サービス・商品トレードワルツ(東京都千代田区)は28日、アビームコンサルティング(東京都千代田区)との間で、物流業界や商社、メーカー企業を対象とした貿易分野のデジタル化を共同で推進すると発表した。
両社は今回の協業を通じて、貿易業務のデジタル化に向けたロードマップ策定や業務改革、最適なデジタルテクノロジーの選定・導入・運用まで、包括的な支援サービスを4月1日から共同で提供する。
アビームコンサルティングは、多様な業界における貿易業務の知見を活かして、サプライチェーン全体の最適化の観点から、業態横断的な貿易業務のコミュニケーションをデジタル化する手段として定評のあるトレードワルツの貿易情報連携プラットフォーム「TradeWaltz」(トレードワルツ)を活用。デジタル化戦略策定からサービス導入までをトータルで支援する。
トレードワルツの製品力とアビームコンサルティングの貿易業務の知見や企業変革のノウハウを組み合わせることにより、貿易業務のデジタル化を推進し、従来の紙ベースの事務処理の効率化や安全性の向上を図る。
一例として、貿易事務業務において入力データの変更が生じると、貿易業務にかかわる複数の企業が個別に手作業でデータ修正業務を行う必要がある。貿易業務がデジタル化されることで、入力データの変更が生じた際も複数企業間で修正されたデータを即座に連携できるようになる。従来の手作業から解放されることで、作業ミスの防止や業務効率化につなげられる。
貿易業務のデジタル化を進めることで、企業内だけでなくリアルタイムでの企業間のデータ共有を促し、貿易エコシステムの形成や企業のビジネスモデル変革、貿易業界全体のDX(デジタルトランスフォーメーション)化の実現を図る。
コロナ禍からの経済回復の本格化で置き去りにされないためにも、考えてほしい「貿易DX化」
国際フォワーダーなど通商ビジネスを手掛ける企業が抱えるさまざまな貿易業務ほど、いわゆるDX化が遅れている領域はないと言われる。
各企業や業態ごとのシステム化は比較的進んでいるのだが、それぞれが独立していることから企業情報連携はファクスや電子メールなど書面による手続きが中心なのだ。結果として、多くの人手を介して行われる事例が少なくないことから、貿易にかかるサプライチェーン全体の効率化の支障になっている。
こうした課題認識は、当然ながら貿易関連企業には共通の認識だ。しかしながらDX化が依然として進まないのは、アナログの「紙」スタイルの方がやはり好都合だからだという。
こうした視点で考えると、トレードワルツとアビームコンサルティングが協業で取り組む貿易分野のデジタル化支援サービスは、物流業界など貿易にかかるビジネスに携わる企業にとって、少なくとも課題認識を抱く動機付けになるのは間違いなさそうだ。
トレードワルツをはじめとする貿易DX化に注力する企業にとって、こうしたデジタル化推進の取り組みはなかなか根気のいる仕事のようだ。必ずしも先方から前向きな回答を得にくいとの声も聞かれる。
しかし、こうして現状維持に固執しDX化を疎む経営姿勢にこだわるならば、新型コロナウイルス禍から立ち直りグローバル経済が正常化した際に起きるであろう貿易業務の急速な活発化の際に、置いてきぼりを食うのは間違いない。食わず嫌いの意味も含めて、貿易DX化の効果について自社の現場に照らしてみる必要がありそうだ。(編集部・清水直樹)