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NTTなど5社、ICTで食品価値連鎖の最適化実証へ

2021年11月8日 (月)

(イメージ)

フード西日本電信電話(NTT西日本、大阪市中央区)は5日、神明ホールディングス(HD、神戸市中央区)、東果大阪(大阪市東住吉区)、日本電信電話(NTT)、NTTアグリテクノロジー(東京都新宿区)の4社と共同で、最先端のICT技術によるフードバリューチェーン(価値連鎖)を最適化する取り組みを始めると発表した。

サイバー空間上に仮想市場を構築し、NTTの提唱する光ベースの革新的なネットワーク「IOWN」(アイオン)構想関連技術のデジタルツインコンピューティングを用いて未来予測を行い、農産物が市場に運び込まれる前に取引を行うことで、農産物流通におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)化を推進して流通コストやフードロス、温室効果ガス削減など地球環境問題の抑制に貢献することに合意し、その実現に向けた共同実験を開始した。その成果は、11月16日から19日まで開催する「NTT R&Dフォーラム」に出展する。

デジタルツインコンピューティングは、従来のデジタルツインの概念を発展させて多様な産業やモノとヒトのデジタルツインを自在に掛け合わせて演算することにより、都市におけるヒトと自動車などこれまで総合的に扱うことができなかった組み合せを高精度に再現するとともに、さらに未来の予測する技術だ。

▲予測技術の概要(出所:NTT西日本)

農産物流通は卸売市場を通過する市場流通と生産者などが購入者と直接取引を行う市場外流通に分類される。国産青果の86%が市場流通で売買されることから、市場流通は日本の農産物流通において重要な役割を果たしている。

一方で、市場流通にかかわるステークホルダーが情報を相互に共有できていないために、生産者はまず農産物を都市部の大市場に輸送することになり、農産物が集まりすぎた場合は価格が低下し、余った農産物は周辺の市場へ転送される。その結果、追加の輸送コストがかかることや鮮度低下に加え、昨今の個人宅配の激増や働き方改革、ホワイト物流などの影響によるドライバー不足のため配送自体が難しくなる状況が発生する課題がある。非効率な輸送による地球環境への影響や新型コロナウイルスの感染拡大も状況の悪化に拍車をかけており、アフターコロナを見据えて情報を軸にした、極力農産物を動かさない新しい物流の仕組みの構築が必要と考えた。

NTT西日本など5社は今回の実証実験で、生産者や卸・仲卸、小売などフードバリューチェーンにかかわるプレーヤーが参画。農産物流通DXに向けて取り組むとともに、「仮想世界」「現実世界」「フードバリューチェーンエクスチェンジ」について検証・評価する。

仮想世界は、実際の農産物流通量と予測流通量の比較、分析・検証、予測精度向上に向けた改善など未来予測技術を検証。現実世界では、予測技術の活用による市場内の加工人員の削減率や、同技術活用によるトラック積載率向上と台数削減率について検証する。さらに、フードバリューチェーンエクスチェンジについては、甘味や塩味、酸味などのおいしさの要素や機能性の測定をはじめ、測定結果のサイバー空間上への伝達や仮想競りへの活用可否の評価を行う。

こうした取り組みとともに、自宅での食事の需要が高まるなかで、市場連動型の食材宅配サービスなどを活用した消費者への新たな価値提供も検討する。