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【年頭所感】ライトアセット化でリスク最小に[日本郵船]

2012年1月4日 (水)

話題日本郵船は4日、東京都千代田区の本店15階ホールで商事始め式を開催した。工藤泰三社長による年頭メッセージ(要旨)は次の通り。

 

■「ライトアセット化で下振れリスク最小限に」
アジアの急成長を支えるには、自国で不足する資源・食料の確保が不可欠であり、事実、昨年もこれら貨物の海上荷動き量は着実に増加し、今後もその傾向に変化はないだろう。世界人口の大半が集中するアジアで経済成長軌道が定着した今、アジアの一員である日本にとってこれほどのビジネスチャンスはないといえる。

 

昨年発表した新中期経営計画「More Than Shipping 2013」は、まさにこのような世界情勢に対応した戦略といえる。まず一般貨物輸送だが、欧米消費の低迷と超大型コンテナ船の過剰供給が予測される中、コンテナ船の自社建造は当分控え、船・スペースは不足すれば借りてくるというライトアセット化を推進し、下振れリスクを最小限にしながら事業存続を図るべきだ。

 

同時に、ライトアセットビジネスの典型であるフォワーダー事業を通じ、アジアを中心に急拡大する一般貨物物流の取り込みを急ぐべきであり、そのための旧郵船航空サービスと旧NYKロジスティックスの統合は、今年中国、インドネシアでの事業統合でほぼ完了する。いよいよその統合メリットである「顧客への+(プラス)α(アルファ)サービスの提供」を通じた事業拡大戦略の真価が問われる。

 

先進国需要の低迷で、原油タンカー事業も供給過剰となり苦戦中だが、石油需要自体はアジア諸国のおかげで確実に増加中だ。当面、競争の激しいVLCCなどの下流部門では余剰船をフル活用し、将来性のあるアジアの顧客開拓を進める一方で、今後新規開発の中心となる海底油田に着目し、安全面・操船面で参入障壁の高い、上流部門であるシャトルタンカー、ドリルシップ、FPSO(浮体式海洋石油・ガス生産貯蔵積出設備)などのオフショア事業拡大へと既に大きく舵(かじ)を切った。

 

また今回の原発政策の見直しで脚光を浴びているLNG、鉄鉱石、石炭、ニッケル、木材などの資源、食料関連需要も引き続きアジアで増加中だが、当社の中国、インドの顧客などとの長期契約拡大戦略は、着実にその成果を上げている。現状ケープサイズ・バルカーを中心に若干船腹過剰で、長期契約船以外のマーケットは不安定な状況にあるが、新規発注は抑制されており、数年後には安定した事業環境に復帰するはずだ。

 

ただし当面は船腹の需給ギャップが解消されないため、10年度のような急回復を想定すべきではない。このことは、当然当社グループの財務基盤にも大きく影響していく。コーポレート部門は、この難局を乗り越えるための短期的対策と、当社グループが持続的に成長していくための投資などの中長期対策とを、今まで以上にバランス良く柔軟に進めていかねばならない。

 

昨年は企業のガバナンスやコンプライアンスがあらためて問われた年だった。当社グループでも、遺憾ながら、グループ会社が下請法の是正勧告を受ける事例があった。独禁法は、国内外で年々厳格な適用と厳罰化が進んでおり、決して人ごとではない。企業の持続的発展・存続は社会との共生があって初めて可能だということをしっかりと再認識する必要がある。CSR活動の一環として、昨年は震災後に本業を生かした輸送支援や、当社グループ社員を岩手県陸前高田市にボランティアとして派遣した。被災地の復興はまだまだであり、今年も支援活動を継続していきたいと考えている。