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物流連、経営効率化委の本年度初会合は防災にフォーカス

荷主巻き込み初動対応へ備えよ、国交省調査官が強調

2021年9月7日 (火)

ロジスティクス日本物流団体連合会(物流連)は7日、本年度1回目となる経営効率化委員会(3日開催)で、国土交通省の木下典男首席運輸安全調査官(大臣官房)が運輸防災マネジメントをテーマに講演し、荷主を含む関係者とのタイムラインを事前に設定する取り組みが有効だとの考えを示した。

全日通霞が関ビルで開催された講演は、自然災害が激しさを増していること、頻度も増えていることを踏まえ「運輸事業者は発災時の被害軽減を図るとともに、業務活動の維持や早期回復を図ることが期待される」として企画されたもので、事業者の自然災害への対応力を高める狙いがある。

木下氏は68人が聴講するなか、バス車両が水没した事例、関西国際空港のアクセスが運休した事例を挙げた上で「安全・安定輸送に関わる多くの課題が顕在化した。ハード面の強化だけでなく、自然災害発生の前後でのソフト面の対応の重要性が明らかになった」などと説明。

▲「タイムラインの設定が有効」と強調(国交省の木下主席運輸安全調査官)

続いて、運輸防災マネジメントのポイントとして(1)経営トップの責務(2)安全方針と防災の基本方針(3)リスク評価——などの取組事例を交えて具体的に解説した。

さらに、事前の備えとして「台風・大雪など気象予報などから発生がある程度予測可能なものは、荷主を含む関係者とのタイムライン(防災行動計画)の設定が有用だ」と話し、「先手防災」を取り入れる意義を強調した。

経営効率化委ではこのほか、21年度下半期にダイバーシティを推進するための取り組みとして「女性活躍推進ワーキングチーム」の設置を目指し、メンバーを募集していることを周知するとともに、21年度上半期に新設された物流標準化調査小委員会の活動方針を説明して閉会した。

物流能維持には事業者の防災行動計画支援が不可欠

物流連が企画した運輸防災マネジメントに関する講演。国土交通省の木下典男首席運輸安全調査官(大臣官房)が語ったのは「事前の備え」の大切さと、具体的な取り組みとして「荷主を巻き込んだ防災行動計画の策定」だった。これは、初動対応の備えに課題があるという指摘でもある。物流事業者や荷主が見逃してはならない重要なキーワードだろう。

LOGISTICS TODAYが段階的に記事を追加する形で展開している防災・BCP特集(9月1日公開)では、「物流×防災・BCP」にフォーカスした21年度版ともいえる最新動向を発信しているが、本特集に掲載されている記事「物流業界の災害対策、初動対応の備え課題に」でも、「建物・車両などの被害を迅速に把握する体制の構築」ができている事業者は、半数にとどまっている。

また「関連企業・事業所への救援物資や輸送体制の整備」ができている事業者は2割に過ぎず、木下氏の主張を裏付けるような物流事業者と荷主の「実態」が示されている。他社がどのような対策に取り組み、自社は何ができていないのか、対策としてどのような選択肢があるのか——といったことを事前に検討し、関係者と共有しておく経営姿勢が、発災後の事業運営を大きく左右するのはいうまでもない。

世界有数の自然災害と共生することが求められる日本では、物流事業者による初動対応の備えが、強靱な産業競争力の源泉であり、発災後の迅速な復興にもつながるという考え方が不可欠だ。道路や港湾などの物流インフラを強靱化する取り組みが重要なのは当然だが、物流事業者が防災行動計画を策定するために必要な支援を後回しにしていないだろうか。(編集長・赤澤裕介)