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豪トール取締役会、赤字エクスプレス部門の売却検討

2020年11月5日 (木)

ロジスティクス日本郵政は5日、日本郵便傘下の豪州トール・ホールディングスの取締役会が、赤字が続いているエクスプレス事業の売却を検討することを決めた、と発表した。売却プロセス管理するファイナンシャルアドバイザーとしてJPモルガン証券と野村証券を選定したが、「最終的に売却が実施される確証はない」(日本郵政)としている。

また、売却の対象となるのは赤字が継続しているエクスプレス事業のみとし、同社が運営するフォワーディング事業、ロジスティクス事業は売却検討の対象としない。トール側は「取締役会がグローバル・エクスプレス事業の売却の可能性を探る意向」であることを発表した。

トール社は豪州を中心に50か国以上に1200拠点を展開し、大規模な国際物流ネットワークを運営。2015年に日本郵政グループが買収したが、前3月期決算では新型コロナウイルスの感染拡大や標的型サイバー攻撃を受けたのが響き、1億1700万豪ドル(3月末時点のレート換算で77.2億円)の営業損失(EBIT)を出すなどし、日本郵便は362億円の特別損失を計上している。

再び流転の身となるかつての名門企業

豪トール社によるエクスプレス事業の売却検討がオフィシャルな発表となった。トールのエクスプレス事業といえば、国内ではトールに買収されたトールエクスプレスジャパン(旧フットワークエクスプレス)が担っている。グローバルな物流再編の視点が重要なのは承知の上で、ここではかつての名門企業の来し方と行く末を考えてみた。

「またか」という声が業界内では上がりそうなニュースだが、その半面「やはり」というつぶやきも同様にありそうだ。古くは「日本運送」として業界での確固たる地位を築いたのち、「フットワークエクスプレス」へと社名変更したのは1990年。積極的な事業多角化をはかり、宅配から路線便、さらにはファンダースの屋号でオフィス向けの宅配弁当サービスなども手がけた。

しかしながら、運送事業は競合他社の後手に回り、新規事業は目論見違いの連続で、累積赤字の解消ができぬまま2001年に倒産。その後はオリックスと豪トールに事業が引き継がれ、現在に至るのだが、国内においては旧フットワーク社のペイントのまま運行するトール車両が一向になくならなかった。

そんなブランディングのブレは事業の迷走を象徴していたが、転機を得られないまま今回の結果となった。(企画編集委員・永田利紀)

日本郵政、豪トール売却報道へのコメント回避