ピックアップテーマ
 
テーマ一覧
 
スペシャルコンテンツ一覧

「顧客が"容疑者"になるリスク放置できない」と判断

ヤマト運輸、3月末でメール便廃止を発表、「非信書」限定で代替サービス

2015年1月22日 (木)

ロジスティクスヤマト運輸、3月末でメール便廃止を発表、「非信書」限定で代替サービスヤマト運輸は22日、3月31日の受付分を最後にクロネコメール便のサービスを廃止すると発表した。国に「信書」の定義の分かりにくさや「外形基準」の導入を訴えてきたが、2009年以降、メール便利用者が郵便法違反で書類送検されたり、警察から事情聴取を受けた事例が8件発生していることを受け、「これ以上の放置は社会的責任に反する」と判断した。メール便の廃止を受け、同社は4月1日から「非信書」に限定した代替サービスとして「クロネコDM便」に改称してサービスを継続する。

同社のメール便は97年度の発売以来、10年度には年間取扱量が23億938万冊まで成長したが、11年9月以降は荷受けを厳格化し、プロモーションも休止した影響で減少傾向をたどった。それでも13年度は20億8220万冊と国内メール便サービスの4割を占め、売上も1200億円となっている。

同社はこれまで、「信書の定義がわかりにくい」として、郵便法違反の意識のないまま顧客がメール便で親書を送ってしまう事態を防止するため、利用者への注意喚起と並行して総務省情報通信審議会郵政政策部会で「誰もが見た目で『信書かどうかを』判断できる外形基準による信書規制の改革」を提案し、信書を送った顧客ではなく、受け付けた運送事業者のみが罰せられる基準への変更を主張してきた。

しかし昨年3月の郵政政策部会による中間答申で「結局、受入れられなかった」と国の対応を結論付けた上で、「法違反の認識がない顧客が容疑者になるリスクをこれ以上放置することは、企業姿勢と社会的責任に反する」として、メール便の廃止について具体的な検討を始め、22日の決断に至った。

同社では、2003年に総務省が告示した「信書に該当する文書に関する指針」について昨年3月にアンケートを実施したが、この時点で指針を認知しているとの回答は全体の23%にとどまっていた。こうした結果を踏まえ、「同一文書でありながら輸送の段階で信書の場合と非信書の場合があるなど、定義が極めて曖昧で、特に個人向けの書類は総務省の窓口に問い合わせても『信書か否か』を即答してもらえないケースが多発している」と指摘。

「信書の定義が顧客に分かりにくいにもかかわらず、信書をメール便で送ると荷物を預かった運送事業者だけでなく、送った顧客までもが罰せられることが法律に定められている」と規制への疑問を示すとともに、顧客がクロネコメール便で信書に該当する文書を送り、罰せられてしまうことがないよう、荷受けを厳格化して注意喚起を図っていた。

また、13年12月に外形基準の導入による信書規制の改革を提案してきたが、「当社の主張は受け入れられず、依然顧客のリスクをふせぐことができない状態になっている」として「顧客にとっての安全で安心なサービスの利用環境と利便性を当社の努力だけで持続的に両立することは困難」と判断した。

メール便の廃止に伴い、同社は法人顧客に対して事前に内容物の種類を確認できるカタログ、パンフレットなどの「非信書」に限定し、運賃体系も見直した上で、4月1日から「クロネコDM便」と名称を変更し、サービスを継続する。

また「小さな荷物」のやりとりにクロネコメール便を利用している個人、法人顧客向けには、4月1日から小さな荷物を手軽に利用できる宅急便のサービスを拡充する。