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大阪府・市、府下9港一元運用で60万TEU上積み目指す

2020年11月26日 (木)

(出所:大阪港湾局)

ロジスティクス大阪府と大阪市は25日、大阪港や堺泉北港など府下の港湾9港を一元的に運用し、向こう10年以内をメドに府港湾全体の外貿コンテナ取り扱い量として277万TEU(4050万トン)を目指す「大阪”みなと”ビジョン」を策定した。集貨機能だけでなく、一大生産・消費エリアとなる大阪都市圏の「創貨」機能を港湾でつなぐ。

ビジョンは10月1日に府・市の港湾局を合併して発足した「大阪港湾局」を主体として、国内第2の都市圏である大阪という背後圏を共有する港湾に位置づけることで縦割りを排除し、国際コンテナ戦略港湾政策の下で神戸港とともに構成する「阪神港」の発展につなげる狙い。

▲組織統合の概要図(出所:大阪港湾局)

「大阪港と府営港湾8港の強みを生かしながら弱みを補完しあう形で機能の分担・最適配置を図る」ことをコンセプトに、物流面では、阪神港としての取り組みと物流拠点として「オール大阪港湾」の機能強化を図る2本柱で具体的な施策を展開していく。国際コンテナ戦略港湾として2020年代後半に277万TEUの目標を掲げ、直近の数値(19年)から10年以内に60万TEUの上積みを図る。

▲大阪港のコンテナ物流強化に向けた施策(出所:大阪港湾局)※クリックで拡大

大阪府下の港湾機能を強化する取り組みはハード面とソフト面の両輪で進める。大阪港では主要航路の増深・拡幅を進めるとともに、夢洲コンテナターミナルの高規格化、道路や橋梁の拡幅、鉄道・コンテナ車整理場の整備に取りかかる。堺泉北港は、ターミナル整備やヤード拡充などを進めてふ頭を再編し、助松・汐見沖ふ頭で外貿コンテナと内航RORO船向けの機能強化を図る。

ソフト面では、コンテナターミナルの効率化・生産性向上を目指し、新・港湾情報システム(CONPAS)を導入するほか、AIを活用したターミナル運営の効率化・最適化に着手。空コンテナ輸送を削減するコンテナラウンドユースの普及にも取り組む。

▲奈良・三重方面の共同集荷活動のイメージ(出所:大阪港湾局)※クリックで拡大

また、ポートセールスを効果的に展開するため、奈良・三重方面などで共同集貨活動を行うほか、府・市それぞれが持つ顧客情報を共有し、共同集貨活動で需要把握に努め、大阪港と府営港湾の両港を利用する場合にインセンティブ策を設けることも検討する。

大阪みなとビジョンでは、中古車輸出拠点の機能強化とエネルギー拠点としての機能維持・強化も掲げており、堺泉北港で夕凪2号岸壁の整備を進めるとともに、同港への中古自動車の集貨を促すほか、原油やLNGを安定供給するための施策も展開していく。

■「大阪みなとビジョン」のロードマップ

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りんくう以南はまさに総合開発

「大阪みなとビジョン」はまさに”ワン大阪”にふさわしい構想だ。大阪府にとどまらず、近畿および近接ブロックまで巻き込んでの大プロジェクトに発展しそうな予感を抱く関係者は多いだろう。

神戸港とともに構成する「阪神港」での機能連結や共通化にとどまらず、四国港湾まで見据えての展開を期待するのは当然だ。また、港湾を抱える他都道県にとっては、大いに参考にすべきであるとともに、追随する動きの契機にもなるはずだ。その点でも本プロジェクトの意義や効果は非常に大きく興味深い。

また、大阪府下では関西国際空港の開港以来、その入り口である泉佐野市の「りんくう地域」から第一表にある深日(ふけ)港手前の淡輪(たんのわ)地区までの海岸線が、海浜公園として開発されてきた。海水浴場やビーチバレー施設、ロッジやキャンプ場、幼児から大人まで磯遊びが楽しめる”さとうみ”ゾーン、バーベキューエリア、フィールドアスレチック併設の遊具豊富な芝生の公園、水上スポーツの指定エリアの設置、収容台数に余裕のある整備された駐車場。休日ともなれば、多くの家族連れや団体の来訪によって賑わう様子は、かつてのひなびた漁港時代の同エリアを知る者ならば、隔世の感に呆然としてしまうだろう。

しかし近海漁業の衰退を埋め合わせる地域振興策としては大いに役割を果たしているし、海岸部の公園や施設の充実は、子育て世代の定着や移住に寄与している。それに加えて流入人口の増加は商業の活性化にも貢献する。かたやでの港湾事業の強化という合わせ技は、地域が既存の素材を創意工夫によって活用する好例として、自治体運営の可能性を膨らませてくれる。(企画編集委員・永田利紀)