ピックアップテーマ
 
テーマ一覧
 
スペシャルコンテンツ一覧

オープンロジが7.3億円調達、事業加速で存在感増す

2017年7月25日 (火)

▲ 新オフィスに立つオープンロジの伊藤秀嗣社長

ロジスティクス空白EC事業者などが物流業務を外注する際のハードルを下げる仕組みに強みを持つベンチャー「オープンロジ」(東京都豊島区)が、ベンチャーキャピタルなどから総額7.3億円の資金を調達し、株式上場を視野に入れてビジネスを加速する段階に入った。

報道陣向けの説明会で同社の伊藤秀嗣社長は、(1)調達した資金は、委託先の倉庫を海外でも増やすなど、事業の拡大に充てること(2)事業拡大はレジアプリなどとのAPI連携を積極化することによって進めていくこと(3)手続きをよりシンプルな手順に置き換える自社の強みを生かし、新規事業としてオムニチャネル領域に進出すること――の主に3点を強調した。

同社が提供するサービス「オープンロジ」は、「面倒な物流業務を外注したい事業者とそれを請け負う倉庫会社を結ぶ倉庫のシェアリングサービス」で、伊藤氏が前職の富士山マガジンサービスに在籍していた際、商品を出荷する出版会社の多くが物流に課題を抱えていたことに着目し、2014年10月に立ち上げた。

事業開始から間もなく3年を迎える同社のビジネスは順調に拡大し、従業員は40人に増加。黒字化への手応えを感じつつ、事業の拡大を加速させるために必要な資金を調達し、池袋エリアでより広いオフィスへの移転も果たした。日本における物流スタートアップの旗手として存在感を増し、次なる展開に多くのメディアが注目する。

CONTENTS

■ 3年弱で利用者2500社超、売上は1年前の7.3倍に――現在の事業

■ 利用者6500社、連携倉庫60拠点へ拡大目指す――既存事業の拡大

■ 店舗システムと連携進めオムニチャネル物流参入――新規事業

空白

■3年弱で利用者2500社超、売上は1年前の7.3倍に―現在の事業状況

空白

まず、足下の事業状況は利用者数が6月に2500社を突破し、売り上げも16年6月時点と比べて7.3倍に急増した。この間、連携先の倉庫も10拠点を超えている。

利用する荷主企業の内訳は、新規EC事業者が22%、自前発送からの乗り換えが63%、利用している倉庫の切り替えが15%と、事業の拡大などを理由に自前の発送から物流の外注化に転換する需要が最も多く、新規ECの立ち上げと合わせると85%が「新たに物流のアウトソーシングを利用する事業者」ということになる。

これが既存の物流企業との最も大きな相違点で、同社のサービスが「物流初心者」の受け皿になり得ることをうかがわせる。この利用者属性を反映してか、利用者の月間出荷件数も200件未満が49%と半数近くを占める。500件未満、新規立ち上げを合わせると、やはり85%が500件未満である。1000件以上はわずか3%だが、「中には月間1万件以上を出荷するところも含まれている」(伊藤社長)という。

利用事業者の継続率は96%と高く、利用事業者の所在地は全国47都道府県に拡大したが、中には海外からの利用もみられるようになったという。入庫数は前年6月比で4.3倍、出荷件数3.5倍、保管面積は7.7倍と飛躍的に伸びており、継続率の高さと併せて同社のサービスへの満足度が高いことを示しているといえよう。

空白

■利用者6500社、連携倉庫60拠点へ拡大目指す―既存事業の拡大策

空白
空白

急速に事業を拡大するオープンロジだが、今後は従来のECを中心とした物流受託ビジネスを広げることに加え、新規事業領域としてオムニチャネルへの進出も検討している。

既存事業では、ECの売上上位10社の大半がAPI連携によって運用省力化している点に着目し、API連携に注力していくことで新規荷主を増やしていく考えだ。ターゲットはEC構築サービス、モール運営、受注一元化サービスの提供会社などで、18年6月までに現在の2500社超から6500社へと2.6倍に伸ばす。

わずか1年の目標としては意欲的すぎるようにも見えるが、伊藤氏は「すでに何社かと連携の話を進めており、順次、発表していきたい。1年で20のECプラットフォームとの連携を目指す」と、具体的な達成イメージができていることを強調する。

利用者が増えれば、その受け皿となる倉庫も必要になるが、この点については「2019年度中に事業者側の提携先を20に増やし、連携する倉庫の数を常温50拠点、冷蔵4拠点、海外6拠点へと広げていく」(伊藤氏)と説明し、2年後までに現在の10拠点から60拠点へと6倍に連携拠点を拡大する考えを示した。

空白

■店舗システムと連携進めオムニチャネル物流参入―新規事業への進出空白

空白

繰り返しになるが、同社の強みは物流作業を委託する上で必要なステップを簡略化し、そのハードルを大幅に引き下げることと、APIによって受注システムなど関連するITシステムとの連携を容易にすることの2点にある。

今後は既存事業の拡大に加え、自社の強みを生かして「店舗で実物を見てネットで注文する」「ネットで購入して店舗で受け取る」というフローを複数の店舗で行うオムニチャネル向け物流への参入を目指す。

オムニチャネルを実現する上では、店舗でリアルタイムに在庫を引き当てるなどの商品在庫の一元化が欠かせず、店舗から消費者に商品を届ける「店舗の配送拠点化」といったニーズも顕在化してくるが、これらの仕組みと既存の店舗やECシステムが、オムニチャネルの目的に沿った物流システムとつながらなければうまく機能しない。

同社はこの点に着目し、EC、倉庫、店舗がそれぞれオープンロジで連携することにより、発送依頼、取置依頼、在庫引き当て、出荷作業――といったオムニチャネル向け物流を構築できるとみている。年内にもこうしたモノの流れに対応するオムニチャネルプラットフォームを構築する考えで、「一つの店舗で異なるブランドの商品を受け取るといったことが、容易に実現できるようになる」(伊藤氏)という。

矢継ぎ早に事業拡大の手を打つ伊藤氏の目には、3年後の株式上場が具体的なイメージとして見えているようだ。しばらくは着々と必要なステップを上がる同社の動向から目を離せそうにない。