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運輸・郵便、3・4月に週80時間労働が増加

2020年10月30日 (金)

調査・データ厚生労働省が10月30日に公表した2021年度版の「過労死等防止白書」によると、人手不足と新型コロナウイルス感染拡大の影響で、ことし3月・4月に週80時間以上労働した運輸・郵便業の就業者の割合が増加していたことが分かった。

(出所:厚労省)

新型コロナウイルスの影響下において、「エッセンシャルワーカー」とされている「運輸・郵便業」「卸売・小売業」「医療・福祉」の長時間労働者(8週80時間以上)の割合を全業種平均と比較すると、全業種平均が前年実績より減少しているのに対し、3月・4月の「運輸・郵便業」「医療・福祉」はともに増加し、当該期間に大きな負担がかかっていたことが分かる。

運輸・郵便業は、2019年3月の割合が1.78%だったのに対し、20年3月は2.01%に増加、4月も1.49%から1.71%に増加している。厚労省では、職場が人手不足になり、長時間労働となった人からの相談や、感染の不安を抱えながら働いている人からの相談が多数寄せられたという。

2019年度の労災請求件数を見ると、運輸・郵便業は精神障害(181件)よりも脳・心臓疾患の労災請求件数(197件)の方が多いのが特徴で、脳・心臓疾患の件数は全業種で最も多い。このうち、道路貨物運送業の請求件数は144件で、2番目に多いサービス業(75件)と比べても大きな開きがある。

一方で、労働者の適切な休息を確保するための「勤務間インターバル制度」を導入している企業の割合は、全業種平均が3.7%だったのに対し、運輸・郵便業は14.9%とダントツで多い。導入を予定または検討している割合を加えると、29.1%にのぼる。

もともと長時間労働が多く発生している運輸・郵便業だが、有給休暇の取得率や所定労働時間の正確性などは全業種平均と同じかそれより高く、企業側の努力も見られる。しかし、月末1週間に週60時間以上の労働となる割合が依然として高く、ことし3・4月の状況と合わせて考えると、外部環境によるしわ寄せが集まりやすい業種だといえる。今後は他業種と協力して、いかに平準化するかが1つの課題となる。