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近鉄エクス社長・APLロジ買収会見、「高すぎる額ではない」

2015年2月18日 (水)
▲記者会見する石崎社長

▲記者会見する石崎社長

ロジスティクス近鉄エクスプレスの石崎哲社長ら経営陣は18日記者会見し、APLロジスティクスの買収を決めた経緯、補完関係、期待される相乗効果などを説明した。

買収の決断に至った経緯について、当初は株式100%の取得を目指していなかったが、入札結果によってAPLロジスティクスの親会社、NOLから全株式を売却したいとの意向が伝えられた、と説明した。

買収目的について、石崎社長は「近鉄エクスプレスの航空・海上フォワーディング力とAPLロジスティクスが持つバイヤーズコンソリデーションなどのコントラクトロジスティクス機能を組み合わせることで、顧客に新たな価値を提供できると考えた」と説明した。

近鉄エクスプレスの事業構成(2013年度)は、航空輸送が53.8%、海上輸送24.2%、ロジスティクスが11.5%――となっており、航空輸送の比率が高い。対するAPLロジスティクスはロジスティクスが80%を占め、フォワーディングは海上が15.3%、航空が4.6%と低いが、買収によって両社を合わせた事業構成は、航空フォワーディング35.8%、ロジスティクス36.5%、海上フォワーディングが20.6%とバランスの取れた収入構成になる。

■石崎哲社長の会見要旨
現在、当社の事業規模は売上高3000億円強、営業利益150-160億円、最終利益100億円となっており、自力で欧米の主要物流企業と対等に渡り合うには、中途半端な規模だと考え、M&Aを積極的に行う方針を掲げていた。

2013年夏にAPLロジスティクスを知るきっかけがあり、調査に着手した。顧客は自動車関連が収入の半分以上を占め、当社が中期計画の中で掲げる対象に合致する企業だということがわかった。

APLロジスティクスの経営陣などのアプローチし、株式を取得したい意向を伝えていたところ、APLロジスティクスの親会社であるNOLが入札形式でAPLロジスティクスの株式を売却するとの話が出てきて、当社としては是が非でも傘下に収めたいと考え、早速応札した。

入札でははじめの段階で7社が通過し、最終的には16日にNOLから「近鉄エクスプレスに株式を100%売却したい」と伝えられた。当初は株式100%を取得したいというレベルまで考えていなかったが、先方からの申し出に応じる形で17日に売買契約に調印し、取得を決めた。

これまでの当社にないM&A規模となるが、必ず相乗効果を生み出せると考えている。

■質疑応答の要旨
――APLロジスティクスの企業文化についてどう考えているか。

石崎氏:責任感が強く、当社と似ていると感じた。これから時間をかけていけば、さほど問題になると考えていない。当社としては現経営陣の立場を尊重していく。「上から目線」で接するつもりはない。

――買収額が巨額だが、目算はあるのか。

石崎氏:買収額は確かに私もびっくりするぐらいの金額だが、円安になる前の水準であればはるかに安い金額で済んだのかもしれない。このまま円安傾向が続けば、リターンも多くなる。APLロジスティクスの成長性を考えると、決して高過ぎる金額ではない。楽ではないが。

――しばらくはAPLロジスティクスの現経営陣がそのまま指揮をとると考えていいいのか。

石崎氏:当面、近鉄エクスプレスの出身者ががちがちに固めてしまうということはしない。社員のレベルが高く、顧客との関係もきちっとしておられるので、無理に当社が踏み込んでいくということはない。

――APLロジスティクスの姉妹会社である海運会社・APLとの関係はどうなるのか。

石崎氏:これまでも船社としてのAPLと取引関係はあった。今回の件を機に、さらに関係が強化されると思う。APLロジスティクスにとって2番目に大きなベンダーがAPLだ。

――6月に株式を取得するということだが、買収後の具体的な経営体制、拠点統廃合のスケジュールは。APLロジスティクスのブランド保持についての考え方は。

石崎氏:6月というのは、海外で独禁法関連の規制をクリアするための期間だと考えており、早く終われば前倒しで実施するかもしれない。役員の派遣人数はこれから決める。具体的な拠点統廃合は考えていないが、効率化できると判断すれば検討する。これから時間をかけて考えていく。APLブランドは引き続き使用できる契約になっている。

――欧米の競合と戦っていくというが、近鉄エクスプレスとAPLロジスティクスの合計売上規模5000億円というのは、どの程度にランキングされるのか。

石崎氏:上には上があり、5000億円、6000億円になってもフォワーディングのトップ企業との差はある。現在は売上高ベースで25位か26位だが、18位程度に浮上することになる。国際輸送に限定するともう少し上に行くと思う。日通は世界6位だが、国際物流は半分程度なので、5000億円の規模でかなり日通に迫るのではないか。

――さらなるM&Aの検討は考えているのか。欧州の比率が低いことについてはどう考えているのか。

石崎氏:今、大きな食事を食べたばかりでお腹いっぱいなのでさらに、ということは考えていない。引き続き相乗効果が見込める相手があるのなら、検討はしていくが、当面はない。

世界の物流の60%をアジアが占めている。欧州系もアジアに力を入れてきている。欧州をないがしろにするつもりはないが、中心はアジアであり、米国だと考えて事業を展開していく。特に欧州事業を補強するということは考えていない。当社のアジア発北米向けシェアは6%程度にとどまっているので、これを最重視して引き上げていきたい。

――ROE(自己資本利益率)の目標値は。

石崎氏:ROEを意識しながら努力していく。現在は7.5%程度だが、12%から15%まで持って行くことを目指す。