イベント物流事業者は、荷主の要望を受ける側でい続けるのか。運べる量から逆算して荷主の計画を組み替える側に回るのか。「アポなし荷主等パトロール」を全国に広げ、トラック・物流Gメンの中心として知られる田中幸久氏が、2026年4月、中国運輸局貨物課長から茨城運輸支局長に着任した。荷主と物流事業者の力関係を現場で見てきた田中支局長に、7月3日の本誌主催イベント「運びとキャラバン」を前に聞いた。(編集長・赤澤裕介)

──荷主主導の共同配送が各地で動き始めています。物流事業者の関わり方をどう見ますか。
まだ受け身の事業者が多い。荷主から共同配送の話が来ると、「情報を集める」「いったん預かって検討する」という反応になりがちだ。長年の商習慣の延長線上にある姿勢で、責められるものではない。ただ、その姿勢のままでは、これからの数年を乗り切れない。
トラックGメンとして全国の現場を回って分かったことがある。商売の競争のしわ寄せは、最後は一番弱い「運ぶ」を担う者に来る。その状態を直すのがGメンの役目だったが、行政の対応を待つだけでは足りない。物流事業者の側からも、力関係を変えにいく動きが要る。
──どう変えるのですか。
物流には絶対的な制約がある。労働時間の上限があり、車両の速度にも限界がある。「運べる量」には物理的な上限がある。ところが荷主の側には、いまだに「物流に頼めばなんとかなる」という期待が残っている。
物流事業者こそが「いくら運べるか」から逆算して計画を立て、荷主に示すべきだ。荷主が立てた計画を後から受けるだけでは足りない。運べる量を起点に、ここまでは確実に運べる、ここから先は条件を変える必要がある、と物流側から計画の形を示す。荷主にとっても、これは脅威にはならない。無理な前提で組まれた計画が途中で行き詰まるより、運べる量から逆算した計画のほうが、結果として商品は安定して届く。
──荷主には、輸送力の問題は物流部門に任せておけばよいという感覚も残っています。
そこが危うい。輸送力の制約は、物流部門を超えて効いてくる。運べる量に上限があるということは、それがそのまま販売計画の上限になり、調達計画の上限になり、生産計画の上限になる。運べないものは、作っても、仕入れても、最後は売り切れない。輸送力をどう確保するかは、荷主企業の経営企画や調達、販売の問題そのものだ。物流に無理を載せたまま計画を立てれば、最後に行き詰まるのは荷主自身の事業計画になる。だから荷主の側にも、運べる量を前提に計画を組み直してほしい。
運び手は替えがきくという発想
──複数年契約をどう見ますか。
先日、明治のセミナーで荷主にアンケートを取った。複数年契約について「すでに対応済み」が3割、「対応は可能だが未実施」が6割。合わせて9割が前向きだった。荷主の側にも、安定した輸送力を確保するため契約のあり方を見直す動きが出ている。
──課題も見えたと。
同じアンケートで、「代替の業者はいくらでもいる」と考える荷主が一定数いることも分かった。輸送力が逼迫するこの局面でも、運び手は替えがきくという見方が残っている。荷主には、この前提を問い直してほしい。本当に替えはきくのか。その前提が崩れたとき、自社の商品は誰が運ぶのか。
──荷主と物流の認識のずれは、ほかにどこで表れますか。
バース予約システムを誰が主体で入れて運用するのか。パレットの費用を誰が負担するのか。荷待ちや荷役に伴う付帯作業の費用をどう扱うのか。一つひとつで、いまだに意見の食い違いが続いている。本来は、両者がコストと作業を開示し合って、最適な分担を一緒に決めるものだ。
7月3日に深める論点
──当日は何を話しますか。
抽象論で終わらせるつもりはない。運べる量をどう算定し、荷主にどの数字を示すのか。複数年契約をどう切り出すのか。原価や輸送料をどこまで開示するのか。バース予約、パレット費用、付帯作業費を、お願いから交渉項目に変える方法。先送りされてきたこれらの論点を、現場目線で整理したい。提案の進め方は、言葉で説明するより、当日に具体例で示すほうが早い。参加者が自社の交渉や契約見直しに応用できるよう、実務に近い形で示したい。
──荷主の事例で取り上げたいものは。
茨城のカスミの取り組みがある。カスミは対外的に競合他社と共同配送はできない立場だが、間に運送会社が入って仲介することで、実質的な共同配送が成り立っている。調達物流ネットワークには取引先が数百社規模で参加し、1台のトラックを昼夜で使い分けて、納品の集約や車両の削減につなげている。
私が挙げたいのは、数字より、物流側の都合に荷主が合わせている点だ。荷主が一歩引いて物流の実態に寄り添っている。実証実験で終わる連携の多くは、現場の動きを見ないままデータだけで組み合わせようとして、積み残しが出る。続く連携は、互いの現場を見ている。この違いを、カスミのような事例を手掛かりに、当日さらに掘り下げたい。
7月3日の「運びとキャラバン」には荷主も多く参加する。荷主企業の物流、調達、販売、経営企画の各部門にとって、輸送力を前提に計画を組み直す実務論になる。田中支局長はセッション1(14時10分-14時30分)に登壇し、パネルディスカッション(15時-15時50分)にも加わる。会場は茨城県内で、YouTubeでもオンライン配信する。
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LOGISTICS TODAY presents 「運びと地位向上全国キャラバン」in茨城
「『Gメンの眼』×『現場のリアル』で挑む、茨城物流の2024年問題・その先へ」
・日時
2026年7月3日(金)
<トークイベント>14時-16時
<懇親会>17時-19時
・形式
会場参加+オンライン配信(ハイブリッド)
・会場
茨城県トラック協会 トラック総合会館 会議室(茨城県水戸市見川町2440-1)
・懇親会
会場周辺店舗を予定 ※詳細は別途ご連絡いたします。
・定員
会場参加 80人(物流事業者限定)、オンライン参加 100人
※いずれも先着順
・参加費
<トークイベントのみ>会場・オンライン:無料
<懇親会>お一人6000円(税込)予定
※参加費はトークイベント当日にお預かりします
・申込期限
2026年7月2日(木)16時
■主催:LOGISTICS TODAY、ワンロジ
■協力:茨城県トラック協会
■協賛:関西物流展、シグマインターナショナル、ハコベル、XMile(クロスマイル)、GOドライブ
※参加人数に限りがありますので、お早めにお申し込みください
※視聴URLは、開催の約1週間前と前日をめどにメールにてご連絡いたします
※後日、アーカイブ配信を予定しています(アーカイブ視聴も今回の事前登録が必要です)
※申込期限:2026年7月2日(木)16時まで
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<登壇者>
・田中幸久(関東運輸局 茨城運輸支局長/前・国土交通省トラックGメン統括)
・小倉邦義(茨城県トラック協会会長)
<モデレーター>
・吉岡泰一郎(ワンロジ社長)
・赤澤裕介(LOGISTICS TODAY社長 兼 編集長)
<トークイベント>
1:14時-14時10分:開演、オープニング
・モデレーター:吉岡泰一郎社長、赤澤裕介編集長
2:14時10分-14時30分:セッション1
・登壇者:茨城運輸支局、田中幸久支局長
・モデレーター:吉岡泰一郎社長、赤澤裕介編集長
・テーマ:― トラックGメンの軌跡と、茨城支局長としての新たな使命 ―
~全国の現場を見てきたからこそ分かる、取引適正化の急所~
3:14時30分-14時50分:セッション2
・登壇者:茨城県トラック協会、小倉邦義会長
・モデレーター:吉岡泰一郎社長、赤澤裕介編集長
・テーマ:安易な価格競争・補助金依存からの脱却!運送会社が自ら磨くべき「強み」と適正運賃収受のリアル
ーーーーーーー 休 憩 ーーーーーーー
4:15時-15時50分:セッション3(パネルディスカッション)
・登壇者:田中幸久支局長、小倉邦義会長
・モデレーター:吉岡泰一郎社長、赤澤裕介編集長
・テーマ:― 「行政の眼」×「現場のリアル」で創る、茨城物流の持続可能な未来 ― 補助金終了のカウントダウン、燃油費は「流動費」か?サーチャージ議論再燃
5:15時50分-16時:クロージング
(モデレーター:吉岡泰一郎社長、赤澤裕介編集長)
※オンラインの配信時間は、トークイベントの14時00分-16時00分(予定)
<懇親会>
17時-19時:懇親会・名刺交換会
※別会場で開催(別途、懇親会費(6000円程度)が必要です)
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