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異例の大会だからこそ、日本の物流の「力」を世界に示す好機だ

東京五輪開幕控え、都内などで交通規制が本格化

2021年7月19日 (月)

話題東京オリンピック競技大会の開幕を4日後に控えた19日、東京都内など各所で大規模な交通規制が始まった。競技会場の周辺区間における大会関係車両以外の通行を禁止する「専用レーン」と、大会関係車両に進路を譲る「優先レーン」を設置。この日は、週明けということもあり朝から渋滞が生じた区間も。五輪開催による市民生活への影響が出始めた格好だが、物流業界は先手の対応で影響を極限まで減らそうとしている。

大会期間中とその前後は、選手をはじめとする大会関係者が円滑に競技会場に移動できるよう輸送ルートを確保するため、交通量の多い都心や湾岸部を中心に規制が敷かれることから、物流業界は先手の対応に抜かりがない。ヤマト運輸や佐川急便、日本郵便などは、事前に配達遅延の可能性について公表し、顧客などへの理解を求めている。路線輸送各社も、影響を想定した配送体制を講じるなどの取り組みを進めている。

首都高速道路は、時間帯に応じて料金を変動することで通行量を調節する「ロードプライシング」を導入。7月19日から8月9日と8月24日から9月5日には、6時から22時に軽・二輪と普通車」を対象とした通行料金の1000円上乗せが行われる。一方、0時から4時までは通常の半額(ETC搭載車のみ)とする。しかしながら、初日の19日には車線規制や通行レーンを減らした区間を中心に通常の月曜よりも長い渋滞が発生した。

いよいよ具体的に影響が出始めた、五輪対応の交通規制。新型コロナウイルス感染症は依然として収束する段階にはなく、東京都内の会場は、緊急事態宣言下での競技実施という異例の事態だ。とはいえ、東京都と神奈川、千葉、埼玉の1都3県の会場では無観客で競技を行うことから、規制に伴う物流業への影響は全体的には限定的との見方が大半だ。もちろん、物流各社による企業努力が下支えになっているのは当然だ。

開催の可否をめぐりさまざまな議論を呼んできた、コロナ禍での「スポーツの祭典」。物流業界では、コロナ禍が顕在化する前から、当初の開催スケジュールを前提とした、東京都湾岸部における具体的な輸送体系の構築に向けた準備を始めていた。ある大手物流会社は、湾岸部の物流拠点を使わずに首都圏の荷物を配送できる体制構築に向けたプロジェクトチームを設置し、対応を進めていた。「社会インフラを途絶させない」との使命を果たすための取り組みだ。こうした取り組みは、形は違えど、今回の大会で真価を発揮しようとしている。

1年の延期を経て行われる今大会は、何から何まで異例ずくめだが、物流の使命を社会に再認識してもらう好機であることは間違いない。この東京オリンピック・パラリンピック期間中における日本の物流の「力」を世界に見せつけてほしい。(編集部・清水直樹)