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AIで宅配不在率2%の成果、東大が22年度実用化目指す

2018年12月25日 (火)

話題AIを用いて宅配の不在配達ゼロを目指す東京大学などの取り組みで、9月から10月にかけて行われた配送試験の結果、「AIが不在先を回避するルートを配送者に示して配送の成功に導いた」割合が98%に達した。配達業務の2割にのぼるといわれる不在配達が、わずか2%に抑えられることを示す成果で、今後は東大発ベンチャーの日本データサイエンス研究所(東京都文京区)、NextDrive(港区)と共同で自治体との実証実験を進め、プロジェクトに賛同する物流企業と連携して2022年度中の実用化を目指すという。

配達成功率が98%という高い割合でAIの有効性を示したこの取り組みは、東大大学院情報学環の越塚登研究室、工学系研究科田中謙司研究室の「不在配送ゼロ化AIプロジェクト」によるもので、東大の研究室が東大発ベンチャーなどの協力を得て「実用化を前提」に実施した。

プロジェクトで開発された新たな「配送ルーティングエンジン」は、住宅ごとに設置されたスマートメーターから取得される電力データをAIが学習し、配送時刻の在宅予測に基づいて在宅戸から優先的に配送するルートを自動生成する。実験の成果は国際学会の学術論文として「IEEE COMPSAC2018」と「ICSCA2019」で採択されている。

配送試験は9月6日から10月27日まで東大構内で行われ、配送成功率が98%に達したほか、不在配送に伴う再配送が削減することで移動距離も5%短縮できることがわかった。また、これまで特定されていた「不在」というプライバシー情報が配送者に伝わることがなくなり、個人情報保護の強化につながる結果も得られた。

■東京大学越塚登教授のコメント
「不在配送は、現在の日本の個配物流での最重要問題の一つと考えている。AIとIoTの技術を適用することで、これを効果的に解決できるとわかったことは、大きな一歩だと思う。一方、各戸のスマートメーターの情報を外部に出すことは、プライバシー上の懸念があるかと思う。ところが我々の手法の特徴は、むしろパーソナルデータを利用して、プライバシーを守る点にある。今回我々が開発した新手法のルート指示では、各戸の在不在を隠すことができる々な工夫がなされているのだ。配達の順番を決めるというプライバシーに関わる処理は、人ではなくAIが行うので、プライバシーはほかの人から守られる。これを発展させて考えると、人に知られたくないこと、プライバシーに関わることは、むしろ積極的にAIやロボット、機械に担ってもらうという新しいサービスコンセプトが、今後はあらゆる局面で重要だと考えている」