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JR貨物、山陽線での貨物輸送を11日夜に再開

貨物輸送の山陽線「一本足打法」脱却を検討すべし

2021年7月12日 (月)

(イメージ画像)

ロジスティクス日本貨物鉄道(JR貨物)は12日、中国地方の大雨の影響で中止していた、JR山陽線の一部区間における貨物列車の運行を11日夜に再開したと発表した。8日の運転中止時点からのコンテナ列車運休本数は計244本に達したが、2018年夏の「西日本豪雨」のような長期にわたる貨物輸送へのダメージは回避できた。とはいえ、毎年のように列島を襲う豪雨災害は、鉄道貨物輸送のあり方を問いかけている。

山陽線は西日本豪雨で、土砂流入や盛土崩壊などにより複数の区間が長期運休。台風の影響も含めて、全線再開には3カ月を要した。当初は瀬戸内海の船舶やトラックでの代替輸送が行われたが、輸送力は4分の1程度に留まったことから、JR貨物はJR西日本の協力を得て、伯備線と山陰線、山口線を経由した迂回貨物輸送を実施した。

山陽線や山陰線などJR路線の大部分はJR旅客6社が保有しており、JR貨物が線路を借りて貨物列車を運行している。こうした事情から、迂回運転には政府の認可が必要であるケースが大半だ。西日本豪雨での迂回貨物輸送の実施にあたっては、旅客列車とのダイヤ調整や貨物列車走行に合わせた線路改良、ディーゼル機関車の手配、運転士の訓練など、さまざまな施策が講じられた。山陰線と山口線で貨物列車運行にかかる許可を政府に返上していたことから、再び許可申請を行う必要もあった。

冠水した糸崎駅(出所:JR貨物)

今回の大雨被害では、糸崎駅(広島県三原市)構内が冠水したものの、線路への打撃は比較的小さく、早期の運行再開にこぎつけた。しかし、西日本における鉄道物流の大動脈である山陽線の”脆弱さ”が再び露呈したことは否めない。

中国地方の貨物輸送網は、高速道路は中国自動車道と山陽自動車道が並行するのに対し、鉄道は事実上、山陽線のみに依存している。日本海側の幹線である山陰線は、多くの区間で電化されておらず単線区間も多いため、山陽線の代替ルートを担うにはあまりにも負荷が大きい。

政府は物流輸送におけるモーダルシフトを推進する手段として、鉄道輸送の「復権」を掲げる。それならば、山陽線と並行する山陽新幹線での貨物輸送など、抜本的な貨物輸送改善策の検討を望む。(編集部・清水直樹)