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生鮮品の船便輸出や「冷蔵」車による通常輸送が可能に

革新的な鮮度維持輸送、産学8者が実証開始

2018年11月2日 (金)

話題冷凍することなく鮮度を維持したまま「船舶」で生鮮食品を輸出したり、「冷蔵車」で輸送して鮮度を1か月間もの期間維持したりという、従来のコールドチェーン技術から大きく進化した日本の鮮度維持技術の実用化が見えてきた。

エバートロン(東京都港区)、パナソニックアプライアンス社、オークラニッコーホテルマネジメント、大阪大学産業科学研究所、三重大学、全国農業協同組合連合会(JA全農)、凸版印刷、豊田通商の8者は2日、共同で日本産生鮮品の輸出拡大に向け、革新的な鮮度維持技術を持つ装置「フレッシュトロン」を中核とした実証プロジェクトを開始した。プロジェクトは11月2日から2019年3月まで行われる。

フレッシュトロンは、水分の分子構造を変化させることで、食材などの鮮度を1か月程度維持することができる装置で、鮮度維持の効果を食材内部にまで発揮することができる。装置内に食材を数十分入れておくことで、食材自体が鮮度を維持する”体質”に変化するという。この装置を用いて生産地で食材を処理することにより、通常の冷蔵車による輸送でも1か月程度維持できる効果がある。この特性を活用することで鮮度を維持した状態で船便による輸送が可能になる。

実証プロジェクトではフレッシュトロンのほか、空気中に噴霧することで超微小なナノミストが食材すべての表面をカバーする高酸素濃度の純水「超酸素水」と、食材から排出されるエチレンガスを二酸化炭素と水に分解して食材の呼吸量を減らし、鮮度維持に必要な空中湿度を保持して水分の蒸散を防ぐ「鮮度維持袋」を併せて用いる。超酸素水と鮮度維持袋は、大阪大学産業科学研究所の川上茂樹特任准教授らが開発した。

エバートロンが鮮度維持装置を、阪大産業科学研究所が超酸素水と鮮度維持袋の技術を提供し、凸版印刷が輸送用梱包資材と冷却材、豊田通商が物流子会社の豊通物流とともに国内外の生鮮品物流を担う。パナソニックアプライアンス社が温度、湿度、振動などの輸送環境に関するトレーサビリティ情報を取得する役割を果たし、JA全農が青果物の提供と鮮度維持効果の評価、三重大学が生鮮品の分析と評価、オランダなど海外のホテルオークラの日本料理レストラン「山里」料理長が鮮度の官能評価をそれぞれ行う。