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運転者指導や運行指示未徹底、宮城ト協調査で判明

2021年9月10日 (金)

調査・データ特定のドライバーに特別な指導が行われず、運行指示書も適正に作成されていないーー。宮城県トラック協会がまとめた、トラック事業者への指導にかかる項目別調査で、こんな結果が明らかになった。安全で効率的なトラック輸送に不可欠な、ドライバーへの適切な指導監督が必ずしも徹底されていない実情が浮かんだ。社会インフラを担う物流現場の「屋台骨」とも言える運行管理について、行政や事業者による的確な体制構築が求められる。

「事業計画」「帳票類の整備報告」「運行管理」「車両管理」「労働基準法」「法定福利費」「運輸安全マネジメント」の7項目について、適切な指導の可否を調べた。指導が十分になされていないと判断した割合が最も高かったのが、「特定の運転者に対して特別な指導を行っているか」で23.0%と調査対象全体の4分の1近くに達した。

次いで、「運行指示書の作成、指示、携行、保存は適正か」が18.8%、「過労防止を配慮した勤務時間、乗務時間を定め、これを基に乗務割が作成され、休憩時間、睡眠のための時間が適正に管理されているか」が11.0%と続いた。

いずれも運行管理にかかる指導項目での未徹底が目立ち、ドライバーの適切な就労環境の確保や運行業務における指導や記録、安全確保に向けた取り組みをスムーズに実施できていない現場が存在することが分かった。

指導が十分になされていない割合が高い項目を2019年度と20年度、21年度(4月から8月)別でみても、「特定の運転者に対して特別な指導を行っているか」が3年度連続でトップとなるなど、未徹底が続いている。ドライバーの安全な業務を守る取り組みが強く求められる。

ドライバー管理軽視は物流インフラを揺るがす事態だ

宮城県トラック協会がまとめた今回の調査結果は、運行管理を「軽視」する事業者が依然として一定数、存在する事実を浮き彫りにした。物流業は社会に不可欠なインフラであるが、それを支えるのは現場のドライバーや倉庫の作業員なのだ。こうした現場の管理が疎かになっている現状を踏まえると、物流インフラは脆い基盤の上に成り立っていると言わざるを得ない。

かつてトラック事業者への指導といえば、過積載や自家用トラックによる違法な営業類似行為(白トラ)など、業務実態そのものの違法性を問う案件が定番だった。しかし、トラック事故の多発などでドライバーの過酷な労働実態が明らかになり就労環境改善が叫ばれるようになると、ドライバー個人への適切な指導や運行指示のあり方がクローズアップされるようになった。

それは、大規模災害の経験を踏まえて、物流が社会インフラとして認知されるようになってきたことも背景にあると考えるべきだろう。物流が産業界における一機能に過ぎなかった時代は過去のものとなり、社会に不可欠な機能を担う存在として注目を集めるようになったからだ。トラック事業者には、ドライバーの管理はインフラそのものを守ることである事実を改めて認識する必要がある。今回の調査結果は、こうした絶好の機会であるはずだ。(編集部・清水直樹)