調査・データ財務省は9日、全国の税関が空港や港湾で摘発した不正薬物の関税法違反事件について、2020年上半期の摘発件数と押収量をまとめて発表。同省は取材に対し、「ことしは、新型コロナウイルスが不正薬物の密輸形態に変化を生じさせている可能性がある」と指摘した。
発表によると、覚醒剤や大麻、あへん、麻薬、向精神薬、指定薬物などを指す「不正薬物」全体の摘発件数は、前年同期と比べて41%減の339件、押収量は63%減の585キロだった。
種類別の押収量をみると、覚醒剤が79%減の309キロ、大麻草が82%減の7キロと大きく減少したものの、麻薬に分類されるコカインは2.2倍増の87キロ、MDMAは2.3倍増の6万4000錠が押収されている。
不正薬物全体の押収量が減少した理由について、財務省は「新型コロナウイルスによる航空便の減少が影響したと考えている」と回答。密輸形態別の摘発件数をみると、前年同期に2番目に多かった航空旅客による密輸は74%(140件)減少し、航空貨物を利用した密輸は44%(27件)減少している。また、摘発件数が最も多い国際郵便物を利用した密輸件数は、航空輸送と海上輸送が含まれており、20%(62件)減の247件だった。
財務省によると、航空旅客による密輸件数の減少幅と、入国者数の減少幅がほぼ一致しており、航空便の減便・運休が影響していることは間違いないという。
一方で、海上貨物を利用した密輸件数は、件数が少ないものの、5件から9件(1.8倍)に増加。航空便が大幅に減少する前であるものの、1月には、カナダから到着し「ぼたん海老等」と記載された海上貨物から239キロの覚醒剤が見つかり、2月には、マレーシアから到着した海上貨物に積まれていた自動車用ギアボックスから9キロの覚醒剤が見つかった。
財務省は、「旅客便が減少したことで、密輸形態が変化し、貨物や郵便にシフトする可能性がある」と指摘しており、今後も動向を注視していくという。