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2020年 年頭所感

川崎汽船・明珍社長「安全・環境・品質を一層強化」

2020年1月8日 (水)

ロジスティクス川崎汽船の明珍幸一社長は6日に行われた年賀式で、昨年創立100周年を迎え、ことしは新中期経営計画の始動年であることを踏まえて、年頭所感を述べた。

(以下、要旨)

▲明珍幸一社長

ことし4月、当社は新たな中期経営計画を始動する。具体的な内容については議論を重ねているところだが、顧客と向き合い、その要望に応えた高い品質のサービスを提供するという基本に何ら変わりはない。当社グループが運営するドライバルク、エネルギー資源輸送、自動車船、物流・内航/近海の中核4事業においては、当社の強みをさらに磨き、競争力を強化していく。初期の混乱を乗り越えたONE(オーシャンネットワークエクスプレス)は、力を合わせてベストプラクティスによるシナジー効果を高めていく段階にあり、一層の収支改善を期待している。

新しいスタートラインに立つにあたって、高いアンテナを張り、変化への備えと柔軟性を持った対応が重要になってくる。市況に変動はつきもので、中長期の視点では、自動車産業では100年に1度と言われる変革期を迎えており、エネルギー産業においても低炭素化・脱炭素化の流れが進みつつある。従来からのやり方を絶えず見直し、本質を見極め、個人の力を磨き行動することで、確実な前進に繋がると信じている。

当社グループがさらに取り組みを強化するドライバルク、エネルギー資源輸送、自動車船、物流・内航/近海の中核4事業では、ひとりひとりの顧客の顔がしっかりと見えるビジネスが中心となる。いずれも内外のインフラをけん引し、各業界を支える顧客ばかりで、その顧客と向き合ってニーズをくみ取り、それに応え、われわれならではの価値とサービスを提供することは、当社が選ばれ続ける企業となるための重要なテーマである。

その中核となるのは、安全、環境、品質にほかならない。これらは当社が100年の歴史のなかで培ってきた強みであるとともに、サステナビリティ(持続可能性)が重視されるこれからの社会において、その重要性はより増すものと考えている。さまざまな先進技術の研究と開発を進め、またAIやIoTなども導入、活用し、顧客の要望に応えることで、当社の強みである安全、環境、品質をハード・ソフトの両面で一層強化していきたい。

安全は、海運を中心とした総合物流企業である当社グループにとって事業の根幹をなすもので、顧客、また社会からの信頼の基盤となる「安全」への地道な取り組みを重ねるとともに、最新技術も活用して世界トップクラスの安全運航を維持することが、「安全で最適なサービス」をビジョンに掲げるわれわれの使命だと考えている。当社が川崎重工業と共同で開発した「K-IMS」は、30分おきに最大2000項目の運航データの収集、監視、分析を行える統合船舶運航・性能管理システムだが、すでに当社船約170隻に搭載しており、今後は最適航路の選択、重大事故の発生防止や故障予知に役立てていく。

そして環境の保全は、自然を利用して事業を営むわれわれにとって正面から取り組まなければならないテーマである。いよいよことしから始まったSOx(硫黄酸化物)規制強化への対応は、貨物を預かる船社として、「船を絶対に止めない」という大方針のもと1隻1隻の乗組員と陸上関係者が綿密な準備を進めてきたものだ。この先にはGHG(温室効果ガス)の削減というさらに大きな課題がある。当社は「環境ビジョン 2050」に掲げている通り、昨年末にはLNG焚き自動車船の建造を発表、また中部地区での合弁事業の立ち上げに加えて、新たにシェルと組み、シンガポールでのLNG燃料供給事業への参画を発表した。ただLNG燃料への転換だけでは30年の目標は達成できないため、昨年発表した風力を利用する自動カイトなど「LNG+(プラス)」の新技術導入を進める。さらに50年目標の達成に向け、先に発表した「HySTRA」(技術研究組合CO2フリー水素サプライチェーン推進機構)への参画による液化水素輸送事業への取り組みに加えて、アンモニア、メタネーションといった代替燃料の研究など、環境負荷低減に向けた取り組みも加速させる。

これまで取り組んできた経営管理高度化については、過去10数年にわたる海運市況や造船価格の実績データに基づき、事業部門ごとのリスク量の計測や投資ガイドラインを設定している。リスク量やリスクに見合ったリターンを定量的に把握のうえ、今後は当社の顧客戦略に合致した投資を行っていきたい。

ことしの干支は「庚子(かのえ・ね)」で、これまでのやり方を継承しつつ、新たな形に変化する状態を表すそうで、黒字化への一歩を踏み出したいま、安全、環境、品質の3点にさらに磨きをかけ、顧客からサポートをいただくことで、安定的な利益を積み上げ、次の100年に向けて新たなスタートを切るべく、グループ役職員一同、一丸となって着実に歩みを進めよう。