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伊藤忠、中国企業と組み国内でEVトラック展開へ

2021年9月22日 (水)

話題伊藤忠商事は22日、「数年以内」に日本とASEAN(東南アジア諸国連合)各国で商用電気自動車(EV)の導入・運営管理を一括で請け負う商用EV総合リースサービス事業の設立を目指す、と発表した。2018年に中国地上鉄租車(深セン)に出資参画し、中国国内で協業を進めていたが、戦略提携協議書を交わしたことで海外への本格展開に乗り出す。

(出所:伊藤忠商事)

伊藤忠は「昨今の世界的な脱炭素化の潮流が今後、日本を含むASEAN各国でも急速に進む」と見ており、地上鉄の車両選定・調達能力、EV・バッテリー管理システムなどのハード・ソフト面のノウハウと、自社の海外ネットワークを活用して共同で海外事業展開を目指すことに合意した。

地上鉄は15年の設立以降、世界最大のEV市場となった中国でEV物流車両に特化した総合リースサービス事業を展開し、現在は中国全土200都市で4万台の商用EVを管理・運営する業界最大手に成長。今後は両社で海外展開専門の共同チームを立ち上げ、早期の事業展開を目指す。

すでに日本とシンガポール向けのパートナー選定と事業検証を進めており、ほかのASEAN地域でも各国のパートナーと協議を開始したい考え。

国内でもEVトラック導入機運高まるか

伊藤忠が中国最大のEVトラックリース会社と組み、日本・ASEAN市場で本格展開することになった。トラックもEV化が進む欧米を尻目に日本は出遅れ気味だったが、ここにきてEVトラックの国内普及を促し、「運輸部門の脱炭素化」に取り組む動きが目立ってきた。

佐川急便が7000台規模の中国製EVを導入し、すべての宅配車両をEVへ切り替える方針を示したほか、大手3PLでもEVの本格導入を検討するとの情報が寄せられており、向こう数年のうちに物流事業者や総合商社などが主導する形で導入機運が高まりそうだ。

ただ、現状のままではメンテナンス面のサポート体制が課題となるのは必至で、国内自動車メーカー・ディーラーの動きの鈍さが足を引っ張る可能性がある。

EVトラックの普及には充電設備の確保、電力マネジメント、廃棄電池への対応といった課題をクリアする必要があり、物流事業者が自ら整備機能を整えるには高いハードルとなるだろう。また今回の伊藤忠を含め、これまで明らかになっているEVトラックの導入元が中国に依存する形で進んでいるのも気になる。日本の産業競争力を支える物流が「ガラパゴス化」しないためにも、国内の主要トラックメーカーによる「EV需要の受け皿づくり」が期待されるところだ。(赤澤裕介)