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やや「散らかり気味」の両社の提携が生むもの/解説

2020年12月24日 (木)

EC楽天と日本郵便の提携はビッグニュースに違いないのだが、両社に共通する「ここに至るまでの紆余曲折とその始末や整理整頓の広報不足」が気になる。その流れを断ち切れぬまま、今回の提携合意を迎えた印象がぬぐえない。

楽天の物流戦略は、ここに来てやっと道筋が明確になってきたように思える。自前物流の構築に挑んできたこれまでの履歴には、戦略のブレや見直しが何度もあった。そこには、根底部分で意志や方策が統一されていなかったように見受けられた。

日本郵便と楽天が戦略提携、物流DXで新会社設立も
https://www.logi-today.com/413608

かつての「楽天物流」にはじまり、現在の「RFC」(楽天フルフィルメントセンター)に至る間、業務の相当比率を実質的には内製ではなく全面委託による看板付け替えでまかなってきた感が強いものの、そのおかげで潤い躍進した物流事業者が生まれたことは、物流業界としては疑いようのない「益」だった。

(イメージ画像)

しかし、評論や広報の場面でしばしば引き合いに出されるアマゾンの物流作法とはまったく異質であり、何よりも物流機能の基本設計技術が完全内製化できていない点は、自前物流を謳うにあたって致命的な不足点だ。現在、楽天市場の出店事業者は、楽天のRFCか自社で用意した物流機能を用いるかの二択である。

DXプラットフォームの共同構築と配送機能強化にとどまらず、楽天×JPによる「物流センター協業」が物理的に現実になるとすれば、昨年「JPロジサービス」をハマキョウレレックスに譲渡した日本郵便の行動にも、整合性の面で疑問が生じる。

庫内業務から撤退し、大型品・重量品の個配からも事実上は撤退している日本郵便と、物流倉庫の運営自体に前のめりになれないままの楽天が組み合わさって生まれるものは何なのか、疑念が生じる。

大型品配送を希望する出店者には別のデリバリー事業者を日本郵便経由か、はたまた別途提携してサービス提供するのだろうか。書いていてもすでにややこしいが、実務上では必ず起こることでもある。そんなことを挙げ出すと長くなるので、別の機会があれば掘り下げてみたい。

日本郵便の個配市場における遅れの最たるものは、デジタル化を基盤とする各種サービスだ。たとえばヤマト運輸や佐川急便と同等に「ゆうパック」を利用する受領者からすれば、「代引き」の決済に現金以外認めないことなどは、違和感と驚きを伴って困惑するのが一般的な反応だろう。ビッグニュースではあるが、それゆえに手放しで評価できない「ひっかかり」の中身を記してみた次第だ。(企画編集委員・永田利紀)