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スキャンディット、ヤマトの積込業務をデジタル化

2021年11月5日 (金)

(出所:スキャンディット)

ECスキャンディット(東京都渋谷区)は5日、ヤマト運輸(東京都中央区)のEC(電子商取引)事業者向け配送商品「EAZY」(イージー)の配送員「EAZY CREW」(イージークルー)が使用するBYOD型(私有端末の業務利用)スマートフォンで稼働する業務アプリに「Scandit Barcode Scanner(スキャンディット・バーコード・スキャナー) SDK」のAR(拡張現実)技術を導入することで、ラストワンマイルにおけるトラックへの荷物積み込み業務のデジタル化を実現したと発表した。

ヤマト運輸は、国内におけるEC市場の拡大と消費者ニーズの多様化に対応するため、2020年6月にEC事業者向け配送商品「EAZY」を開始。EAZYはZOZOTOWN、Yahoo! ショッピング、PayPayモールをはじめとするECストアに利用されており、購入者が受取方法を選択できるのが特徴。1万6000人を超えるEAZY CREWが配達業務を担う。

従来、ラストワンマイルにおけるトラックへの荷物積み込み業務はドライバーが伝票に印字された住所情報をもとに、経験と勘を頼りに集配ルートを考えて進める「暗黙知」が大きな部分を占めていた。積み込み業務の効率化と正確性が後の配達業務に与える影響は非常に大きく、EAZY CREWの配達業務においても宅急便と同様の配送品質を維持するためにはドライバーの暗黙知を形式知化することが急務だった。そこで、伝票をスキャンするだけで配達順序に合わせた車両への荷物の積み込み順やその位置を、視覚的にナビゲーションすることが可能となるような業務のデジタル化の検討を始めた。

ヤマト運輸は実証実験で、スキャンディットのスキャン技術がソフトウェア開発キットとして提供されるためハードウェアに依存せず、専用端末と同等の高速で高精度なスキャン性能を発揮するだけでなく、ARや複数バーコードを同時に読み取る機能で業務改革の新たな付加価値が与えられる技術であることを評価し、導入を決めた。

ヤマト運輸は、バーコード読み取り時間を3分の1に短縮。スキャンディットのAR機能により、EAZY CREWは荷物にスマートフォンをかざすだけで、どの荷物をトラックの荷台のどの位置に積むべきかを視覚的に把握できるようになった。バーコードの誤読も解消されラストワンマイルの効率化と安全な運行を両立するドライバーにとって効率的な環境を提供できるという確証が得られたことも導入の決め手になった。

▲アプリ画面でのEAZY CREW積み込みイメージ(クリックで拡大、出所:ヤマト運輸)

独自技術を持つ外部リソースの有効活用で業務効率を高める成功例だ

ヤマト運輸が、スキャンディットの高精度バーコードスキャン技術を導入し、配送積み込み業務の効率化を実現した。ARと統合することでトラックの積み込み順や位置を視覚的にナビゲーションできる優れものだ。大手宅配企業であるヤマト運輸が、こうした先進IT技術開発企業と手を組むことで誕生した取り組み。独自技術を持つ企業のリソースを有効活用することで業務効率を高める成功例として、注目を集めそうだ。

大手企業グループは、自社にこうしたシステム機能を抱えて内製化を推進するのが一般的だった。グループの外部にこうしたリソースを求めることによる経費負担や情報の流出を避ける思惑もあったようだが、ITシステムの急速な普及と高度化により、こうした内製化に限界が生じてきた。一方で、グループに属しているシステム部門も、ITシステムの普及を受けて外部に活路を見出す戦略を求め始めた。

(出所:ヤマト運輸)

ヤマト運輸は、外部リソースを柔軟に活用することで、今回の実効的な現場効率化システムの構築を実現できた。スキャンディットにとっては、ヤマト運輸が現場で自社システムを実用化する実績が広がることで、より的確な課題抽出が可能となりさらなる技術革新につなげられる。ヤマト運輸は、外部とのパートナーシップを活用してリソースを獲得することで、拡張性の高いITノウハウを蓄積することができる。

物流現場の効率化策として物流DX(デジタルトランスフォーメーション)化が叫ばれて久しい。サービスの選択も重要だが、グループの枠を超えた連携を模索することでより高い効果を得られる可能性についても、熟慮する必要があることが分かる。(編集部・清水直樹)