調査・データUDトラックス(埼玉県上尾市)は12日、神戸製鋼所の加古川製鉄所(兵庫県加古川市)内において、UDトラックスが開発した自動運転技術を搭載した大型トラックによる自動運搬技術の実証実験を行うと発表した。
UDトラックスと神戸製鋼所は、同製鉄所内において、UDトラックスが開発した「レベル4自動運転技術」(特定条件下における完全自動運転)搭載の大型トラックを用いた自動運搬技術の実証実験を行うことで基本合意。今回の実証実験を通じて、「超スマート社会」に不可欠となるスマート物流サービスと製造・物流現場のDX(デジタルトランスフォーメーション)の促進を目指す。
UDトラックスは2018年、深刻化する社会や物流業界の課題解決に貢献するため、次世代技術の要である自動化と電動化分野に主眼を置き、大型トラックの特定用途での自動運転や電動駆動における様々なソリューションを提供する30年までの取り組みを示した次世代技術ロードマップ「Fujin & Raijin(風神雷神)ビジョン2030」を発表。自動運転トラックの実用化を通じたドライバー不足問題の解消を目的とした試験走行などに取り組んでいる。
神戸製鋼所はことし5月、23年度を最終年度とする3か年グループ中期経営計画を策定。バリューチェーンをデジタル技術によって変革し新たな価値を創造することで、社会課題を解決することを基本方針としたDX戦略を推進する。特に各製造拠点では最新のデジタル技術を活用し、物流を含むプロセス制御自動化・効率化によるものづくり力向上を推進する。
こうした背景を踏まえ、ドライバー不足への一つのソリューション創出を目的として、両社はUDトラックスのレベル4自動運転技術を搭載したトラックを使用した実証実験を決定。製造現場の限定領域における反復作業の自動化の有用性が確認されており、実証実験を通じて早期の社会実装に向けた取り組みを促進する。
自動運転は物流インフラを途絶させない重要な役目を果たせるか
自動運転は世界のさまざまな場面で「運ぶ」姿を劇的に変えるだろう。今回のUDトラックスと神戸製鋼所の共同実証は、製鉄所内の運搬業務を効率化するだけでなく、トラブルによる断絶を回避する技術を施行する意味で、サプライチェーンの維持に大きく貢献する取り組みと言えるだろう。
鉄鋼業は、社会のあらゆる基盤を支える素材産業の代表格であり、その生産を途絶えさせることは許されない。しかしながら、こうした現場においても運搬車両のドライバー不足は顕著になっており、その工程のボトルネック化が危ぶまれている。それを回避するための挑戦ともいうべき今回の実証実験だ。
物流における自動運転といえば、荷物の輸送をイメージしがちだ。もちろんこうした技術開発も、物流インフラ確保の重要な手段になるのだが、こうした産業の現場における物資運搬も重要な物流業務だ。
自動運転が、ドライバーの代替としての機能を通して、「社会の動きを止めない」役目を果たせるかどうか。今回の実証実験で問われるのはそこだ。(編集部・清水直樹)