イベント東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催中の「物流DX EXPO 2026 夏 東京」は会期2日目を迎え、特別企画「物流DX未来会議2026 AFTER ACTION IN TOKYO」内でセッション「フィジカルインターネット実現のカギ 企業の枠を超えた輸送力シェアとユニットロード輸送をつなぐ『Bit Waybill』」を開催した。ロジザード社長の金澤茂則氏が登壇し、本誌・赤澤裕介編集長が進行を務めた。
議論の口火を切ったのは、物流業界で懸念が続く輸送力不足への認識だ。2030年度の貨物輸送力不足の予測値が従来の「34%」から「7%−25%」へと下方修正されたことについて、赤澤編集長は「足元の数年で一気に減らないというだけの話であり、国のメッセージがミスリードにつながる懸念がある」と警鐘を鳴らした。さらに、2050年に向けて労働人口が激減することや、燃料高騰に伴う運送会社の倒産急増に触れ、「中小零細の運送会社が倒産した際、ドライバーが他業種へ流出していく実態がある。この流出分は予測数値に含まれておらず、もっとえげつない不足が起こる可能性がある」と指摘した。

▲ロジザード代表取締役社長の金澤茂則氏
これに対し、金澤氏は「ドライバーが減ることはほぼ確実だが、輸送力そのものは効率よく活用することで維持が可能だ」と応じた。その上で、改正物流法を背景に「運送業界だけでは物流の効率化はどうにもならないという共通認識ができた。荷主側に立ってWMS(倉庫管理システム)を提供する我々自身が自分ごととして捉え、お互いに歩み寄らなければ物流はサステナブルにならない」と語り、積載効率の向上や荷待ち・荷役時間の削減に向け、荷主と運送事業者の協調が不可欠であると強調した。
続いて議論は、輸送力シェアの基盤となる「フィジカルインターネット」へと進んだ。赤澤が「パレット輸送による標準化(ユニットロード)は60年かかっても一社の枠組みでは実現できなかった。このユニットロードシステムこそがフィジカルインターネットの鍵になる」と投げかけると、金澤氏も「その仕組みが整っていなければフィジカルインターネットは成立しない」と同調した。
ロジザードが今週中にサービスを開始する「Bit Waybill」(ビットウェイビル)は、その実現を支える共通デジタル荷札のデータ基盤だ。貨物に共通管理番号を付与し、インターネット上で荷札台帳を共有することで、複数企業を経由するリレー輸送でも現在地や運送主体を追跡・証明できる。

▲LOGISTICS TODAYの赤澤裕介編集長
データの信頼性を担保するためブロックチェーン技術を採用した点について、金澤氏は「情報の独占をしてしまえばGAFAのようになってしまう。我々はデータの独占ではなく技術基盤を提供し、ブロックチェーンに刻まれた情報をオープンな共有資産にしたい」と説明。また、企業連携の障壁となってきたシステム改修コストに配慮し、「自社システムに小規模な改修を加えるだけで基盤に乗れる立て付けにした」と述べた。さらに、参加企業が「DAO」(分散型自律組織)的な枠組みで意見を出し合い、機能拡張を決めていくガバナンス体制を敷く方針を明かした。
セッション後半では、Bit Waybillと連携する新たな取り組みとして「トラックマイル構想」が提示された。赤澤は、航空機のパイロットの飛行記録が個人のライセンスや誇りに直結している事例を引き合いに出し、「トラック業界でも、走行距離や時間、車種といった実績データを会社ではなくドライバー本人に帰属させ、年金手帳のように証明できる仕組みが必要だ」と提唱。客観的な運行実績が証明されることで、転職時の公正な処遇決定や技能認証、福利厚生の拡充につながると訴えた。また、「一企業が運営すべき事業ではなく、公的な取り組みにしていかなければならない」として、すでに国への相談を進めていることを明かした。
金澤氏もこの構想に強く共感を示し、「貨物の荷札データと運送者情報が結び付けば、事実上の運行記録になる。改ざんが困難なブロックチェーン基盤を提供する裏方として、強固な協力関係を築いていきたい」と応じた。さらに「自動運転の時代が来ると言われても、当面は人が運ぶ時代が続く。ベテランの積載技術など、現場で可視化・明文化されていない技能を正当に評価し、ドライバーを支えるためのDXを進めていきたい」と力を込めた。
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