話題「視線は常に運送会社を向いている」。こう話すのは、運送会社を支援するさまざまなDX(デジタル・トランスフォーメーション)事業を展開するAzoop(アズープ、東京都世田谷区)社長の朴貴頌氏だ。
同社がクラウド運送会社向け業務支援システム「トラッカーズマネージャー」の正式版をリリースしてから、1年5か月が経過した。もとは燃料費や修繕費など、車両1台あたりのコストをみえる化する車両管理システムとして提供を始め、「車両資産価値の最大化」を支援。その後運送会社向けのさまざまな業務支援機能を矢継ぎ早に追加し、2020年11月には新たに「配車計画機能」を実装した。
市場には運送会社の業務運営を支援する多くのITシステムが提供されているが、他社と異なる「トラッカーズマネージャー」の特徴は、何といっても保有車両100台以下の中小運送会社の視点に立ったシステムであることだ。
「トラッカーズ」ブランドのもと、車両管理だけでなく中古車両販売サイト、オークションサイト、求人サイトなど幅広く展開するアズープの事業展開や、トラッカーズマネージャー、そして新たな配車計画機能の位置付けを聞いた。(LOGISTICS TODAY編集部)
運送会社目線のルーツは家業にあり
1986年生まれの朴社長は大学卒業後、2010年にリクルートに入社。15年に「家業」で中古トラック専門商社の日光オート(愛知県弥富市)に合流後、17年に東京でアズープを設立し、商用車のオンライン売買サイト「トラッカーズマーケット」の提供を開始した。
同サイトはトラックやトレーラーなどの商用車売買をオンライン上で完結するもので、従来の中古車両流通にかかっていた時間とコストを大幅に削減。累計の掲載車両数は1万2000台に上る。ことし8月には、運送会社に寄り添うサービスとして「独自の審査基準によるファイナンスリース」を追加した。
車両流通で培ったノウハウやデータを生かし、運送会社の業務を支援するシステムとして20年3月に公開したのがトラッカーズマネージャーだ。複数の車両の情報をクラウドで一元管理するもので、属人化した車両管理を「車歴管理機能」「運転者台帳機能」などによりまとめて可視化し、運送会社が1台当たりや路線当たりのコストを正確に把握できるようにした。日々の業務に忙しく車両管理に目が行き届かない中小の運送会社だけでなく、大手も含めて導入が進んだが、そこに新たに追加されたのが「配車計画機能」だ。
この機能は、登録した案件情報をもとにクラウド上で配車計画を作成できるもので、外出先や複数拠点からも閲覧・編集できるのが特徴。また、複数拠点で管理している車両情報を企業全体と拠点別で管理できるため、下請け運送会社への不要な依頼の削減にもつながる。これらにより、トラッカーズマネージャーは「車両1台あたりのコストのみえる化」だけでなく「車両1台あたりの収益のみえる化」が可能なシステムへと進化を遂げた。
データ管理と「ウェットなサポート」で勝負
配車計画機能の開発に際しては「奇をてらったものではなく、いかに既存の手法の延長線上に導入し、使いやすくできるかを重視した」(朴氏)という。それは同社が、新たなシステムを導入しても既存のサービスとうまく連携できなかったり、使いこなせなかったりする運送会社が非常に多いことを知っているからで、突き詰めた結果、データ入力の自動化など、「運送会社が極力手間をかけずに済むサービス」に行き着いた。
ただし、最新技術を活用した自動化・省力化のための機能やサービスの追加を進める一方で、運送会社からFAXで送信された請求書などをオペレーターがOCR(光学文字認識)ツールを使用して代わりに入力・管理するような、アナログに片足を残したサービスもしっかりと継続する。それもさまざまな事情を持つそれぞれの運送会社に向き合い、「顧客が関わる部分については、とにかく負担を軽くする」との考えによるものだという。
また、配車計画機能を追加した際には、サポート体制のさらなる強化も図った。カスタマーサクセス部門のスタッフを増強し、運送会社と月1回のペースでミーティングを実施するなど、トラッカーズマネージャーの導入から定着までをサポートし、収益の最大化に向けて“伴走”する環境を整えた。
朴社長はこれらの取り組みについて「運送会社では、システム担当者と現場の間にまだまだ温度差がある。その間にわれわれが入って、データ管理と”ウェットなコミュニケーション”でサポートしている」と語る。
今後のサービス開発では他社との協働も
同社は今後もトラッカーズマネージャーの機能拡大を継続するが、朴社長によれば「これからは勤怠管理や点呼など、車両だけでなく人材の管理にも対象を拡大する」との見通し。自社のみで開発しにくい分野に関しては、オープンプラットフォーム化による他社との協働にも前向きに取り組む考えだ。すでに、運輸デジタルビジネス協議会(TDBC)が進める「車両動態管理プラットフォーム」のプロジェクトにも参加し、他社との連携を模索している。
加えて、同様の配車計画システムを提供する、一見すると競合関係にあるとも見られる会社との協働についても関心を示す。例えば、7月に配車管理サービスを発表し、物流情報プラットフォームの精力的な拡大を続けるような企業との連携の可能性について話を振ってみたところ、「中小運送会社の課題解決や1台当たりの利益最大化に向けた取り組みなら、できることは何でもやりたい」(朴氏)と柔軟な姿勢を示す。
拡大を続け「運送会社のビジネスハブ」に
朴氏が語る通り、アズープにとっては運送会社を取り巻くすべての課題が、蓄積したデータを活用して新たな機能やサービスを開発する理由となる。インタビューにおいて朴社長は、「車両ばかり余っていて運賃も安い」という求荷求車システムの現況を憂いていること、同社独自の視点による求荷求車システムサービスの開発を進める構想があることなどを明らかにした。
また、運送会社の経営不振の理由の一つと考えられる多重下請け構造にも「われわれの立場から、適切な運賃に対する意識改革を進められないかと考えている」と意欲を示す。納品の精度や運転手の対応など、輸送品質の可視化を実現することで、「荷主も運送会社を選ぶ際の新たな基準を作ることができ、『安ければいい』という意識は変わるのでは」という。
中小の運送会社とその車両についてすみずみまで良く知るアズープは今後、トラッカーズマネージャーで「運送会社のビジネスハブ」の役割を担いたい考えだ。そして運送会社のビジネスの駆動力となることで、トラッカーズブランドを冠したほかのサービスとの相乗効果拡大を目指す。
トラッカーズマネージャーは、ことし7月末には「車両資産価格のAI(人工知能)予測機能」を追加するなど、配車計画とは異なるベクトルの機能やサービスも、続々と追加している。進化を続け、あらゆる面から運送会社の収益最大化のサポートを試みるアズープ。揺るがぬ自信で運送会社の業務を支援する同社の事業展開から、目が離せない。
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