アパレルアダストリア、バロックジャパンリミテッド、TSIホールディングス、ユナイテッドアローズのファッション大手4社は21日、「アパレル物流研究会」を共同で発足したと発表した。物流インフラの一部を共通化することで、業界が直面する課題解決に協働で取り組み、持続可能な物流の実現を目指す。
研究会発足の背景には、物流業界が抱える人手不足や配送費増加といった共通課題がある。特に「2024年問題」や「2025年問題」は、ファッション業界にも深刻な影響を及ぼすと予測する。アパレル商材は流通経路が多岐にわたり、個社での改善に限界があるなか、アダストリアとユナイテッドアローズの役員間の会話が発端となった。個別の課題感が一致したことから協働の可能性を探り始め、同様に強い危機感を持つバロックジャパンリミテッドとTSIホールディングスに声をかけ、23年10月の研究会発足に至った。現在、研究会メンバーは月数回の定例会で議論を重ねるほか、年1回は各社の役員を招いた報告会を実施している。
研究会は、業界共通の物流課題の明確化や、将来的なインフラ共通化に向けた議論、参加企業の拡大を目的とする。これまで、国内の店舗向け共同配送やECモール向け共同配送、海外からの調達領域における共同輸送など、様々な実証実験を実施してきた。特に、25年6月から進行中の関東の大手ECモール倉庫向けの共同配送では、具体的な成果を上げている。これまで4社が個別にトラックを手配していたが、実証実験ではアダストリアの物流子会社の拠点で各社の荷物を集約し、1台の大型トラックにまとめて輸送する方式を採用。これにより、トラックの運行台数を4台から1台に削減できた日もあり、平均積載率は85%以上に向上、1運行あたりの輸送コストを20%削減する効果を確認した。
実証を通じ、出荷元や配送先ごとの荷量を確保できれば輸送効率の改善につながることが示された。今後は現行の枠組みで成功モデルを確立しつつ、共通のニーズを持つ企業の参画によって新たな輸送ルートやサービスの開拓を目指す。場合によっては、海外生産地からの合流といった上流での共同化の可能性も見えてきたという。4社はオープンな姿勢で連携の輪を広げ、業界全体の課題解決に取り組む方針だ。(菊地靖)
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