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正社員不足、求人企業は偏見改めよ

“腕におぼえあり”ならば物流業界へ

2019年11月7日 (木)

話題2019年7-9月期の労働経済動向調査によると、運輸・郵便(≒物流)業の正社員が全業種で最も不足度合いが大きくなったという。この結果に驚きはあるだろうか。ひっ迫・困窮の度合いが深刻化しているというわけでなく、業界内ではむしろ「織り込み済み」といった反応がほとんどではないのか。(書き手=永田利紀)

■運輸・郵便、正社員不足最下位も新卒採用より在職者
https://www.logi-today.com/353518 – LogisticsToday 2019年10月4日掲載)

厚生労働省がこのほど発表した8月の労働経済動向調査(四半期ごと実施)によると、運輸・郵便業の「正社員等」過不足判断(DI、8月1日現在)は、「不足」が「過剰」を大きく上回り、不足超過のポイント数が全産業でもっとも高くなったことが分かった。(中略)全産業平均が不足超過40ポイントであったのに対し、運輸・郵便業は同55ポイントで、5月調査から2回連続でワーストを記録。(中略)他業種に比べて「正社員等」労働者が不足している現状が浮き彫りになった。(以下略)

■物流への偏見、強いのは求人企業側

記事には「こんなもの」なのだということも付け加えるべきだ。物流業界にも「より優秀な正社員を増やしたい」というニーズは他業界と同様に常に存在していたが、火急な事態でも出来(しゅったい)しない限り、具体的な行動は少なかったといえる。

調査結果を見て「若年層に人気がないから採用が困難だ」などという思い込みの産物があるとすれば、それは捨て去るべきだし、業務内容の魅力や必要性を訴求できない募集広告は「コスト浪費」と評されても致し方ない。偏見が強いのは中途や新卒の求職者ではなく、求人募集側ではないのか。

私は「先は明るい」という見方すら可能だと思っている。求職者に対する「業務の重要性」の丁寧な説明と、そのプロモーションを手つかずに近いまま放置してきたのであれば、本腰を入れて採用に取り組んだ結果には期待ができると思うからだ。求人元である物流企業は、練りに練って人材募集に注力する価値がある。

■物流求人市場は残り少ない「ブルーオーシャン」

しかしながら、今後は変わる可能性が高い。

物流のような業態は製造業のように安いコストを求めて国外で代替機能を手当てできないため、システム導入による機械化や自動化ができない「現場」では、依然として多数の労働力を管理する人材が不可欠であり、その能力次第でコストパフォーマンスが大きく変わる。従って、各企業は優秀な管理者を求めてやまない。「それは昔から今に至るまで同じでは」という疑問を抱くが、その答えは簡単である。

「今まではコストの精査や管理者の能力を問うまでの利益捻出努力が必要なかった」が概ねを占める。それゆえ長年にわたり、人員は内部の昇進や異動で用が足りてきた。

しかし気が付けば、従来型の方法論では競合他社に対抗するに心もとない。経営の要求は現状維持ではなく、より高品質で低コストの現場運営。それに応えたいのはやまやまだが、丸腰に近いまま戦場に赴いても戦果は望めない。

で、慌てて採用に走る。

しかし「今までとは違う人材が必要」と認識して、求人要件を書き出してみたはいいが、そんな人材にアプローチする文言の表現方法がわからない。こんな中途採用の苦境下では、新卒採用によって総合職・専門職をじっくり育成するという理想を謳うに至らないのも当然だと察する――というのが統計を読んで感じたことだった。

「物流業界は能力ある人材にとって、残り少ないブルーオーシャンのひとつ。”腕におぼえあり”というあなたこそ物流業界へ」

そんな訴求をする事業者が増えることを期待している。

永田利紀(ながたとしき)
LOGI Terminal代表
企業の物流業務改善と強化に実績多数