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誤入荷ゼロへの道順~入荷業務の基本~

2021年3月2日 (火)

ロジスティクス正しく入庫、正しく保管、正しく出荷、正しく納品。これが「あたりまえ」の物流業務だ。しかしミスは常在しており、「あたりまえ」がなされないケースも少なくない。その原因は現場や業態によって千差万別で…という説明はあまりにも安直すぎる。

物流業務のミスには毎度決まりきった理由がある。誰もがそれを理解し、経験し、回避する術を知っている。そして、業種や業態、現場の設えに因るものはほぼ皆無に近いことも言い添えておく。それなのに、ミスはなくならない。

■ 入荷業務の基本事項

ミスが生まれる場所は大きく分けて2か所あるのだが、その二大産地のひとつは「入荷」というエリアだ。ここで手間暇をかけ、工夫すれば、後に連なる業務は楽になり、速くなり、簡単になる。

(1)在庫マスターと入荷データの整合
(2)入荷予定表の書式
(3)入荷処理の時間や場所の設え
(4)入荷計上時の業務フローの簡素化と定型化

これらの基本事項を整えれば、物流業務の始まりに位置する入荷はつつがなく終えることができる。そして、「正確な検収を心がければ、後の憂いが激減する」ことと、「他業務に比して比較的時間猶予がある」ことを忘れてはならない。 つまり、入荷で手間暇かけて正確な入荷計上を行えれば、仮に誤出荷が発生しても、そのトレースはピッキングか梱包に限定されるのだ。

(イメージ画像)

その論法で各現場のミス発生要素を抑え込んでいけば、最終的にはミスしたくてもできない現場の実現が叶う。在来工法の木造住宅に例えるなら、土台と通し柱をしっかりやっておけば、あとは各職がそれに倣(なら)うように相応の仕事を心がけるし、そう仕向けるのが棟梁の役目。物流では現場責任者の仕事だ。

仮に、OJT違反やルール無視などの属人要素に起因する人為的ミスが発生しても、原因特定の動線と時間が短縮できるので、迅速な事後処理に大きく寄与するという潜在的な効果を下地に忍ばせることなる。ミス防止の建前にとどまらず、ミス発生時の対応にまで目配せが利くのは、管理者の仕事としては上首尾と評価できる。

■ 入荷作業=在庫管理作業=出荷準備作業

荷主企業と物流事業者の双方に多いのは、在庫マスターの整備不良やメンテナンスに対する意識の低さだ。マスターの書式統一や在庫データの改廃をこまめに行うことで、在庫管理の土台に位置する入荷作業の合理化や迅速化、正確さが著しく向上する。この点はイロハのイとして強弁しておく。

(イメージ画像)

次に、正確でメンテナンスの行き届いた在庫データに応じた入荷予定表の書式も連動・機能させたい。「入荷作業=在庫管理作業=出荷準備作業」という3要素同時完了こそが、優れた物流現場の特徴といえる。 書けば冗長気味だが、実際の現場作業では無意識に近い状態でその都度瞬時に消化される。 誰もが違和感や滞りなく作業を完了させる道具として、商品マスターもしくはそこから派生した在庫マスターの整備が必要条件となってくる。

書式も運用も、書き表したり、口頭で説明したりする際には単純極まりないのだが、多くの企業では理屈通りに事が運ばない。筆者は1+1が2にならない理由を数多聞いてきたが、いずれも部分的には理解できるし、それなりの納得も得られるものだった。

■ 改善の障害物

では、なぜ修正や改善できないのか。ひとえに「しがらみ」や「商慣例」といった、「あまり」が生まれてしまう割り算や引き算の産物だ。内部者や利害関係者それぞれの事情や経緯が、無理を通して理屈が引っ込む状態を支えている。

この問題の解決策の1つは、無関係の専門家による状況分析とリスク測定、損失可能性の試算と改善後の業務寄与数値の呈示だ。さらに同一者による改善実行は当然の流れになるだろう。 関係者は、全員が口を揃えて「第三者である専門家」に多少の摩擦や出血の責任を転嫁すればよい。

プロである改善者にとって、そのような寸劇は毎度のことだし、立派に憎まれ役の厄介者を演じ切るだろう。それがどの道具を使う玄人なのかは、各社一考の価値ありだと思う次第だ。(企画編集委員・永田利紀)