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運輸安全委が調査報告書公表

京急トラック衝突事故、原因は停止信号の位置

2021年2月18日 (木)

ロジスティクス運輸安全委員会は18日、京浜急行電鉄本線で2019年9月5日に発生した列車脱線事故の調査報告書を公表し、踏切で立ち往生していたトラックに列車が衝突・脱線したのは停止信号の設置位置が適切ではなかったのが原因だと断定した。

トラックの損傷状況(出所:運輸安全委員会)

この事故は青砥駅発三崎口駅行き8両編成の下り(快特)列車が、踏切内で立ち往生していた普通トラックに衝突し、トラックの運転者が死亡、列車の乗客75人、運転士、車掌が負傷したもの。

事故直後は、トラックが通常と異なるルートを通行していたことを問題視する見方もあったが、報告書は「通常と異なる経路を使用した理由は運転者が死亡していることから、明らかにすることはできなかった」と記載。

列車とトラックが衝突に至った原因については「踏切の特殊信号発光機が停止信号を示していたにもかかわらず、列車が踏切までに停止できなかったため」と断定。

ブレーキ操作ができなかった要因は「予期しないタイミングで停止信号を現示する特殊性がある特殊信号発光機に対し、即座に反応することは困難であった」との可能性を指摘した上で、視認できる位置となってからも架線柱などが邪魔をして「(信号の)明滅状態が瞬間的ではあるが断続的に遮られる場面があったことが関与し、特発の動作に気づくのが遅くなった可能性が考えられる」とした。

運輸安全委の分析によると、障害物検知装置は衝突の44秒前にトラックを検知、特殊信号発光機は停止信号を示しており、列車は踏切から1290メートル手前を走行していたが、この停止信号を視認できるようになる位置は踏切から572メートルとなっていた。

つまり、特殊信号発光機が動作を開始してから列車が停止信号を視認できる位置に到達するまでの718メートルの間、「運転士に(停止信号が発せられていることを)伝達する仕組みがなかったことになる。列車が踏切までに停止するためには「1.5秒以内に非常ブレーキの操作が必要な試算」となることから、同委は「特殊信号発光機の設置位置は、運転士の確認に要する時間が十分に考慮されていなかった」と断じた。

ブレーキ操作と特発見通しの関係性(出所:運輸安全委員会)

さらに、「運転士が常用ブレーキを操作した時点で、速やかに非常ブレーキで緊急停止の手配を取ることで、衝突時の速度を低減できた可能性が考えられる」としながらも、特殊信号発光機が停止信号を発した際のブレーキの使い分けが、京急の運転取扱実施基準や電車運転士作業基準で明示されていなかったことも、「非常ブレーキ操作による緊急停止の手配が遅れたこと」に関与した可能性があるとした。

特発の設置状況(出所:運輸安全委員会)

この事故を受け、京急は特殊信号発光機の停止現示を確認した場合のブレーキの取り扱いについて「直ちに非常ブレーキを使用すること」とし、特殊信号発光機の設置ルールも「余裕を加えた距離以上から視認できる位置」に見直した。

また、トラックが所属していた運送会社に対しては、運転者に運行経路の選択をあらかじめ検討し、適正な運行経路を選定して運行することよう求め、通行が困難な状況となった場合は警察に連絡するよう指導した。

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