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無人フォークとの自動接続も視野

入場車両をAGVが出迎え、シーイーシー/ZMP連携

2021年7月20日 (火)

話題物流センターへ次々に到着するトラックを入場ゲートに設置したカメラが捉え、車両のナンバープレートを正確に検知すると、システム上でバース予約情報などと照合。電光掲示板などでトラックを指定のバースへ誘導すると同時に、倉庫内のAGVにもバースへの移動を指示すると、AGVは自動的に先回りしてトラックをバースで出迎え、トラックから荷物を積み替える。AGVは指定の仮置き場などへ自動的に搬送する――。

センター内の自動化にとどまらず、ロボットとトラックが自動連携することで、作業員の肉体的な負荷や搬送にかかる時間、事故のリスクなどが大幅に軽減するこんな仕組みが、ついに実現した。

バース管理システム「LogiPull」(ロジプル)の開発元であるシーイーシーと、物流支援ロボットシリーズ「CarriRo」(キャリロ)を手がけたZMPの両社が、それぞれのサービスを自動連携させることによって、物流現場の省人化を後押しすることになったもので、トラックバースの回転率をさらに高める効果が見込める。

シーイーシーの今井勝行氏(デジタルインダストリービジネスグループ第三営業部主査)と、ZMPの笠置泰孝氏(CarriRo事業部長)に、開発の経緯や今後の期待を聞いた。

「CarriRo Connecting Partners」が開発を加速

シーイーシーは今年1月にZMPとの協業を発表し、2月にはZMPが新たに設立した物流DX促進のためのネットワーク「CarriRo Connecting Partners」(キャリロ・コネクティング・パートナーズ)に創立メンバーとして参画したが、両社の接触は昨夏にまでさかのぼる。今井氏によれば、ZMPが昨年にキャリロの新たなロボット統合管理プラットフォーム「ROBO-HI(ロボハイ)ロジマネ」を発表後、システム連携に可能性を見出したシーイーシーがZMPにアプローチし、協業を打診。その後、ロジプルの主要機能の一つであるバース管理システムと、キャリロのAGVの連携による新たなサービスの開発を開始した。

ZMPの笠置氏

ZMPの笠置氏はCarriRo Connecting Partnersについて、「倉庫や工場などへのAGVの導入は、これから『当たり前』になっていくが、その分、顧客からは多種多様な要望が出てくることが予想される。自社だけでは対応できないことも多くなるので、企業間連携のためのコミュニティーとして立ち上げた」と経緯を説明する。すでにシーイーシーを含めて16社が参画しているが、今回のロジプルとキャリロの連携による新たな機能は、このような背景があって生まれている。

自動化・省人化で「営業時間の考え方変わる」

また、省人化に対する効果も非常に大きい。トラック1台に積載されたかご車10台を、一人で50メートル先の仮置き場まで手押しで搬送する場合、歩行距離は1キロ、所要時間は20分間近くに上るが、これらに対する人手が全てゼロとなる。1日に300台のトラックが入出荷する物流施設であれば、1日あたり100時間、つまり12.5人分の作業を削減することが可能になる。

運用のイメージ(クリックで拡大)

今井氏はそのほか、ロジプルとキャリロの連携による自動化と省人化がもたらす大きなメリットとして「営業時間に対する考え方が変わる」ことを強調する。コロナ禍により、物流施設などで日中のコアタイム以外の作業員が不足している。早朝・夜間における準備作業などを、AGVをフル活用して、少ない作業員だけでこなすことができれば、ドライバーにとっても物流施設にとっても得られるものは大きい。

操作用のタブレット端末の画面。分かりやすいUIでAGVの動きを制御できる(クリックで拡大)

ドライバーにとっては早朝の開門待ちや拘束時間が短くなり、物流センターも始業時から効率よく入荷仕分けができ、その後の出荷作業の自由度も高くなるなど、さまざまなメリットが生まれる。今井氏は「人間の作業をAGVに置き換えることにばかり目が行きがちだが、営業時間、つまり働き方の捉え方が変わることで、さらなる物流変革、DX対応への道筋が見つかるのでは」と期待を示す。また、自動化に対応した物流施設を実現するには、概して大きな投資が必要になるが、ロジプルの新機能を用いれば、導入コストを抑えながら、庫内搬送業務の無人化・省人化を実現できると語る。

今後はロジプルと無人フォークの連携も

AGVはテープに二次元コードを印刷したランドマークにそって合わせて進む

なお、両社によればロジプルとロボハイのシステム連携は、特段の滞りもなくスムーズに実現できたという。今井氏はこのことについて、「ロボハイの外部連携APIと、床面に貼ったランドマークを読み取りながら走行するキャリロの仕組みがシンプルにできているので、開発者にとっても理解やサービス設計がしやすかった」とZMPの技術を大きく評価する。また、ZMPの笠置氏も「パートナー企業に、より汎用的で使いやすいAPIを提供することを念頭に置き、フィードバックをいただきながら改善に努めている」と説明する。

両社は今後、物流現場の人手不足解消に向けて、さらなる省人化と自動化に向けたサービスを共同開発する方針。シーイーシーの今井氏は、今後はロジプルとキャリロの無人フォークリフトを連携させ、現在は作業員の手を要する荷物の積み降ろし作業を自動化し、シームレスな庫内作業を実現することに意欲を見せる。また、ZMPの笠置氏も「今後の庫内作業のシームレス化は必須。キャリロを活用した『完全自動倉庫』の実現に向けて、有効なソリューションを打ち出していきたい」と語る。

3月の「国際物流展」に出展したブース

両社はそのほか、シーイーシーが提供する倉庫内の省人化と自動化の効果測定のためのシミュレーションソフト「RaLC」(ラルク)と、キャリロの連携強化も進めたい考えだ。ロジプルやキャリロの導入を検討する荷主や物流企業に提供する情報をさらに拡充し、今後の販売拡大に役立てたいという。また、在庫管理システム(WMS)との連携による在庫の適正配置や、物流現場のロケーション情報に応じた搬送管理の最適化などためのサービス開発も視野に入れる。

シーイーシーの今井氏

今井氏は、今後も倉庫内作業の省人化と自動化が進むことによって、将来は「物流施設の立地の自由度が高まり、用地の確保や土地の活用の仕方も変わってくる」との見方を示す。例えば、高速道路などが通り交通の便の良いエリアでも、居住者が少なければ土地が安い一方で作業員の確保は難しく、物流施設の建設は難しいが、そのようなエリアでの物流施設の開発も大いに可能になるという。今井氏は「物流業界全体にとって効率化につながる波及効果を、システム面からも生むことができると良いと思う」と期待を語った。

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