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GLP投資法人、日立物流西日本との賃貸借契約終了

2022年3月10日 (木)

拠点・施設GLP投資法人は10日、「GLP舞洲II」(大阪市此花区)について、日立物流西日本(同区)との賃貸借契約をことし2月28日で終了すると発表した。

▲昨年11月29日に起きた大阪・舞洲の倉庫火災の様子

2021年11月29日に発生した火災による焼損などで、修繕工事を施しても倉庫としての継続的な使用が困難と判断。22年2月期(21年9月から22年2月)で建物滅失を踏まえた特別損失として44億1700万円を、22年8月期(22年3月から8月まで)で火災保険金収入の見積額48億円を特別利益としてそれぞれ計上する。

GLP投資法人がGLP舞洲IIを対象とした火災・利益保険の補償範囲や保険金の支払時期については、「確定までに相応の時間がかかる見込み」としており、今回の被災による影響額の全容は未だ見通せない状況だ。

GLP投資法人は特別損失計上などを受けて、22年2月期と22年8月期(22年3月から8月まで)の運用状況予想を修正した。前回公表の当期純利益の予想数値について、22年2月期については124億6400万円から83億8000万円に引き下げる一方、22年8月期は121億2000万円から163億9300万円に引き上げた。

物流インフラを守る最前線である倉庫現場、適切な就業環境を確保する大切さを示した「舞洲倉庫火災」

物流業界に衝撃を与えたGLP舞洲II(日立物流西日本)の火災による具体的な被害の一端が、ようやく明らかになってきた。2006年に完成した大阪湾岸の舞洲地区で威容を誇っていた延床面積5万6536平方メートルの物流施設は、継続使用を断念することとなった。医薬品をはじめとするサプライチェーンに大きな支障を来たした火災は、物流事業者や入居企業に改めて、拠点展開のあり方を問いかけている。

今回の火災では、倉庫1階南側に積まれていた運搬用段ボール製パレットから出火し、延べ3万8700平方メートルを焼損。5日間にわたって燃え続け、大量の黒い煙が倉庫街にも広がった。倉庫内だけでなく近隣施設にも被害が発生。大阪府警が派遣社員の少年を現住建造物等放火容疑で逮捕するという、異例の展開となった。

(イメージ)

クローズアップされたのは、医薬品をはじめとする被災商材の代替供給ネットワークの構築だった。関西には多くの薬品メーカーが本社機能や主要生産拠点を抱えており、医薬品関連の物流ニーズも高い。舞洲エリアにもこうした医薬品物流の拠点が点在しており、GLP舞洲IIもこうしたニーズに対応できる高機能倉庫として訴求してきた物件だ。

医薬品メーカーは、火災で出荷できなくなった医薬品を、首都圏の物流拠点で代替して供給するなどの対応を進めた。しかし、供給の遅れや欠品の事態も発生するなど混乱が起きた。基幹物流拠点の機能停止時におけるサプライチェーンの維持がいかに難しい課題であるかが改めて浮き彫りになった。

今回は、現場勤務における人間関係に起因した放火による火災だった。サプライチェーンはこうした現場従業員が支えている現実を目の当たりにするとともに、適切な就労環境の確保も重要性にも留意する大切さを示したとも言える。機能追求とともに、こうしたソフト面のケア体制も社会インフラである物流の維持には不可欠であることを実感させられる。(編集部・清水直樹)