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グリッド、将来成長予測支援「ReNom GX」開発

2022年3月9日 (水)

サービス・商品AI(人工知能)プラットフォーム開発のグリッド(東京都港区)は9日、製造業やサプライチェーンの脱炭素化と経済コスト最大化を両立した、未来に起こりうる仮説を設定して対応策を導く「シナリオプランニング」を実現するシステム「ReNom GX」(リノーム・ジーエックス)を開発したと発表した。

▲ReNom GXシミュレーション画面(出所:グリッド)

先進国を中心に、持続的な社会の構築を目的としたカーボンニュートラル実現の機運が高まり、その手段として脱炭素化に向けた取り組みが加速するなかで、現状の的確な把握に基づく将来予測を踏まえた最適な施策の実行が求められている。とはいえ、昨今の新型コロナウイルス禍に伴う社会経済の急速な多様化を見据えて、将来の見通しは極めて困難なのが実情だ。

製造業やサプライチェーンの分野では、需要予測に基づいて、様々な工程での意思決定がなされ計画の立案がされている。しかし、一つの需要予測に依存したままリスク回避と生産計画の効率化を両立して企業を成長させていくことは困難だ。

グリッドは、こうした時代における産業界の脱炭素化を加速させるシステムとして、AIとデジタルツイン技術を活用。二酸化炭素排出と生産コスト削減を最適化・最大化すべく、複数のシナリオから最善のシナリオの選択を可能とするシナリオプランニング・デジタルツインシミューレーターとしてReNom GXを開発した。

▲複数のシナリオをシミュレートするイメージ(出所:グリッド)

ReNom GXは、あらゆる社会変化を想定してAIで実現確率を算出した複数の需要予測をもとに、将来の事業計画における二酸化炭素排出量やコスト変動などをシミュレーションすることで、最適なシナリオ選択の意思決定を可能にする。

これまでサプライチェーンを対象としたシミュレーションの多くは、その範囲が広いために特定工程のみの再現にとどまっていた。グリッドのReNom GXは、サプライチェーン全域をシミュレーション範囲とした高精度な再現性が特徴。サプライチェーン全体での最適化を実現できることから、産業界の二酸化炭素排出削減とコスト最適化を期待できる。

将来的にはReNom GXにおける対象範囲について、需要側だけでなく再生エネルギーを含めた供給側の市場を考慮した「最適なエネルギー供給」も実現することで、グリーンエネルギー活用の促進にさらに貢献していく。

先行き不透明な時代の「誘導路」となるシナリオプランニングという発想を提示した画期的なサービスだ

グリッドが開発したReNom GXは、産業界における将来の事業戦略の構築スタイルを劇的に変えるポテンシャルを有する、画期的な取り組みと言える。

物流業界をはじめとする既存の事業体は、ある程度の予測が可能な時代における成長軌道の策定には対応できる余地がある。しかし、新型コロナウイルス感染拡大に伴う消費スタイルの多様化、さらに「新しい生活様式」の時代を見据えて、将来の「ありたい姿」「あるべき姿」をデザインするハードルは飛躍的に高まった。

もはや既存の経験やノウハウでは対応が困難だとさじを投げようとしていた産業界で、こうしたシナリオプランニングの支援サービスは、先行き不透明感がこれまでになく強い時代だからこそ必要なビジネススタイルを示唆してくれる存在であると言えるだろう。

ReNom GXのシナリオ予測(出所:グリッド)

人手不足、現場のデジタル化の遅れ、環境対応とコスト負担の非連続性――。構造的な課題の解決に追われる物流業界は、将来の需要予測を策定するのが最も困難な業種の一つとされてきた。むしろ、将来予測よりも足元の需要変動への柔軟な対応力が重要視されてきた。確かにこうした瞬発的な対応が、日々の業務を積み重ねるうえで不可欠な概念なのは間違いない。

しかし、「社会に不可欠なインフラ」の名のもとに、環境対応をはじめとするここまで高度で複合的な要素を考慮しながら持続的成長を迫られる時代を生き抜いていかねばならない物流業界にとって、シナリオプランニングの概念は決して無視できない取り組みである。グリッドのReNom GXは、こうした取り組みに強い動機を与えるエポックメーキングな機会を提供することになりそうだ。(編集部・清水直樹)