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「2019年度中の早い時期」に自社船200隻へ展開

日本郵船、船上キャッシュレス決済の実現にメド

2018年11月21日 (水)

▲記者会見で取組内容を説明する日本郵船の藤岡敏晃氏(左)と丸山英聡専務経営委員(右)

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話題日本郵船は21日、独自の電子マネーを用いて通信回線の脆弱な船上でも決済・送金できる仕組みを構築する、と発表した。同社の運航船に乗り組む船員の99%は外国籍で、ひと度航海に出れば乗船勤務が6-8か月程度続くため、船上での現金管理や給与支給、送金の利便性向上が課題となっていた。

「2019年度中のできるだけ早い時期」に200隻の自社船への導入を開始し、将来的には他社船や船員の家族が居住する地域でも使用できるようにするなど、「域内経済圏プラットフォーム」として利用されることも視野に入れる。

船上では船員給与の一部の支払いや日用品の購買などに現金が使用され、船長は出納業務や商品の在庫管理、注文手配などの業務に一定程度の時間を費やしている。一方で船員は乗船期間中に現金をそれぞれが保管し、本国への送金時には海外送金手数料を負担する必要がある。

そこで同社は「世界の船上にある現金は800億円にものぼると推定しており、それに伴う間接コストや紛失リスクは非常に大きい」ことに着目。若手社員による新しい発想、アイデアなどの種を発掘し、具現化・事業化することを支援する社内制度を活用する取り組みの一つとして、「フィンテックを活用した船上キャッシュレス化の検討を開始したという。

▲船上キャッシュレス化のイメージ

キャッシュレス化することで船上の事務作業や紛失リスクを削減し、船員が運航業務に集中できる働きやすい環境の整備を目指す考えで、8月から9月末にかけて、日本カードネットワーク(JCN)と共同で複数回の実証実験を実施。現金に交換可能な独自の電子通貨を整備・導入し、この電子通貨を船上で利用できる環境の構築と、電子通貨を簡易に管理できるアプリケーションの提供、実現可能性や有効性――を検証した。

▲船上で専用アプリケーションを利用した送金テストを実施する様子

実用化に向けては「気象条件などによって数kbps程度まで通信速度が低下したり、頻繁に切断されたりする」という船上の脆弱な通信環境がネックとなっていたが、プロジェクトマネージャーを務める藤岡敏晃氏(日本郵船秘書グループ調査役兼イノベーション推進グループ)は「脆弱な通信環境をクリアすることにメドがたった」と強調。

今後、電子マネーを最現金化する環境の整備や本格的なアプリケーション開発に取り組み、さまざまな企業との連携による船上キャッシュレスの事業化を進めていくとしている。