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三菱重工、脱炭素化対応港湾クレーンを上組に納入

2021年11月18日 (木)

▲新型タイヤ式門型クレーン(出所:三菱重工業)

環境・CSR三菱重工業と三菱ロジスネクストは18日、温室効果ガス排出量の低減と将来的な水素燃料電池への置き換えが可能な新型タイヤ式門型クレーン(RTG)2基を上組から受注したと発表した。神戸市中央区の神戸港ポートアイランド地区に2022年度中に設置する。

港湾における温室効果ガス排出ゼロを目指して政府が検討を進めるカーボンニュートラルポート(CNP)の実現を意識した取り組み。脱炭素化を推進する機運が高まる港湾物流業界で、こうした動きが今後さらに広がりそうだ。

三菱重工業と三菱ロジスネクストが今回受注したRTGは、従来型で使用される蓄電池の容量を維持しながら、エンジン・発電機を小型化し排気量・出力を抑える新ディーゼル発電機の採用と新エンジンコントローラーを用いた最適かつ効率的な燃焼制御により、国土交通省の第4次排出ガス規制の基準値を満たす。

従来型と比較して15%以上の燃費削減とCO2、NOx(窒素酸化物)、PM(黒煙粒子状物質)の排出量削減を実現する。港湾における水素供給インフラ整備の完了に伴う将来的な水素燃料電池への換装を可能としつつ価格は従来と同等に据え置き、コストコントロールを図った。

政府が50年までのカーボンニュートラル実現を宣言するなど、脱炭素化の推進向けた世界的な潮流を受けて、国内外の製品・サービス提供における環境対応が求められている。三菱重工と三菱ロジスネクストは、カーボンニュートラル社会の実現に向けて三菱重工グループの総力を結集して取り組むプロジェクト「エナジートランジション」(低環境負荷エネルギーへの転換)の一環として、港湾におけるCO2排出量削減へも取り組みを進めている。

このたびの新型RTG提供により、神戸港におけるCNP実現に貢献するとともに、30年までに持続可能でよりよい世界の実現を目指す国際連合のSDGsを構成する17のゴール達成にも寄与する。

三菱重工グループは、今後もカーボンニュートラル社会の実現に向けた荷役機器の新モデル開発や既存機器の水素燃料電池化などを積極的に推進することで、将来のCNP実現に貢献していく。

港湾の「脱炭素化」と「高度化」は官民連携が実現してはじめて両立する

港湾物流における脱炭素化推進の機運が急速に高まってきた。港湾は国際貨物の輸出入拠点として重要な役割を果たしているが、クレーンによるコンテナの取り扱いをはじめとする荷役作業で多量の化石燃料を使用することが課題になっていた。政府は港湾荷役を、物流における脱炭素化を図るうえでの重点領域と位置付けているのはそのためだ。

(イメージ)

国土交通省は、脱炭素化に配慮した港湾機能の高度化を図る方針を2021年11月に策定。脱炭素化と高度化を両立できる取り組みとして、港湾を経由した次世代エネルギーの利用・活用などを掲げるが、その基盤となるのがCNPだ。

なかでも注目を集めているのが、港湾荷役機械の動力源の置き換えだ。化石燃料の代替手段としての有力案が、燃料電池だ。このたび三菱重工業と三菱ロジスネクストが開発し上組に納めるRTGは、水素燃料電池への置き換えを前提とした仕様であり、こうした港湾荷役の脱炭素化を強く意識したものだ。

日本の輸出入の96%を取り扱う国際港湾を中心とした荷役における脱炭素化は、より実効的な通商政策の構築に不可欠な取り組みと認識されるようになった。政府が示した方向性を意識してメーカー企業が技術開発を加速し、港湾事業者が活用することで、港湾荷役の競争力が高まり物流機能の向上につなげる。こうした「正」のサイクルを持続的に発展させることで、港湾の脱炭素化と高度化ははじめて両立する。(編集部・清水直樹)