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NTTコミュとソリューション共同開発

現場作業の安全性確保へ健康リスクを「見える化」

2021年8月20日 (金)

DPL新富士II(出所:大和ハウス工業)

拠点・施設大和ハウス工業とNTTコミュニケーションズは23日、大和ハウス工業のマルチテナント型物流施設「DPL新富士II」(静岡県富士市)で、NTTコミュニケーションズが開発した、熱中症やインフルエンザの発生リスクを見える化するための「倉庫環境監視IoTソリューション」の運用を開始する。取得した施設内の温度や湿度のデータをもとに、発生リスクを独自の指数で示すことで、施設内の作業員の熱中症や感染症リスクを管理する。

同ソリューションは、温度や湿度などの環境データを取得できる2種類のセンサーと、NTTコミュニケーションズが提供するIoTプラットフォーム「Things Cloud」(シングスクラウド)を活用。示された指数をもとに、テナントが施設内の温度調節や、換気の判断を行うことで、リスクを未然に低減することができるという。

ソリューションのイメージ図(出所:大和ハウス工業)

熱中症発生リスクのモニター表示例(出所:大和ハウス工業)

熱中症については、物流施設内に設置されたセンサーが環境データを測定するとともに、熱中症発生リスクを示す「暑さ指数」を算出。算出した暑さ指数をThings Cloudで収集・蓄積し、「ほぼ安全」から「危険」までの5段階でモニターに表示する。また、リスクの段階に応じて、テナント企業や管理者に対しアラートメールを送信する。

インフルエンザ流行リスクのモニター表示例(出所:大和ハウス工業)

インフルエンザについても同様に、施設内に設置されたセンサーが環境データを測定し、湿度などをもとに「インフルエンザ流行リスク指数」を算出。「ほぼ安全」「注意」「警戒」の3段階でモニターに示し、リスクの段階に応じてアラートメールを送付する。

両社は今後、同ソリューションの運用と継続的な改善に取り組むとともに、大和ハウス工業が開発するマルチテナント型物流施設への導入を検討する。また、物流施設内のシャッターや、空気を循環させるサーキュレーターなどとの連動により、室内環境を自律的に最適化する仕組みの構築などに向けた検討も進めるとしている。

テナント企業への新たなアピール材料に

両社はテナント企業が安全・安心に利用できる物流施設の実現に向け、2020年12月には「DPL市川」でAIによるマスク着用判定と、混雑度の判定に関する実証実験を実施。物流施設内の作業現場の改善に向けた取り組みとしては第2弾となる。

これらの取り組みは、近年の猛暑による熱中症や、新型コロナウイルス感染症の拡大を契機とした動きと考えられるが、物流の現場で働く従業員を守るとともに、3K(きつい・汚い・危険)のイメージが強い物流業界のイメージの払拭にもつながる。また、物流施設にとっては、テナント募集の際の新たなアピール材料にもなるだろう。

導入と運用に際しては、さまざまな課題が噴出することも想定されるが、なるべく現場の作業員への負担が少ない形で運用され、効果が表れることに期待したい。物流施設の開発業者にとっては、入居企業に対して他物件との差別化を明確にする好機であるし、入居企業にとっても、従業員の健康面でのリスク管理は重要な「業務」であるはずだ。(編集部・行松孝純)