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山梨県小菅村でドローン物流サービスが本格化

2021年11月8日 (月)

(出所:エアロネクスト)

国内セイノーホールディングス(HD)とエアロネクスト(東京都渋谷区)は8日、ドローン配送を含むスマート物流「SkyHub」(スカイハブ)の社会実装を進める山梨県小菅村で、オンデマンド配送サービス専門コンビニ「SkyHub Store」(スカイハブストア)と地域の商店と連携した買物代行・配送代行サービス「SkyHub Delivery」(スカイハブデリバリー)の本格提供を始めたと発表した。

セイノーHDとエアロネクストはことし1月、無在庫と無人化を実現する新しいスマート物流の事業化に向け業務提携を締結。既存物流とドローン物流の接続を標準化することで、オープン・パブリック・プラットフォーム型の新スマート物流におけるサービスモデルを共同で構築し、人口減少や特定過疎地の交通・医療問題、災害・物流弱者対策などの地域における社会課題の解決に貢献するなど、コミュニティの質の向上を促すソリューションの提供により、地域全体の活性化を目指す活動を展開している。

具体的には、2020年11月にエアロネクストがドローン配送サービス導入による地域活性化と新スマート物流の社会実装に向けて連携協定を締結した小菅村でプロジェクトを開始。ことし4月にはドローン配送と買物代行サービスの試験運用を開始し、住民と対話しながらサービスモデルの確立に向けて実証と検証を重ねてきた。

ドローン配送は、小菅村橋立地区に設置したドローンデポを起点に、当初は600メートル離れた川池地区のドローンスタンドへの1ルートを開設して1日2便、週に3日の運航を開始。現在はドローン定期配送ルートを村内の8地区のうち4地区5ルートで展開している。10月30日までの輸送実績は、ドローン配送190回、買物代行サービス375回。こうした検証期間を経て、11月1日よりサービスの有償化と定期化を本格的にスタートすることとした。

今回展開するSkyHub Storeは、SkyHubアプリケーションから、食料品や日用品が最短で30分前まで注文ができるオンデマンド配送サービス。ドローン配送拠点であるドローンデポに食料品や日用品、調味料、薬など顧客の購買実績に基づく購買予測により品揃えを充実させ、ニーズに合わせて空と陸から最適な手段で配送する。

食料品や日用品300点の商品から選び、30分間隔で設定された16スロットの配送枠から配送希望時間枠と配送先のドローンスタンドを選択して注文する。配送料は300円。ドローン配送が基本だが、天候などの事情でドローン便が難しい場合は陸上で配送する。

▲サービス開始のボードを掲げる(左から)セイノーHD執行役員・河合秀治氏、小菅村長・舩木直美氏、エアロネクスト代表取締役CEO・田路圭輔氏(出所:エアロネクスト)

SkyHub Deliveryは、SkyHubアプリで買い物した地域の商店やスーパーなどの商品や飲食店の出前を希望日時に個宅に届ける買物・配達代行サービス。地域商店のDX(デジタルトランスフォーメーション)化支援の取り組みでもあり、モールEC(電子商取引)型で展開。近隣地域にある地元スーパーの食料品や日用品1000点から商品を選び、2時間間隔で設定された時間枠から希望時間枠を選択して注文。配送料は300円。当面は正午までの注文を当日中に配送する。

両社は、小菅村において新スマート物流SkyHubの社会実装の一環として、バス会社や物流会社の協力も得ながら貨客混載や共同配送を試験的に開始する計画。今後も相互に協力して、SkyHubを新しい社会インフラとして社会実装していくことで、過疎地域の課題解決と地域全体の活性化に貢献していく。

住民の生活ニーズに即したドローン物流サービス実現への大きな一歩になるか

ドローン輸送サービスがまた一歩、実用化に近づいた。セイノーホールディングス(HD)とエアロネクストが山梨県小菅村で本格提供を開始した、ドローンを活用したスマート物流サービス。今回の取り組みは、高齢化が進む過疎地における住民の日常生活により即したサービスを提供する意味で、社会実装に大きく近づいたと言えるだろう。

ドローンの社会実装を目的とした実証実験は、物流企業だけでなくIT・通信企業など幅広い業種で参入が進んでおり、独自の技術を活用した住民サービスを発案して実用化を目指している。しかしながら、こうした実証実験のなかには、明らかにドローンの活用を前提とした内容であったり、住民ニーズを支援するためとは必ずしも言えない取り組みであったりと、実態は決して実用化を射程圏内に捉えたサービス水準には達していない事例も少なからず存在すると感じていた。

(イメージ)

今回の小菅村でのサービス展開は、ドローンの有効性を生かしながら、住民の買い物をはじめとする日常生活を支援する分かりやすいプロセスが特徴だ。ドローンはあくまで一つの手段であり、住民の支援対象が買い物と商品配送であることを明確化したところも、住民の安心感を得られたのではないだろうか。

新サービスの展開は、提供側と享受する側が信頼関係にないと、継続は難しい。セイノーHDが培った顧客への荷物配送サービスの発想が、新サービスに「人間味」を与えているのだろう。エアロネクストの先進的な取り組みとうまくマッチした今回のサービスの本格展開は、住民に受け入れられるドローンビジネスの将来像をイメージする格好の事例になりそうな予感がする。(編集部・清水直樹)