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東急不動産、物流施設テナント企業の人材確保支援

2021年10月12日 (火)

拠点・施設東急不動産は12日、グループの学生情報センター(京都市下京区)などと連携し、物流業界における労働力不足の解決を目的とした人材確保支援サービスを2022年1月にはじめると発表した。東急不動産が展開する「LOGI’Q」(ロジック)など物流施設のテナント企業向けに展開。物流施設の開発企業が労働力確保サービスを提供するのは珍しい取り組みで、業界の注目を集めそうだ。

▲サービスイメージ(出所:東急不動産)

東急不動産は、物流施設の開発において、労働環境の改善や省人化につながる就労環境の整備や、採用面で優位な立地での物件の供給を開発のコンセプトとしながら、物流業界が抱える労働力不足の課題に対応してきた。このたび、物流業界向けの人材確保支援サービスをテナント企業に提供することで、物流業界が抱える労働力不足の改善につなげる狙いだ。

人材確保支援サービスは、採用前の「社員・パート採用支援」「運営委託先・派遣元紹介」と採用後の「福利厚生」の3サービスで構成。社員・パート採用支援は、物流業界のイメージ改善につながる情報や各企業の取り組みの学生や求職者への発信や、将来のDX(デジタルトランスフォーメーション)を担う学生の確保、1日単位での単発アルバイトマッチングなどに取り組む。物流現場経験が豊富な提携企業のリソースを活用した運営委託先や派遣元の紹介も行う。採用後の福利厚生については、東急不動産グループなどによる各種サービスや優待クーポンを提供するなどの取り組みを進める。

人材確保サービスには、学生情報センターのほかに提携企業として、TRUNK(東京都渋谷区)やPAL(大阪市西区)、ワールドスタッフィング(福岡市博多区)の3社が協力する。

人材確保も物流開発業者の「サービス」になるのか

物流施設の開発業者は、人材確保支援サービスで「差別化」を図る時代がやってくるーー。東急不動産が22年1月に開始する「人材確保支援サービス」は、そんな未来を想像させる取り組みだ。物流開発は箱ものを作るだけでは市場で戦えない、そういう実情を示しているとも言えないだろうか。

物流開発業者は、施設のけ整備にあたって、地域の自然環境や住空間の保護に頭を悩ませてきた。そこで、巨大な物流施設の整備を「まちづくり」と位置付けて地域住民との融和を図ることにより、物流開発の新しい姿を示す動きが広がっている。千葉県流山市や相模原市中央区で巨大プロジェクトを推進する日本GLP(東京都港区)はその好例と言えるだろう。千葉県船橋市のプロジェクトをことし6月に完了した三井不動産も、まちづくりを意識した開発で注目を集めた。

そこで今回の人材確保だ。新型コロナウイルス感染拡大が収束して経済回復が本格化すれば、物流現場で取り扱う物量は増加する一方、人手不足は改善するどころか悪化する可能性がある。施設が完成してもテナントに人が集まらなければ、物流は機能しない。裏を返せば、運営者が人材確保を支援してくれる施設に入居できるとなれば、テナントは施設選択のうえで、判断材料の一つになるのは間違いない。

物流施設の差別化を示す「強み」の一要素として、人材確保支援というキーワードが珍しくなくなる日が、そう遠くないうちにやってくるのではないだろうか。(編集部・清水直樹)