話題LOGISTICS TODAY編集部がことし7月12日から16日にかけて、物流企業や荷主企業を中心とする読者に対して実施した「配車計画システムに関する実態調査」(有効解答数904件、解答率31.2%)の結果、配車計画業務における「属人化」や「データ入力の手間の削減」といった課題を解決する手段の一つとして、回答者の4分の1にあたる事業者が配車計画システムを「導入済み」、または「検討している」ことが分かった。
では、物流事業者が導入を検討するにあたり、配車計画システムはどれくらい存在するのだろうか。また、どのシステムに関心が集まっているのか――。編集部では、71のシステムに配車計画機能を確認し、それぞれについて物流関連事業者の関心度を調査した。(編集部特別取材班)
関心度1位は「ハコベル」
今回の調査で最も関心を集めた配車計画システムは、ラクスルが提供する「ハコベルコネクト」だ。元請け運送事業者などが採り得る、自社車両、協力会社、路線便などの「輸送手段の最適化」を図るもので、求荷求車事業「ハコベル」で培ったノウハウが注ぎ込まれている。数ある配車計画システムの中でもユニークな存在だ。今回の調査では最多となる15.5%の回答者の関心を集めた。次いで、富士通の「Logifit(ロジフィット) TM-配車/Logifit TM-NexTR」が14%、Hacobu(ハコブ、東京都港区)の「MOVO Dispatch(ムーボ・ディスパッチ)/MOVO Vista(ムーボ・ビスタ)」が13.7%、パスコの「LogiSTAR(ロジスター)配車管理簿」が13.6%となった。
「Logifit TM-配車」は、分かりやすい配車計画立案プロセスが特徴。視認性の高いデザイン構成だけでなく、富士通の独自技術を生かした、大量のオーダーを迅速に処理できる機能も差別化を図る要素だ。同社の運行管理システム「Logifit TM-NexTR」との連携で配送業務の予実管理が可能なのも、総合ITベンダーならではだろう。
「MOVO Dispatch」は、ハコブがことし7月5日に提供を開始した新しい配車計画サービスで、トラック予約受付や配送案件管理、動態管理などMOVOシリーズのサービス群と連携してより多角的な配車管理を実現できるのが差別化のポイントだ。「LogiSTAR配車管理簿」は、カーナビゲーション用地図情報の要素となる空間情報技術を配車計画システムに応用したサービス。曜日時間帯別の走行速度をデータ化できる機能を搭載し、時間指定や車格指定などの多様な配送条件への対応により、現実に即した配車計画を策定できるのが強みだ。
多様な業種が「群雄割拠」する配車計画システム市場
物流業界の抱える課題の一つが、トラックなど貨物車両の最適な配車計画だ。遅滞なく荷物を搬入するとともに、迅速に出荷するためには、的確な配車態勢の構築が不可欠であり、物流業界が業務効率化策として注目する物流DX(デジタルトランスフォーメーション)の対象にもなっている。こうした背景から、大手システム開発会社をはじめ、電機メーカーや地図会社、スタートアップ企業、さらには物流事業者までが、新たなビジネスチャンスを狙って配車計画システムの開発に相次いで参入している。
システムの導入を検討する物流事業者にとっては、現場のニーズに合わせて連携できるシステムの内容や、各社の得意領域などが選択のポイントとなりそうだ。
連携機能と得意領域が選択のポイント
連携できるシステムや機能の豊富さでは、TMS(輸配送管理システム)からWMS(倉庫管理システム)まで幅広くカバーしている大手システム会社に一日の長がある。NECソリューションイノベータの「ULTRAFIX」は、ビッグデータとAIを活用した配車最適化や、WMS・基幹システムとの連携、運賃シミュレーション機能などを網羅しているほか、自社車両や協力会社の常用車両に満遍なく配車を行う平準化機能など、ユーザーの細かなニーズに応えるユニークな機能も備える。
一方、中古車売買サイトの運営で培った知見をもとに、AIが保有車両の車両資産価格を予測するという、独自の機能を持った「トラッカーズマネージャー」(Azoop、アズープ)にも中小運送会社から熱い視線が注がれる。車両資産価値の最大化と、管理業務支援に特化した機能群が特徴だ。
得意領域で支持を得ているサービスでは、「AI最適配車サービス」(日商エレクトロニクス)や、「ZENRINロジスティクスサービス」(ゼンリン)、「ALPS Route」(構造計画研究所)などが挙げられる。
「ZENRINロジスティクスサービス」は、住宅地図から各種地図ソリューションに事業展開を広げるゼンリンならではの発想で、詳細な地図情報とIoTを融合させることで、配車計画から管理・分析までの業務を効率化する。「AI最適配車サービス」は、LPガス、灯油などの定期配送や、自動販売機の補充、廃棄物の回収業務向けのシステムで、AIによる最適配車計画と残量予測により、積荷と残量を意識して最も効率的に「だれが、いつ、どこに、どの順番で」運ぶのかをシステムが自動で算出する。データ分析に強みを持つ日商エレクトロニクスの独自サービスだ。
「ALPS Route」を提供する構造計画研究所は、「どのパッケージシステムでも課題解決が難しい顧客を探している」という、課題解決力に絶対的な自信を持つ会社だ。長尺物やバラバラな荷姿など、いわゆる「運びづらい貨物」を取り扱う事業者にとって、丁寧なヒアリングと科学的見地に基づき、一緒に課題を解決していく姿勢が強い味方となる。
全体最適化の流れで「連携のしやすさ」がカギ
物流業界では、配車・運行計画の策定など実務的な意味合いだけでなく、トラックによるCO2(二酸化炭素)排出量削減の観点からも、配車計画システムの有用性が再認識されている。とはいえ、配車計画は物流現場におけるあらゆる業務の一部機能を構成するに過ぎず、必然的に他の機能との連携が不可欠となる。その意味では、物流工程における他のシステムとの連携のしやすさが、市場占有率(シェア)を高めていくのではないか。物流現場におけるシステム構築のトレンドは、かつての部分最適化から施設の全体最適化へと移行してきている。配車計画システムも、こうした文脈で進化を遂げていくだろう。