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ローランド・ベルガーの小野塚征志氏

ロジスティクス4.0、激動の3年間を解説

2022年1月19日 (水)

イベント「ロジスティクス4.0 物流の創造的革新」などの著者で知られるローランド・ベルガーの小野塚征志氏が19日、「激動の3年間でロジスティクス4.0はどこまで進んだのか?」と題したセミナーを開催し、変わりゆく物流業界の現状を語った。

物流プラットフォーム「ハコベル」を展開するラクスル(東京都品川区)が主催、オンラインで開催した。物流業界の労働力不足にさらなる拍車がかかるとされる2024年問題などが目前に迫り、物流DXへの取り組みが待ったなしとされているなかで、これからの物流のあり方を示した小野塚氏の「ロジスティクス4.0」についての解説に、参加した物流関係者約500人が熱心に耳を傾けた。

小野塚氏はまず、著書を刊行した2019年からを「激動の3年間」と定義。その間に起こった新型コロナウイルスによる影響や、人手不足をはじめとする物流クライシスなどにより、倉庫ロボットや自動運転などの普及による「省人化」や、企業の垣根を超えて物流機能がつながっていく「標準化」が加速度的に進化してきたことを、事例を交えながら説明した。

▲オンライン画面を通し、ロジスティクスにおける3年間の変化を振り返る小野塚氏

その後、参加者からは「ロボットが人の仕事を奪うことは本当にあるのか。物流で働く者としての心構えを教えてほしい」といったさまざまな質問が寄せられた。

小野塚氏は、2030年にはすべてがロボットに置き換わるのではなく、4~5割の作業がロボットに置き換えられる可能性があると前置きしたうえで、「人間とロボットが同じ物流現場の中で動くことが当たり前になるなかで、人間とロボットを組み合わせた協調的なオペレーションを作り上げることが重要」「人間でなければできない作業をしてほしい。ロボットでは代え難い人材の育成や採用といった投資とを切り分けて考え、より長い目で人を大切にしていく視点が求められる」などと答えた。

最後に小野塚氏は「ロジスティクス4.0を振り返ってみて、まだまだ実現できていないことがたくさんあるが、それはチャンスの山が転がっているということだ。流れに飲み込まれて守りに入るのではなく、どう自分たちが考え、変革のきっかけにしていくのか、物流を担う方々に考えていただけたらうれしい」と締めくくった。

終了後、小野塚氏にインタビューした。要旨は以下の通り。

「激動の3年間」で物流関係者の意識に大きな変化 日本発のプラットフォーム作りに期待

小野塚 本書を出版した2019年当時は、現在に比べて物流関係者の中でも「ロジスティクス4.0」というキーワードへの認知度が少なかった。当初は、今回のようなセミナーを開催しても「そんなことを言うけれど、ロボットなんて本当に導入されるのか」「うちでは回らないと思っているのだが、本当に実現できると思っているのか」「トラックの自動走行などと言っても、国土交通省はこれまで目標通り実現できたことはないではないか」といったネガティブな投げかけが目立った。

今回は、次の段階である「ロジスティクス5.0」を見すえ、国際的な脅威にどう立ち向かっていけばいいか、どんなチャンスがあるのかといった、未来に向けての前向きな質問ばかりで、この3年間で、物流関係者の意識が大幅に変わったと感じる。

現在もまだ、激動の3年間の序章にすぎない。2030年に向けての今後10年間で、かつてインターネットやスマートフォンが私たちがまさかと思う展開やペースで進み、ライフスタイルを大きく変えていったプロセスと同様に、ロジスティクス4.0における省人化と標準化による物流の「装置産業化」は、劇的なペースで進化していくだろう。

まだまだ実現できていないということはチャンスであり、協調しながらも多様性を尊ぶ日本らしいプラットフォーム作りで、勝者総取りの危機に立ち向かっていくことを、新たな一歩としたい。

かつて任天堂がファミコンやプレイステーションを作ったように、日本初のプラットフォーム作りによって、双子の赤字の時代を乗り越えていまや世界を支配しつつある米国をはじめ、欧州をも席巻し、日本発のロジスティクスプラットフォームがグローバルスタンダードになる日を待ち望んでいる。(聞き手 編集部・今川友美)