、28年に投入を見据えるいすゞ・UDトラックスの大型トラック共通プラットフォームと、UDトラックス上尾工場への生産移管までの道のりを展望する。(編集長・赤澤裕介)

世界の加速と日本の停滞、物流向け商用EVの現状

IEAは報告書で、25年の世界の乗用EV販売の伸びが地域ごとに不均一だったと指摘した。中国は1300万台超を販売し、新車に占めるEVシェアは55%近くまで上昇。月次でEVシェアが50%を超えた月が12か月中11か月に達した。欧州はEU CO2排出基準の厳格化が効き、販売が前年比30%超の420万台、シェア28%に到達。米国は税額控除の終了で第4四半期が前年同期比45%減となり、通年シェアは10%弱にとどまった。韓国は前年比65%増の20万台超でシェアが初めて2桁の11%に乗った。日本の3%未満という水準は、中国、欧州、韓国などと比べて際立って低い。

日本に関するIEAの記述は、レポートの中で他のアジア主要市場と並べると目を引く位置にある。要旨は、補助金支援にもかかわらず25年の販売モメンタムが2年連続で弱含み、台数が24年と同水準の10万台強にとどまったというもの。EVのシェアは3%未満、従来型ハイブリッド車(HEV)が新車販売の3割強を占めたとも記載されている。HEV中心の燃費規制対応、集合住宅居住の多さと専用駐車場・充電設備の制約が普及を遅らせていると指摘している。

世界でEVが伸びている背景には、モデル数の増加と価格競争力の改善がある。IEAによれば、25年に世界で販売された乗用車モデルは2500車種規模で、そのうち1000車種ほどがEVだった。さらに中国では、補助金を除いても販売されたBEVの7割が同等の内燃機関車より安かった。EV普及の論点は、環境意識から選択肢と価格の比重へと移っている。

日本の現状を、消費者がEVを敬遠していると単純化して捉えると見誤る。実態は、EVを選ぶ理由よりもHEVを選び続ける理由が強い市場だ。燃費性能、価格、給油インフラの安定、ディーラー網、リセールバリュー、いずれもHEVが先行している。日本のHEVは完成度が高く、ユーザーの利便性も高い。その結果として、EVへの置き換えが進みにくい状態が定着している。

日本自動車販売協会連合会(JADA)が26年1月8日に公表した25年通年の燃料別登録(乗用車)は、HVが153万19台で全体の60%超、BEVは3万9885台で1.6%にとどまった。BEV登録台数の内訳は輸入車が3万458台と全体の76%を占め、国内メーカーでは日産が4875台、トヨタが4203台と続いた。

なお、IEAが示す「EV販売10万台強」はBEVとPHEVを合わせた市場全体の販売規模を指す。一方、JADAの燃料別登録台数は軽自動車を除く登録乗用車が対象で、ここで示す3万9885台はBEVのみの数字である。また、IEAが示すHEV比率とJADAのHV比率も母数が異なり、JADAの「PHV」は本稿のPHEVに相当する。統計の対象と区分が異なるため、両者は単純比較できない。

26年に入って単月では動きがあった。JADAと全国軽自動車協会連合会の公表値をもとにEVsmartが集計した月次データでは、26年3月の国内乗用車販売(軽自動車含む)におけるEV(BEV+PHEV)シェアが4.15%となり、過去最高を更新。BEV単独でも3.11%まで上昇した。

ただし、この動きは政策要因が大きい。経済産業省が25年12月19日に公表したクリーンエネルギー自動車導入促進補助金(CEV補助金)の改定では、26年1月1日以降の新規登録車について、普通車BEVの補助上限は従来の90万円から最大130万円へ、PHEVは60万円から最大85万円へ引き上げられ、軽EVは最大58万円で据え置かれた。燃料電池車(FCV)は最大255万円から150万円へ見直されるが、年度途中の不利益変更を避けるため、25年度内は現行補助額を維持し、26年度以降に新たな上限額を適用する。次世代自動車振興センター(NeV)が執行する令和7年度補正予算では車両向けに1100億円が計上された。

国内BEV/EV単月シェアの推移を月次で整理する。


(注)JADAと全国軽自動車協会連合会の公表値をもとにEVsmartが集計。シェアは軽自動車を含むベース。

25年4月のBEVシェア1.01%を底に、9月にはホンダ「N-ONE e:」の発売もあり、EV合計シェアは3.51%まで上昇した。ただし、10-12月はEV合計シェアが2.70-2.88%にとどまり、再び3%を下回った。26年1月以降は、EV補助上限を130万円へ引き上げる制度見直しや、25年秋以降に相次いだホンダ「N-ONE e:」、トヨタ「bZ4X」改良、日産「リーフ」新型、スズキ「eビターラ」など新型車の投入・受注開始を背景に、EVシェアは3.28%、3.39%、4.15%と3か月連続で上昇した。

この推移が示すのは、日本のEV販売が補助金、新型車投入、年度末需要に左右されているということだ。その後の集計ではEV・PHEV比率が3.21%へ下がっており、3月の過去最高を市場の自律的な拡大と読むのは早い。補助金効果が一巡した後もBEVシェアが2.5-3%台で推移するかが、需要の底上げを見極める材料になる。需要が自律的に広がっている市場なら、補助金や年度末需要が一巡してもシェアは一定水準を保つ。日本ではそこがまだ確認できていない。

充電インフラの整備も進む。EV充電ネットワークを運営するe-Mobility Power(東京都港区)のネットワーク接続充電器数は25年度末時点で2万7122口(前年比1797口増)となった。ただし、この数値は急速充電器と普通充電器の合計であり、急速充電器だけの数ではない。最大350kW・1000V対応の次世代超急速充電器「SERA-400」も、東光高岳との共同開発で発表され、東名高速道路・海老名サービスエリアで設置計画が進む。商用車向けの本格展開はこれからとなる。

物流分野に目を移すと、商用EVの実装は小型と軽商用車を中心に進む。三菱ふそうトラック・バスの小型EVトラック「eCanter」次世代モデル(23年3月発売)は、川崎製作所でディーゼル車と混流生産する体制が定着し、納車実績を積み上げている。いすゞ自動車の「ELF EV」は23年フルモデルチェンジで設定され、フルメンテナンスリース「EVisionプレイズムコントラクト」で提供する。日野自動車の小型EV「デュトロZ EV」(22年6月発売、24年9月改良)は、ヤマト運輸が500台導入を決めた。

軽商用EVの選択肢も増えた。ホンダが24年10月に発売した「N-VAN e:」は、法人向け1人乗り仕様で243万9800円から、4人乗り仕様で269万9400円から、29.6kWhリチウムイオン電池で一充電走行距離245キロ(WLTC)を実現する。佐川急便の配送現場の要件を踏まえASF(東京都中央区)が企画・開発し、中国メーカーが製造する軽EV「ASF2.0」は、30kWhのCATL製LFP電池を搭載し、最大積載量350キロ、航続200キロ超。佐川急便は21年、自社で保有する配送用軽自動車7200台規模をEV化する方針を示しており、現在のサステナビリティ計画でも非化石エネルギー自動車の使用率を24年度実績の0.5%から30年度目標40.6%へ引き上げる方針を掲げる。京都大学発スタートアップのフォロフライ(京都市下京区)は25年6月に軽EV「FKV」を発表、SBSホールディングスが同年7月に10台をSBS即配サポートに投入。FKVは航続243キロ、6年または16万キロ走行までのバッテリー保証を備える。三菱自動車の「ミニキャブEV」も、日本郵便などで導入実績がある。

国内市場ですでに販売されている主要商用EVと、発売前のモデルの公表値・参考値を整理する。


(注1)各数値はメーカー公表値または報道・発表時点の参考値であり、同条件比較ではない。航続距離は測定モード(JE05、WLTC、JARI、メーカー独自)、架装、積載、気温、運用条件で変動する。価格はメーカー希望小売価格、参考価格、リース条件、補助金適用前後で実負担額が異なる。
(注2)BYD T35はBYD JAPANが25年10月時点で26年春の日本発売を見通すと公表したモデル。価格・仕様は同発表時点の参考値。

価格を公表する車種と、リース中心・法人向けで展開する車種に分かれているのも、商用EVの特徴だ。バッテリーの保証期間が長く、初期費用より総保有コスト(TCO)で比較する販売モデルが商用領域で広がっている。

大手物流事業者のEV導入実績を整理する。

ヤマト運輸は集配車両4万台のうち6割、2万3500台を30年度までにEV化する目標を掲げる。日本郵便は25年3月末までに、配送用の軽四輪EV8000台規模、郵便配達用の電動二輪など2万3800台規模をガソリン車から切り替え済みとしている。SBSホールディングスはラストワンマイル領域を中心にEV導入を進め、協力会社を含む車両のEV化方針を掲げている。

一方、幹線輸送と大型トラックのEV化はまだ本格化していない。物流脱炭素の対象は、宅配の軽バンに加え、幹線輸送・中距離輸送・大型トラックまで広がる。世界全体では、IEAによれば25年の電気トラック販売が初めて40万台を超え、前年比で倍増、トラック販売に占める比率は9%に達したが、その9割以上は中国市場での販売である。欧州や北米でも販売は伸びたが、電気トラックの購入価格はディーゼル比2〜3倍で、小規模事業者には届きにくい水準が続いている。

日本国内では、大型BEVトラックの量販・本格供給はまだ始まっていない。いすゞの大型「GIGA」は25年10月のキャブ刷新後もディーゼル専用で、UDトラックス(埼玉県上尾市)の「クオン」、三菱ふそうの「Super Great」、日野自動車の「プロフィア」も大型BEV版は商品化されていない。

大型については、生産体制再編の時期が具体的に示されている。いすゞは26年2月、大型トラックの生産機能を藤沢工場からUDトラックス上尾工場へ移管し、28年の稼働開始を計画すると発表した。総額400億円を投じ、生産能力は現行の1.5万台/年から2.5万台/年規模に拡大、1直から2直体制に切り替える。生産移管後、上尾工場ではいすゞ・UDトラックス・スウェーデンVolvo Group(ボルボ)の3社協業で開発する大型トラックの共通プラットフォームを採用した新商品を生産する計画だ。25年7月の3社新契約では、共通プラットフォームの市場投入後もボルボがパワートレインを中心としたコンポーネントの継続供給と技術支援を行うことが盛り込まれた。

ただし、この発表を「28年に国産大型EVトラックが量販開始する」と読むのは早計だ。公式発表が示しているのは、大型トラック共通プラットフォームの市場投入を見据えた生産体制再編であり、動力源(ディーゼル、BEV、FCV、ハイブリッド)は明示されていない。28年は大型商用車の世代交代を見据える時期であり、大型BEV量販の確定時期ではない。

28年までの2年強の期間に、物流事業者と国内大型トラックメーカーの動きはいくつかの軸で並走する。日野自動車は25年9月、国内初の量産燃料電池大型トラック「プロフィアZ FCV」を10月24日に発売すると発表した。古河工場でディーゼル車と混流生産する体制を取る。一方、いすゞとホンダが共同開発を進めてきた大型FCトラックは、報道によれば、水素ステーション整備の遅れを理由に投入時期が延期された。いすゞとトヨタ自動車が共同開発する小型FCトラックは27年度の生産開始を目指す公式発表がある。ボルボ・グループの「FHエレクトリック」など欧州向け大型BEVトラックの日本投入は未発表。物流事業者にとっては、26〜27年に軽EVと小型EVトラックで運用データを蓄積し、充電拠点や荷主との納品契約条件を整える期間となる。

国内商用車各社の再編も進む。トヨタ自動車、いすゞ、スズキ、ダイハツ工業による商用車CASE協業組織「Commercial Japan Partnership Technologies(CJPT)」では、FCトラック実証や架装機器電動化の標準化に向けた取り組みが続く。日野自動車と三菱ふそうトラック・バスの経営統合により誕生した持株会社「ARCHION」も26年4月1日に事業を開始し、東証プライム市場へ上場した。ゼロエミッション技術や自動運転などの先進領域でのシナジー創出を掲げる。

海外勢の参入は商用EVでも進む。中国BYD(深圳市)は「Japan Mobility Show 2025」で小型EVトラック「T35」(GVW3.5t未満、62kWhバッテリー、普通免許対応、積載1t)を世界初公開し、25年10月時点で26年春の日本発売を見通すと公表した。価格は架装費込み800万円前後で検討中とされた。BYDは日本の電気バス市場でも導入実績を積み上げており、累計納車500台突破を公表している。インドネシアでは中国モデルが25年のEV販売の75%超、タイでも中国製EV輸入比率が75%に達するなど、東南アジアでは、乗用EVを含むEV市場全体で中国製モデルの存在感が増している。

政策面では、国土交通省、経済産業省、環境省連携の「商用車等の電動化促進事業」(環境優良車普及機構=LEVOが実施)が補助金の柱だ。トラック分野ではLEVOが執行団体となり、BEV・PHEV・FCVトラックや関連充電設備の導入費の一部を支援する。補助率や対象要件は車種・設備区分ごとに異なるため、導入判断では最新の公募要領を確認する必要がある。令和7年度補正予算分の公募は26年4月24日に開始した。

世界の動向と国内の現状を重ねると、日本のEV普及は乗用車で3%未満、物流向け商用EVでは軽・小型中心、大型は28年の大型トラック共通プラットフォーム市場投入を見据えた準備段階にある。政府の脱炭素目標や新車販売における電動車比率目標を見据えれば、物流分野でも車型別に現実的な導入ルートを見極める必要がある。なお、日本政府の「電動車」にはHEVも含まれ、IEAが本稿で扱うBEV・PHEV中心のEVとは範囲が異なる。26-28年の準備期間には、軽EVと小型EVの導入と並行して、走行、充電、電力契約、稼働率、CO2算定のデータが実運用で蓄積される。

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